“儲かる”畜産にするために。プレイヤーが増えれば、日本の家畜市場は盛り上がる

 コーンテックの自家配合プラントを導入している大規模養豚場
 時計の針を少し巻き戻そう。1993年、ガット・ウルグアイラウンドが合意されたことを踏まえ、20年にわたって生産者団体が求めていた飼料用丸粒トウモロコシの農家による無税輸入が解禁された。それまでは大手商社といった既得権益のみ買うことができた飼料用丸粒トウモロコシが、規制緩和によって畜産農家にも扉が開かれることになったのだ。

 彼らは、畜産飼料のコストダウンと家畜の品質向上を求めて、自ら餌の配合を行う「自家配」を進めるべく奔走する。コーンテックの母体である(株)吉角は、先代の和博さん指揮のもと、畜産のエサを安く作るためのコンサルティング、直配合施設と呼ばれるプラントの設計を行う会社として、畜産業界のリーディングカンパニーとして成長を遂げた。

 だが、複数の原料を配合して作られる栄養価の高い「配合飼料」は、約9割を海外からの輸入に頼っている。そのため、輸入費や輸出国の生産状況に左右されながら、割高な餌を利用しているという現状が、今なおある。

「弊社は自家配合プラントを導入した100か所以上において、20~30%の餌コストの削減を実現してきましたが、AIやIoTといった技術を導入することで、より効率的な畜産を実現したい。(株)吉角から事業独立する形でコーンテックは誕生しました」

 例えば、飼料を自家配合する場合、一つひとつの飼料にどのような栄養素があり、配合した際にどのような効果があるのか、テストをするだけでも膨大な時間がかかってしまう。経営を行いながら、自身の見識を増やすには限界がある。

「畜産は“勘”や“経験”に頼っているところが大きく、データ化されていない部分が多い。ですが、飼料配合プラントにテクノロジーを導入すれば、配合率を独自アルゴリズムで調整でき、誰にでも効率的な飼料の配合が可能になります」

 昨今、農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)をかけあわせた「アグリテック」という言葉が注目を集めている。畜産もしかりだ。「人間がわざわざやらなくてもいい仕事はテクノロジーに担ってもらう。人間だからこそ可能なクリエイティブな部分、考える仕事に時間を割くことで、畜産の可能性はどんどん広がっていくのではないか」、そう吉角さんは強調する。コーンテックの挑戦は、昨年末にクラウドファンディングによって、わずか3日で3000万円を集めたことからも、大きな注目を集めていることがうかがい知れる。