歌手活動20周年のEXILE ATSUSHI「1人の人間としての幸せに重きを置くように」コロナ禍で変化　「家族を持ちたい」願望も

「いつかは家族を持ちたいと思うようになってきました」

――ソロアーティストとして今後、どのような将来像をイメージしていますか？

日本人の平均寿命が80歳だと考えると、今月42歳になる僕はもう人生の折り返し地点を過ぎたんだなと思いました。仮に60歳まで元気に歌えたとして、毎年ツアーをやってもあと20回、毎年アルバムを出せてもあと20枚。60歳以降になると今まで通りに健康な姿を維持できるのかも元気な声が出せるのかも分からない。ひょっとしたら病気になるかもしれないし、あるいはその前に死んじゃう可能性だってある。そういうリスクは常に意識しているからこそ、できる限り後悔のないようにやっていきたいです。加山雄三さんのように80歳を越えても現役で歌われている方って本当にかっこいいと思います。その一方でコロナ禍になってから、両親や妹家族らと食事をしたり、一緒に過ごせるのってすごくかけがえのない瞬間だなと強く感じるようになりましたね。だからなのか僕もいつかは家族を持ちたいと思うようになってきました。ってまだ全然予定ないですけど（笑）。その上で、“ステージの上で死ぬまで歌っていたい”みたいな気持ちは前ほど強くないというか、コロナ禍になってからは1人の人間としての幸せに重きを置くようになりました。そうした考え方の変化もありつつ、次はコンセプトアルバムを作ってみたいし、もうちょっと状況が良くなれば海外にも挑戦したい。ライブなら綾戸智恵さんのように楽器1つと自分の歌のみで完結させる魅せ方で、全国のホールを回ってみたいです。

――先ほど、EXILE ATSUSHI像の話がありましたが、良い意味で裏切ることはありそうですか？

もちろん考えています。今回あらためて思ったのは、ファンの皆さんと作り上げた20年だったということ。ファンの皆さんが喜んでくれるかな、とか常にそういうことを考えながら歩んできた20年でしたから。僕的にはEXILE ATSUSHI像もファンの皆さんと作り上げてきたものだと思っているからこそ、壊したくない気持ちがあったのかもしれない。だからそれを1度良い意味で壊して、また1から始めると考えると、次はコンセプトアルバムなのかなって漠然と思っています。

――最後に夢を叶える秘訣があれば教えてください。

最近は夢がないという人も多いと聞きますが、これってやってみないと分からないと思うんですよね。だからまずいろいろ挑戦して好きなことを見つけるのが1番良いと思います。ちなみに僕は夢を叶える時は論理的に考えながら、少しずつ段階を踏んでいくタイプ。例えば僕が素人で日本一のアーティストになりたいと言っても、その段階だと早すぎるし、その前にデビューしなきゃですよね？　だからまずデビューするために事務所さんを決めなきゃいけないし、そうするとデモテープを録らなきゃいけないし、だったらその前にビブラートを勉強しなきゃ、ってなる。そうやってどんどん夢から逆算していくと今やるべきことが見えてくると思うんですよ。振り返ると僕は夢を叶える時ほど理屈っぽかったかも。でも1つ１つ目の前の目標を達成していくしか叶えられないと思うし、その方が絶対に行きたい場所に近づける。はっきり言って宝くじみたいな運任せの一攫千金的なやり方はギャンブルすぎますからね。あと人からの協力がないと無理なので、夢を口に出すことも大事。僕の経験上、口に出すことで周りの人も協力してくれたので、思いを持って夢を口に出すことはとても大切だと思います。そしてさっきも言ったように夢を逆算して目の前の1つ1つの目標をクリアしていけば、思い描いていた場所に確実に近づけると思います。

（取材と文・近藤加奈子）