中国全人代における香港への「国家安全法」導入の採択を糾す【長島昭久のリアリズム】


 5月28日、国際社会で深刻な憂慮の表明が相次ぐ中、中国全人代(全国人民代表大会)は、香港への「国家安全法」の導入を図る議案を圧倒的多数で採決しました。22日に開幕した全人代の議題に同法が上がっていたことで、世界に衝撃が走り、各国政府や議会人たちが一斉に批判の声を上げました。そこで、私は、できれば我が国でも国会決議をすべきであると考え、自民党内で根回しを始めました。

 しかし、国会決議を提案するには党内の煩雑な手続きと与野党間の調整などに時間がかかってしまい、全人代の閉幕までに到底間に合わないと判断。旧知の山田宏参議院議員、野党では香港の人権問題に熱心に取り組んできた山尾志桜里代議士に相談を持ちかけ、英国で始まった世界の議会人による共同声明への署名を党派を超えた同僚議員に働きかけることにしました。

 そこで、私が起案したのが下記の一文(概要)です。自民党内の有志および野党側は山尾代議士を呼びかけ人として、衆参全議員に配布したところ、わずか2日間で106名の賛同者(5/31時点)を得ました(未だ増え続けています)。これは各国の議会人の署名では、現時点で英国議員に次ぎ第二位の数字ですが、9月の法執行を阻止するべく、継続的に拡大を目指し、中国政府に働きかけるつもりです。

中国による香港版「国家安全法案」の導入をめぐる動きに深い憂慮を表明する世界の国会議員と連帯する署名への呼びかけ

 5月22日より開催されているに開幕した中国中華人民共和国(中国)の全国人民代表大会において、香港における国家安全法を導入する議案が審議・可決される見通しとなりました。制度案の審議が始まっています。

 私たちは、この法制度案議案が可決された場合、香港返還時に約束された「一国二制度」による高度の自治と民主体制、自由で開かれた国際経済都市・香港を支えてきた法治システムが、香港市民の関与のないまま、一方的に破壊されるのではないかと、香港市民の基本的人権を過度に制約する制度が、香港の憲法にあたる香港基本法に書き込まれる事態を深く憂慮します。

 そして、この動きにより、外交防衛以外の分野において香港の高度な自治を保障した「一国二制度」が毀損され、自由で開かれた国際都市香港の安定的繁栄を決定的に損なうことにもなりかねません。

 2019年、突如提案された「逃亡犯防止条例」とこれに対し、これに反対するデモ隊及び市民への権利、自由、基本的人権を無視した香港当局による過剰苛烈な鎮圧行動は記憶に新しいところですが、さらに国家安全法が導入されることになれば、この文脈での上記法案の審議は、香港の自治に対する中国政府の介入及び香港市民の自律と人権への敵対的姿勢がより一層エスカレートすることになるのではないかと強く危惧します。

 (略)すでに英国をはじめとする25か国231人以上の国会議員が、この国家安全法案をめぐる動きは1984年の「中英連合声明」に対する目に余る明白な違反であり、断じて容認できないと非難、深い憂慮を表明する共同声明に署名しています。

 そこで、私たちも、基本的人権の尊重と法の支配という人類普遍の価値を共有する先進民主主義国家・日本の国会議員として、世界各国の議会人と連帯価値を確信している国家として、幅広い国際社会からの意思表示に加わり、普遍的な価値へ明確なコミットメントコミットを表明するべく、上記共同声明への賛同署名をお呼び掛けさせて頂くものです。
(略)  

       
(衆議院議員 長島昭久)

※5月11日号が6月8日号と合併となったため【コロナ禍で迎えた「こどもの日」に考える】はWEB( https://www.tokyoheadline.com/496449/ )でご覧下さい。
【長島昭久プロフィール】
自由民主党 衆議院議員(6期)。1962年生まれ。慶應義塾大学で修士号(憲法学)、米ジョンズ・ホプキンス大学SAISで修士号(国際関係論)取得。2003年に衆院選初当選。これまで防衛大臣政務官、総理大臣補佐官、防衛副大臣を歴任。2019年6月に自由民主党に入党。日本スポーツ協会理事、日本スケート連盟副会長兼国際部長。