起業を意識する今どきの大学生が本音トーク「就活までのタイムリミット内に決断」「起業を意識していることに周囲からの反応は…」

撮影・蔦野裕

起業意識に込めた“本音”…周囲との向き合い方は? 思い描く「成功像」とは?

ー皆さんがアントレプレナーシップ活動をする中でとくに心がけていることや気を付けていること、気になっていることがあれば教えてください。

田上さん「私は“人との出会い”を大切にしています。イベントで出会った人との縁が、いつか思わぬ形でつながるかもしれないし、さまざまなキャリアや価値観に触れることで視野が広がり“自分は何が好きか、どう生きたいか”を考える材料が増えるからです。イベントや社会人の講演に積極的に参加するなどして意識的に人脈を広げ、多くの人の話を聞くようにしています」

鶴岡さん「“そういう場では変な大人には気をつけなさい”と、起業教育の先生からもよく言われるんですけど、正直、学生の立場でそれを見抜くのってなかなか難しいですよね(笑)」

田上さん「ありますよね。話を聞きに行ったら勧誘される、みたいな(笑)」

佐山さん「でも、いわゆる“怪しい人”って、だいたい向こうから積極的に連絡してくる印象があります(笑)」

秋山さん「私は、基本的に自分が興味を持って自分から会いに行くか、もしくは信頼している人から紹介してもらった相手に会うようにしています」

鶴岡さん「そう考えると、やっぱり日頃から人とのつながりを大事にしておくことが重要ですよね。信頼できる人を介した紹介であれば、安心して新しい人と会える。良い出会いが次の良い出会いを生んで、少しずつ信頼できるネットワークができていく」

佐山さん「あと私は、ただ批判をしたいだけの人とも、あまり関わらないようにしています。例えば、私はずっと海外で挑戦したいと言っているんですが、学生でも大人でも、ただ否定や批判だけをしてくる人っているんですよね。私はけっこう繊細なので(笑)、メンタルコントロールの観点からも、そういう人との距離は調整しています」

ー学校や同世代の仲間のなかで、起業意識を持っていることで何か言われたりしますか?

秋山さん「私は、高校時代から伝統工芸に携わったりビジコンに出場するなどの活動をしていたので“いつも何かやっている人”と見られていましたね。自分のやりたいことは大事なんですが、その型にはめて見られるのは本意ではないので、自分から積極的に起業意識について話すことはしていませんでした」

田上さん「私も先日、成人式で地元の友人と久しぶりに会って近況を聞かれたとき、学生団体を作ったことやアントレプレナーシップの話題は、どこまで話そうかなと考えてしまいましたね」

鶴岡さん「学生全体から見たら、アントレプレナーシップ活動をしている学生はまだ少数派ですしね」

佐山さん「私は起業系の活動に触れていない人と話をするとき、自分ではまったくそんなつもりはなくても、上から目線のようにとらえられしまうことがあると気づいてからは、言い方にも気を配るようにしています」

鶴岡さん「確かに。私も、誰かが“今これをやっている”と話していると、“なぜそれを?”“どんな背景があるの?”“将来どうつながるの?”と、つい深掘りしたくなるんです。その人の熱意の源や目的を知りたくて質問を重ねてしまう。でも誰しも必ず明確な戦略や理由があるとは限らない。自分の基準で踏み込むと、問い詰めているように受け取られてしまうこともあって、踏み込み過ぎたかなと反省することもあります(笑)。

 それと最近は “イベントをやっています”と話すと、まず“それって怪しくない?”と警戒されることがあります(笑)。まあ自分としては、幅広いコミュニケーションを心がけつつ、届くべき相手に届けばいいかと思っていますが」

ーちなみに、起業意識を持っていることやアントレプレナーシップ活動について、ご家族の反応は?

