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演出の妙を感じさせる作品 世田谷パブリックシアタープロデュース『オセロ』

2013.05.27 Vol.592

 常に独創的な作品を発表する世田谷パブリックシアターが、またもや新たなる挑戦に乗り出す。

 今回の題材はシェイクスピア四大悲劇のひとつとして知られる『オセロ』。そして白井晃が『オセロ』を現代の視線で再構成・演出する。白井がシェイクスピアを手掛けるのは遊 機械/全自動シアター時代以来となるから、それだけでもレアといえばレアなのだが、今回はなにやら演出がかなり特殊なことになっているという。

 俳優は単にその役を演じるだけではなく、“素の俳優”と“俳優が演じている役”という二重構造の中で演じ、心情をシンクロさせていく。演出家は本来の意味の役割を越え俳優に関わろうとし、俳優は時として素の心情で共演者に嫉妬の目を向ける…。

 例えば舞台に立つ仲村トオルは、その時「オセロ」なのか、「オセロを演じる俳優」なのか、それとも「素の仲村トオル」なのか…といった案配。

 二重構造というと劇中劇を思い浮かべるかもしれないが、今回の場合は異次元というか異空間といった趣。劇場構造をも駆使した壮大なる挑戦ともいえる作品。

岩松了プロデュース「カスケード~やがて時がくれば~」

2011.03.07 Vol.500

岩松了が若手俳優たちとワークショップから作り上げる

 作・演出家・岩松了が今年早くも2作目の新作書き下ろし。

 1〜2月にかけ上演した『国民傘』ではオーディションで選ばれた俳優たちと「戦争」をテーマとするオムニバス形式の実験的な作品を作り上げた岩松。今回は昨今、舞台や映像で頭角を現しつつある若手俳優たちとのワークショップを経て、ひとつの作品に取り組むという。

 物語は「かもめ」の上演を控えた若い役者たちを中心に繰り広げられる。とある出来事をきっかけに彼らのバランスがくずれはじめ、さまざまな問題が浮き彫りになる。彼らを翻弄するのはチェーホフ? 世間の大人たち? それとも演出家? 涙を笑いで洗う青春群像劇。

 葛川思潮社の『浮標』での好演も記憶に新しい安藤聖、昨年の『シダの群れ』で岩松作品を経験済みの�「ジョンミョンら、これから気になる若手俳優たちがしのぎを削る舞台となる。

こんな時代だからこそ演劇が見たい『ディグ・ディグ・フレイミング!』範宙遊泳

2002.04.26 Vol.750

 範宙遊泳は2007年より、東京を拠点に海外での公演も行う演劇集団で、すべての脚本と演出を山本卓卓が手がけている。その作品は現実と物語の境界を見つめ、その行き来によりそれらの所在位置を問い直す、といったもの。近年は日本国内のみならずアジア諸国からも注目を集め、マレーシア、タイ、インド、中国、シンガポール、ニューヨークで公演や共同制作も行っている。

 本作は2020年に上演予定だったのだが、新型コロナウイルスの影響で中止に。コロナ禍で範宙遊泳は関連公演なども中止となり、2020年は「『むこう側の演劇』プロジェクト」を立ち上げ、オンライン上で作品を発表。そこで上演した作品をモチーフとした新作『バナナの花は食べられる』で昨年3月に劇場公演を再開したのだが、山本は今年2月、同作で第66回岸田戯曲賞を受賞。今回は受賞後初の公演となる。

 作品は「時代は笑って許せるか?」をテーマとした「めげない人々に捧げる生命讃歌」。

 戯曲は山本が2年前に留学先のニューヨークで半分だけ書き、残りの半分を日本で書き終え上演するつもりでいたもの。「それぞれの土地で書くことでハイブリッドな空気感が閉じ込められるような気がしていた」という山本だが、折からのコロナ禍でそのプランは白紙に。この予期せぬ出来事が作品にどう影響したのか。制作過程も含め興味深い作品となりそうだ。

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