赤ペン瀧川「表現の規制は時代に合わせて厳しくなるのは仕方がない。でも過去の作品に今の物差しをあてるのは間違っている」〈インタビュー後編〉

ドキュメンタリーについても語る(撮影・蔦野裕)

「人の想像力で完成させる表現には規制がない」

 ドキュメンタリーに関しては表現に関する規制などはぐっとハードルは下がりますね。
「ドキュメンタリーが面白いのはそこ。規制とか言ってる場合ではない。事実でしかないから。そこは強いですよね。ただ描写的に上映が許されない国はありますよ。2022年公開の『バズ・ライトイヤー』というディズニーのアニメがあったんですが、同性同士のキスシーンがあるから中国では流せないということがありました。しょうもないな、と思ったんですが、そういうふうに検閲をかけてダメな国はあります」

 今後、日本における「表現」ってどういうところに向かっていくんでしょう。
「先日、怪談師の怪談を聞くという番組にゲストに呼ばれたんですが、今、YouTubeで怪談師の動画ってめちゃくちゃアップされているんですよね。なんでこんなことになっているかと僕なりの分析でいうと、前は『あなたの知らない世界』とか恐怖映像とかいろいろあったじゃないですか。でもCGを使えば何でもできるっていうことをみんな知ってしまった。加工し放題で偽物だってみんな分かっている、という時に、怪談師のように怪談を喋り、聞いた人の想像力だけで完成する表現は誰にも怒られないし、誰にも止められない。人の想像力で完成させる表現には規制がない。多分、それで怪談ってものすごく増えてったんだと思うんです」

「想像力だけで完成する表現には規制がない」というのも規制が強くなってきたゆえに生み出されたというか見直された考え方ですね。
「はい。“風が吹けば桶屋が儲かる”みたいに、CGが発達して心霊番組が消えて、心霊写真とか映像といった怖いものがテレビで流せなくなくなったらどうなったかというと、怪談にもう1回火が付いた、というところがあると思うんです」