今日の香港は明日の台湾、そして明後日の日本(下)【長島昭久のリアリズム】


 JPAC(対中政策に関する国会議員連盟)は、現下の香港情勢を憂慮する民主主義国家の議会人有志によって結成されたIPAC(対中政策に関する列国議会同盟)と連帯する形で昨年7月26日に設立されました。その目的は、「中国に対しグローバルな価値観や基本的人権を恣意的に侵害しないよう求めること」(JPAC規約第2条)にあります。現在39名の超党派衆参国会議員で構成されており、最近では趣旨に賛同する「地方議員の会」も結成されました。JPACは、これまでに7回の総会を開催し、在日香港人や香港研究に携わる有識者からのヒヤリングをはじめ、主に、①香港から当局の弾圧を逃れて我が国に救済を求めてきた香港人を受け入れるための「ライフボート」政策の推進、②明らかに香港基本法違反の強権的な「国家安全維持法」により訴追された人々に対する捜査共助条約の執行を拒否するよう日本政府へ要請、③日本版「マグニツキ法」の制定、に向けた活動を行ってきました。

 日本版マグニツキ法については、すでに衆議院法制局と法案策定作業を終え、各党の法案審査プロセスに入っており、早ければ令和3年の通常国会に議員立法として提出する方向です。同法が制定されれば、①重大な国際人権法違反行為等に対し国会が政府に調査を求め、その結果を報告させることができ、かつ、②国会自身も現地調査を含む検証を行うことができ、③特定人権侵害が認定された場合には、日本政府によって資産凍結や輸出入規制などの経済制裁および入国拒否や退去強制等が行えるようになります。欧米諸国ではすでにマグニツキ法が制定されており、中国に限らず、今後、世界で普遍的価値や基本的人権に対する深刻な侵害行為が生じた場合には、我が国も国際的な連帯におけるリーダーシップを発揮することができるようになります。

 これは、香港情勢に限った問題ではありません。中国国内におけるウィグル人に対する弾圧や、台湾に対する強権的な併合圧力についても、必要に応じて我が国が主体的に行動を起こす選択肢を持つことになります。

 中国の習近平政権は、コロナの封じ込めに成功し、共産党主導の国家体制に自信を深めています。しかし、その体制は、住民を徹底的な監視下に置き、移動の制限を課し、しばしば個人の自由や尊厳を踏みにじる強権的な統治システムによって維持されています。しかも、国内のみならず、圧倒的な経済力や軍事力を背景に、その強権的な統治モデルを海外へ「輸出」しようとする姿勢を隠しません。

 このような「中国標準」が世界を席巻することのないよう、日本や台湾、オーストラリアをはじめとするアジアの自由民主主義国家は、欧米諸国と連携しながら、「自由で開かれたインド太平洋」を堅持する努力を怠ってはならないと考えます。

(衆議院議員 長島昭久)
【長島昭久プロフィール】
自由民主党 衆議院議員(6期)。1962年生まれ。慶應義塾大学で修士号(憲法学)、米ジョンズ・ホプキンス大学SAISで修士号(国際関係論)取得。2003年に衆院選初当選。これまで防衛大臣政務官、総理大臣補佐官、防衛副大臣を歴任。2019年6月に自由民主党に入党。日本スポーツ協会理事、日本スケート連盟副会長兼国際部長。