起業を意識する今どきの大学生が本音トーク「就活までのタイムリミット内に決断」「起業を意識していることに周囲からの反応は…」

撮影・蔦野裕

学生時代から起業を意識した活動に取り組むことのメリットやデメリットとは?

ー就職や研究という進路と比べたとき、学生のうちに起業やアントレプレナーシップ活動をするメリットと、デメリットやハードルをどうとらえていますか?

佐山さん「就職活動までの“タイムリミット”はハードルの1つですよね。大体3年後期で就職活動が本格化する時期までに起業に踏み切れるかどうか。すでに起業できた人でも安定して利益を出すまでに至らず就活に戻る人も少なくないし、起業経験が評価される場合もあったりして最終的に一般企業へ就職するケースも多い」

田上さん「私も就活の早期化が進む中、十分に考えきれないまま決めることには葛藤を感じます。就活が始まるまでに“この先の人生を決めなさい”と言われても、正直かなり難しい。同級生でも、やりたいことが分からないという人はすごく多いです。だからこそ、一度立ち止まって考える時間を取るとか、海外に出てみるとか、世界を広げる経験をする人がいるのも自然なことなのかな、と」

秋山さん「私は当初、起業家に対して“好きなことを極めてミッションを掲げるキラキラしている存在”というイメージを抱いていたんです(笑)。でも高校時代からビジネスコンテストなどに参加し、先輩起業家のリアルな姿を見る機会を得て、起業とは“何を実現したいのか”という強い軸がなければ続かない厳しい世界だということを感じました。寝る間も惜しむ状況で熱量を保ち続けられるかが問われる、厳しい世界なんだと。軽やかに挑戦を楽しむ方もいますが、私は何かと抱え込みがちなタイプなので(笑)そういう部分にもハードルを感じています」

田上さん「学業や研究と起業準備の両立は簡単ではないですよね。実際に休学して取り組んでいる人の話もよく聞きますけど…」

佐山さん「私の周りだと休学して1年間やりたいことに挑戦するという人も多いんですけど、休学も考えたりしますか?」

田上さん「私は少し考えたことがあります。実は今月から海外に短期留学する予定なんですが、その時間を通して自分が本当にやりたいことを見つめ直したいと思っていて。もしその間に“海外でもっと挑戦したい”とか“起業を本格的に考えたい”という気持ちが強くなれば、もしかしたらと思わないでもないですが…現実的には4月からゼミに所属し卒業論文も控えているため難しいんですけど(笑)」

秋山さん「“ストレートで卒業するのが最善”という風潮もありますしね、特に親世代には(笑)。もし学生のうちに本気で起業するなら、私はどちらかに振り切らないと難しいかも…。学業と起業準備を同時に本気でやるのは、正直かなり大変だろうなと感じています」

鶴岡さん「僕は、起業に集中するという前提で考えるなら、休学は一つの有効な選択肢だと思います。“学生”という立場のメリットを活かすという観点で、その先の将来のことを考えたうえで意図的に学生期間を延ばすというのは、戦略的な選択とも言えるかもしれません」

秋山さん「確かに、こういった支援施設(会場・Startup Hub Tokyo 丸の内)などでも、学生だからこそ受けられる支援があったりしますしね。私も、学生ならではのメリットを活用して学生のうちに起業したいとは考えているんですが」

佐山さん「OBOGも親切ですよね。社会人同士になるとどうしても利害関係が生まれますし、簡単にはアクセスできないような方にも学生の立場だと話を聞いていただけたり、可愛がってもらえたりする。そこは大きなメリットだと思います」

秋山さん「私は伝統工芸という少しマニアックな分野に取り組んでいるので覚えていただきやすいのか、“これ興味ある?”と声をかけていただいたり、いろいろな方につないでいただけることが多くて。学生ということで助けていただける部分や、背中を押してもらえると感じることも多いですね」

佐山さん「たとえ起業が上手くいかなかったとしても、学生のうちに税金や法人手続きなどについて実践的に知ることができるのも大きなメリットだと思います。お金や人材をどう配置するのかといった経営の視点を20歳前後で持てるのは、その後も大きな差になるのかな、と」

秋山さん「確かに私もアントレプレナーシップ活動に参加するようになってから、社会をより多層的に見られるようになった気がします」

田上さん「皆さんがおっしゃる通り、特に学生の場合、たとえ失敗しても学生という立場だと“次に活かせばいい”と前向きに捉えやすいというのは大きなメリットだと思います。確かに時間の制約や、資本を得て扱う難しさといったハードルもありますが、学生のうちの挑戦は学びも大きく、比較的リスクを軽く背負える。起業にも就職にも研究にも、それぞれメリットとデメリット、ハードルがあります。どこまでリスクを取るのか、どこまで妥協するのか。結局はその取捨選択ですよね」

 

    ー鶴岡さんは、実際に学生起業のメリット・デメリットを経験されていますが。

鶴岡さん「私は、起業のメリット、デメリット、ハードルも含めて、すべては自分が負う“責任”だと捉えています。起業すれば、明日の生活を成り立たせられるかどうかは自分次第。誰かが自動的に報酬を振り込んでくれるわけではありません。そのひりつくような感覚というか“自分の力で生きている”という実感は、他では得難いもの。起業と企業インターンの両方を経験したからこそ、起業で得られる感覚や経験は大きなメリットだと感じています。

 一方で、責任の範囲が広がることはかなり大きなプレッシャーです。人を巻き込めばその人に対する責任も生まれる。それは賃金などの雇用責任だけでなく、事業のミッションがその人のキャリアにどんな影響を及ぼすのかという責任もあると思っています。振り返ると自分は過去の挑戦では、そこまで意識できていませんでした。起業は自分一人の挑戦ではなく、仲間と進めるもの。だからこそ、人に対する責任をどう引き受けるかは重要なテーマであり課題だと思います。

 また、私は理系気質で、数字やデータを優先してしまい、自分の思いや熱量を言葉で伝えるのが得意ではありません。起業当時はよく、仲間が私の意図を汲み取って補ってくれていました。今後も経営に関わるなら改善すべき点だと感じていますが、同時にチームで補い合うことができれば良いとも思うので、改めて、仲間づくりは重要だと感じますね」

秋山さん「私は自分で、特に“人を巻き込む力”が弱いと感じているんです。自分の中には強い熱量があるんですが、巻き込んだら相手に負荷をかけてしまうのではと考えて、結局一人で抱え込んでしまう。リスクを先回りして想像しすぎる性格もあって、確信が持てないと踏み出せないんです。高校2年生から起業を志していますが、最善を求めるあまり納得できる形を見つけきれず、実行に移せていない。そんな自分にもどかしさを感じています。周囲からは“そこまで準備しているなら、もうやればいいのに”とよく言われるのですが(笑)。今は学生向けの起業プログラムや支援制度も充実していて、サポート環境も整っている。でも起業したらその後、走り続けるのは自分。学生だからこそ勢いで踏み出せる面もありますが、まだ発展途上の身としては、走り続ける力が自分にあるのかと考えてしまう」

鶴岡さん「私は割とあっさり起業に踏み切ったのですが、それは起業前にOBが立ち上げた創業間もない会社でインターンをした経験が大きかったと思います。10人未満の組織で経営の現場を間近に見て、近い距離で起業のことや事業の将来像を語り合う中で“自分ならこうする”という具体的なイメージが持てた。だから背中を押されたときも“やってみます”と自然に挑戦できました。自分としては、考えすぎて動けず、後々後悔するほうが嫌だったんです。結果的に事業はクローズしましたが、挑戦した経験そのものは大きな財産になりました」