性依存系女子とクズ系男子のグレーな恋愛、どうなる? 内田理央主演『来世ではちゃんとします2』最終話〈ドラマでしゃべりたい〉

 内田理央主演のドラマ『来世ではちゃんとします2』(テレビ東京、毎週水曜深夜0時40分)。9月29日に公開された第8話が最終話となった。内田理央演じる性依存系女子の主人公・桃ちゃんは、本命だった”三高”セフレを切って、職場のヤリチン系イケメン・松田くんとプラトニックな恋愛を続行中。性に奔放な2人の行く末はどうなる……?

最後まで「ちゃんとできない」2人の事情

大本命セフレ・A君の連絡先を削除した桃ちゃん。職場の同僚・松田君に「3カ月の間、健全な関係でお付き合いしてみましょう」と宣言し、性に奔放な2人のカップリングにも関わらず、未だにプラトニックな関係を貫いているのだった。

とはいえこれまで2人は、これまで何度も一線を超えてしまいそうになってきた。そんな2人がこのまま、一線を超えないお付き合いをしていくなんて、可能なのだろうか。

2人とも、今の自分に対して「このままではいけない」という思いがあることは確かなようだ。セフレと疑似恋愛を楽しんで、なんのためかは分からないが、軽い身持ちで毎日いろんな異性と遊んで……という自分に、どこか焦燥感を抱えている。しかし、人間そう簡単にこれまでの自分を変えることはできない。だから2人とも、捨てたはずの過去の恋愛に縛り付けられて、未来あるこれからの関係に、全力投球できずにいた。

気づけば、好き”だった”人からの連絡を待って、用事もないのにスマホを開く桃ちゃん。そんな桃ちゃんの様子は、松田君にもしっかり見抜かれてしまう。自分のことを好きでいてくれる男の前で、過去の男の面影をちらつかせたところで、桃ちゃんにはなんのメリットもないのだが……。そんな自分への”甘さ”が、桃ちゃんを「ちゃんとしていない女」にしていることは間違いない。

結局最終話でも、2人は「ちゃんとしない」ままだった。過去のしがらみもしっかりとは断ち切れず、かといって目の前の希望を「これは違う」と言って捨てることもできず……「ちゃんとしたい、とは思っている」とでも言うように、また一線を越えようとしては周りに邪魔されて。

たしかに、しっかりと人生のステップを踏んでいこうとする人もいる。たとえばA君の本命彼女はまさにそうで、結婚に乗り気でないA君に対し、きちんと責任を迫っている。人生に目標を決めて、そこに向かって努力していくのも、いい人生だろう。しかし、桃ちゃんや松田君はそうでない。来年、仲のいい同僚がだれか、結婚してしまうかも分からない。それでも、目の前が楽しい方、気持ちいい方へと進んでいきたくなってしまうのが、桃ちゃんや松田君の人生なのだろう。

何か決めないといけないわけではない。彼らはまだ20代で、人生の選択肢だってたくさんある。だから結局2人がちゃんとするのは、また「来世」でのお話のようだ。

 

こじらせキャラクターが救う、私たちの未来

処女厨の筋肉系男子林くん、アセクシャル系女子梅ちゃん、風俗嬢にガチ恋中の檜山くん。結局、誰も恋愛が成就することはなかった。デザイン事務所の同僚である彼らは、全員がどこかしらをこじらせていて、だから恋愛が上手くいかない。そんな「問題のある人々の恋愛事情」を赤裸々に、そしてコメディとして描いたのが本作だった。

彼らに限らず、世の中はきっと自分の事情をこじらせてしまっている人々であふれているのだろう。そして、心のどこかで「ちゃんとしなきゃ」と思いながら、何もできない自分に苦しんでいる。ドラマに登場する、全然ちゃんとできていない登場人物たちを見ながら「私と一緒だ」とか「オレよりもひどいな」と、安心した人も多くいるのではないだろうか。

自分のちゃんとしていない部分って、なかなかリアルの友人には相談しづらい部分だったりもするし、他の人の話も耳に入ってこない。でも、本作を見ていると「なあんだ、ちゃんとできていないのって、私だけじゃなかったんだ」と、どこか心の穴を満たしてくれるような実感があった。

桃ちゃんと松田君も、今すぐちゃんとしなくたって、いつか一線を超えちゃう未来があるのかもしれない。ドラマはそんな余韻を残しながら、最終回を終えた。だから私たちも、無理してちゃんとしようとしなくてもいいのかもしれない。そう思うと、明日も元気に生きていけそうな、楽しく男女交際できそうな、そんな勇気をもらえるドラマだった。

 

(イラストと文・ミクニシオリ)

1992年、茨城県生まれ。フリーライター・恋愛コラムニスト。ファッション誌編集に携わったのち、2017年からライター・編集として独立。エンタメ・恋愛・ライフスタイルを中心に執筆活動を行う。インタビューや匿名取材、街頭取材経験も多いノンフィクション系ライター。若者恋愛トレンド評論家としてネットTV・地上波バラエティなどに複数回出演。
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