鶴岡さん「うちは“やりたければやればいいんじゃない?”という感じでした。起業したときも、特別に強く背中を押されるわけでもないけど止められることもなくて。自分のやりたいことを尊重してくれている感覚があるので、それはありがたいなと思っています」

佐山さん「私は中学・高校くらいから、いつか起業してみたいという話は一応していましたけど、今は一人暮らしということもあり特別、詳しく話すことはないです。まあ、親にお金を借りるとかでないなら、それでいいかな、と(笑)」

田上さん「うちは家族がいわゆる“手に職”系で、国家資格を持っているんですけど、だからといって同じレールを強要されることはないです。ただ仮に反対されたとしても、やりたいことはやるしかないと思っています。最終的に自分の人生を生きるのは自分なので」

秋山さん「私は、親からも“変わっているよね”と言われます(笑)。以前は少し嫌でしたが、今はそれを長所だと思えるようになりました。他と違うということは、自分なりの選択をし、異なる経験を重ねてきた証でもある。そう考えると、少し誇りに思ってもいいのかなと感じています。活動については、両親も“普通と違うこと”をして勉強がおろそかになることを心配していたんですが、私がけっこう頑固に活動を続けて(笑)、ビジコンで受賞するなど外部から評価されたりしたことで、最近は強く言われなくなりました。ただ、学業と活動との両立は常に心がけています」

ー最後に、起業も含めて将来を真剣に考えている皆さんにとって、起業家としての成功イメージとはどのようなものでしょうか。

田上さん「私は高校時代、怪我を抱えたまま出場したインターハイ予選で肉離れを経験したことが原体験になっていて、そこからコンディショニングや身体管理に関心を持ち、将来はこの分野で社会に貢献したいと思うようになりました。アスリートに限らず、スポーツや余暇活動を楽しむ幅広い人に、安心して体を動かしてほしい。自分の悔しさや失敗を、誰かの未来では防げたら。就職であれ起業であれ、その思いを事業を通して実現できている状態が私にとっての成功だと思います」

佐山さん「私も具体的なビジネスアイデアは定めていませんが、日本と海外を行き来しながら自ら会社を立ち上げ、社会に価値を提供し、継続的に利益を生み出せる仕組みを築いている姿が理想です。私は海外サッカーが好きなんですが実は、起業のその先に、自らヨーロッパのクラブのオーナーになるという目標がありまして。自分の人生に彩りを与えてくれた、日本やサウジがどれほど投資しても代替できないヨーロッパのサッカー文化を後世に残す一助となりたいと思っているんです。

 そのためにも、学校でビジネスでの応用範囲が広い統計学やプログラミングを幅広く学習している他、語学も重視しており、今はスペイン語の勉強を始めています。ヨーロッパであれば英語である程度は通じるとは思うのですが、相手の国の言葉を話せることはリスペクトの表れにもなりますし、ビジネスをするうえで自分の思いを本気で伝えるための手段としても大切だと思うので」

秋山さん「私は“職人×研究者”のような存在を目指しています。探究心とデザインの視点を掛け合わせ、その土地に根づくものづくりに宿る無意識の知恵や創造性を可視化したい。伝統工芸は敷居が高いと思われがちですが、本来は、世代を問わず多くの人を引きつける魅力を持っています。斜陽化や職人の高齢化が課題とされる中、まだ言語化されていない価値を掘り起こし、現代の文脈とつなぎ直す仕組みをつくりたい。伝統をただ守るだけでなく、職人技術を尊重しつつ新たな価値創造の源として再編集することが目標です。そのために自ら着物づくりにも取り組み、内側の当事者として学びながら、外部の視点も持ち続ける。両方の視点を持ちながら伝統の新たな循環を生み出すことが、私の描く成功した姿です」

鶴岡さん「私は、起業における“成功”に明確なゴールはないと思っています。経営は小さな成果の積み重ねで成り立ち、これで完成というものはない。成功を強く実感する瞬間はむしろ少ないのかもしれません。それでも振り返ったときに“やりたいことに挑戦できた”と思え、それが誰かの課題解決につながっていたなら、それが私にとっての成功です。そのためにも、好きなことを追い続けられるだけの武器と実力を磨き続けたい。学生の間に限らず、生涯を通じて成長し、いつかまた起業に挑戦したいと考えています」

ー起業を意識する学生の皆さんは、自分の夢を実現させるために、さまざまな可能性を検討しながら、アクションを起こしていることがお話から伝わってきました。どうもありがとうございました!

(TOKYO HEADLINE・秋吉布由子)

 

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