カリスマ書店員3人が日比谷でトークイベント“マジ絶望”な世の中を生き抜くヒントとは?〈後篇〉

8月3日、『このままなんとなく、あとウン十年も生きるなんてマジ絶望』刊行記念トーク&サイン会
 盛岡市のさわや書店を退職し、現在は出版取次会社に勤務する長江貴士が2作目の著書『このままなんとなく、あとウン十年も生きるなんてマジ絶望』(以下、『マジ絶望』)を上梓。刊行を記念したトークイベントが中央区のHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEにて行われた。聞き手は同店店長の花田菜々子と元三省堂書店で現在同店勤務の新井見枝香。Vol.721に掲載しきれなかったエピソードを含め、前篇・後篇に分けてお届けする。
写真左から新井見枝香、著者の長江貴士、花田菜々子
花田菜々子(以下、花田):この本がおもしろいなって思うのは、(最初の著作)『書店員X』を成し遂げたっていってもいいんだけど、実質なにも成し遂げてない人が書いてるっていうのが本当にすごいよね(笑)。
長江貴士(以下、長江):本当になにもしてないっていう(笑)。
花田:本を売るってことはお客さんを引き込ませるってことで、普通の人だったらそのまま出したい気持ちは分かるけど、書店員だと「これは引きがないな」、「じゃあどこで引っ掛ける」ってなる。
新井見枝香(以下、新井):自分が売っている立場として、どういう売り方をするか考えるじゃん。自分の場合だったら自分で手売りしよう、それならこれくらい売れるかなって。
長江:そういうのはないね。
新井:ないのかよ(笑)。たとえばすごくいい小説を読んで、ここを抜き出すとみんな手が伸びるんだろうなっていうところを、前はPOPに書いてたけど、最近はそれで手に取ってもらっても全然本質じゃないのになって。
長江:その葛藤は常にあるよね。
新井:(その部分が)出てこなかったとかよく分かんなかったって言われると、期待して読んでるんだから確かに違うよなって思うし、本当はなにもしたくない。でも、なにもしないと売りづらいし……。
花田:私はキャッチー至上主義かもしれなくて、売りづらい本のほうが困る。うそでもいいから、立ち止まってもらったほうがいい。そこまでしてポップさとか、キャッチーさにつなげなくていいんじゃないかと聞くと、なんか純粋でいいなと思ったりもする。
長江:自分が本の受け手だった時に、いいタイミングで出会いたいというか。たとえばいま僕がおもしろいなと思う本を、20代の時におもしろそうな感じで売ってて読んだとしたらだめなのかと思うと、感覚的にやりにくくなっちゃうよね。
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