美輪明宏さんを、少しだけ偲びたい【黒田勇樹のハイパーメディア鑑賞記】

 黒田勇樹です。

 今なぜか「クソ面白いものを作らなければいけない」という呪いにだけ突き動かされてます。なぜなんだろう? まあ、分かれば苦労はないんですけどね。

 今週は特別版です。

黒田勇樹

 そもそも、人の訃報を仕事に利用するのはどうなのかと思っている筆者ですが、今回に関してはどうしてもいくつか言いたいことがあるし、ここに書くことが「メディア」であり「鑑賞」であり「ハイパー」なので、許して頂きたい。

「バケモノ」という、言葉がここまで似合う人は、あとは坂東玉三郎ぐらいで、筆者の芸能人生で出会った怪物の1人だった。
「化ける」とは、すなわち「演じる」ということであり、それを痛烈に示してくれたのが美輪さんだった。

 初対面は池袋の劇場。黒蜥蜴という江戸川乱歩原作の舞台を観に行った時。18歳ぐらいかな? 単純に、美輪さんを尊敬していたので、演劇大好き黒田少年は「どんなことをしているのだろう? 直接観てみたい」と、キャンセル待ちの列に並び、どうにか、すっごく後ろの席で観劇することが出来たのだが、このあとに大事件が起こった。

 とても素晴らしい作品を観て、満足し「自分も頑張らなきゃな」と、背筋を伸ばしたその時、「黒田勇樹さんですよね?美輪が呼んでいます」と、スタッフさんに声をかけられた。美輪さんは、俺のことを認識していて舞台上から俺のことが見えていたらしい。
「んな、わきゃない」

 舞台に立ったことがある人にはわかると思うが、あれだけ完璧な演技をしながら「後部座席に座っている、ちょっと有名な元子役」を見つけるなんて出来やしない。楽屋へお邪魔すると、舞台上とは見違えるほどの「普通のちっちゃいおばちゃん」が、いた。なにか、とても「見透かされた」ようなことを言われ「かなわないな」と、思った。内容は、本当に人に知られたくないことなので割愛する。

 その後、CMなどで共演させていただいたり、接点はあったがプライベートでのお付き合いはなく、今日この日を迎えてしまった。
 この連載では「一人称は“筆者”にする」と、決めている僕ですが、今回限りは「僕は“どうせ、まだその辺にいて、変なパワーとかオーラとか送ってきてんだろ!”と思っています」で、締めくくろうと思います。

 御冥福を祈りつつ「勝手にバトンは受け取った! 俺もそんくらいになってやるぞ!」と、密かに思っています。

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黒田勇樹(くろだ・ゆうき)
1982年、東京都生まれ。幼少時より俳優として舞台やドラマ、映画、CMなどで活躍。
主な出演ドラマ作品に『人間・失格 たとえば僕が死んだら』『セカンド・チャンス』(ともにTBS)、『ひとつ屋根の下2』(フジテレビ)など。山田洋次監督映画『学校III』にて日本アカデミー賞新人男優賞やキネマ旬報新人男優賞などを受賞。2010年5月をもって俳優業を引退し、「ハイパーメディアフリーター」と名乗り、ネットを中心に活動を始めるが2014年に「俳優復帰」を宣言し、小劇場を中心に精力的に活動を再開。
2016年に監督映画「恐怖!セミ男」がゆうばり国際ファンタスティック映画祭にて上映。
現在は、映画やドラマ監督、舞台の脚本演出など幅広く活動中。

公式サイト:黒田運送(株)
Twitterアカウント:@yuukikuroda23