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『トーテム』の演出家ロベール・ルパージュによる自叙伝的一人芝居『887』

2016.06.13 Vol.668

 現在、絶賛上演中のシルク・ド・ソレイユの『トーテム』の演出家であるロベール・ルパージュの新作舞台『887』が6月23日から東京・池袋の東京芸術劇場で上演される。

 本作はエジンバラ演劇祭をはじめ世界中で喝采を浴びた作品で、日本初演。
 ルパージュは演出はもちろん、脚本、美術デザインも手掛ける。そしてなにより注目なのがルパージュ自身が出演し、なおかつ一人芝居であるということ。

 作品のテーマは「記憶」。タイトルの「887」は、彼が子供の時に家族と住んでいたケベック・シティーの番地、887 Murray Avenueのことで、「887」というアパートの番地から記憶をめぐらせて幼少期を振り返り、ルパージュ自身のプライベートな部分と、彼が過ごした1960年代のケベックを覆う複雑な社会問題を描き出すという。

“映像の魔術師”と呼ばれるルパージュは視覚的な仕掛けや最先端のテクノロジーによる美しい映像を駆使して、観客を魔法にかけるように魅了する。

 今回も舞台上では、ルパージュが精巧に作りこまれたアパートの模型をのぞき込むと最新のプロジェクションマッピングによって、その中に住む人々が映し出されるといった「ルパージュ・マジック」がふんだんに盛り込まれている。
『トーテム』のようなダイナミックな世界観とは一転した自叙伝的一人芝居。先にトーテムを見てからこちらを見るのも面白いかも!?

ロベール・ルパージュ『887』
【日時】6月23日(木)〜26日(日)(開演は23・24日19時、25・26日14時。※英語上演・日本語字幕付。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)
【会場】東京芸術劇場 プレイハウス(池袋)
【料金】全席指定 S席:前売6000 円、当日6500 円/A席:前売4000円、当日4500 円/高校生割引:1000円、25歳以下(A席):3000 円、65 歳以上(S席):5000 円
【問い合わせ】東京芸術劇場ボックスオフィス(TEL:0570-010-296 [HP] http://www.geigeki.jp/ )
【作・演出・美術・出演】ロベール・ルパージュ

[STAGE]よみがえる名作を2選

2015.08.23 Vol.649

日本の30代『ジャガーの眼2008』

 2012年に上演された松尾スズキ作・演出の『ふくすけ』に出演した役者たちが集まって、昨年、この「日本の30代」を結成した。

 10年を超えるキャリアを重ねるなか、所属劇団でも重要なポジションを占めるようになり、それに伴い外部への客演も増えてきた。しゃにむに突っ走ってきた20代を過ぎ、役者としていろいろなことを考える余裕が出てきた。そして「これまでの作品からはみんなが想像できないような、もっと違った芝居がしたい」と思った者たちが自然に集まり、できたユニットだ。

 もともと松尾スズキのテイストに近い彼らではあったが、そんな思いもあったため、旗揚げ公演では文学座の鵜山仁に演出を依頼し、シェイクスピアの『十二夜』を上演。普段は見せない顔で、よそではあまり見ない十二夜を作り上げた。

 今回は木野花を演出に迎え、唐十郎の『ジャガーの眼2008』を上演する。“唐十郎”という絶対的な個性と“テント芝居”という幻想的なキーワードがついて回るこの作品は古くからのファンも多い。唐以外が上演するときも、割と近い関係の人やテイストを持つ人が手がけてきた。世代もテイストも違う彼らは果たしてどんな形のものを提示してくれるのだろうか…。

【日時】8月28日(金)〜9月7日(月)(開演は28・3日19時、29・7日17時、30・1・4・6日14時、2・5日14時/19時。31日休演。開場は開演30分前。当日券は開演45分前)【会場】駅前劇場(下北沢)【料金】自由席 前売3300円、当日3500円/指定席 前売3800円、当日4000円/高校生 前売1800円、当日2000円(日本の30代webのみ取扱い・当日身分証確認)【問い合わせ】リトル・ジャイアンツ(TEL:090-8045-2079=平日12〜19時[HP]http://www.nihonno30.com/)【作】唐十郎【演出】木野 花【出演】井内ミワク、井本洋平、延増静美、少路勇介、鈴真紀史、竹口龍茶、羽鳥名美子、平岩紙、町田水城、富川一人

ライジングスターをいち早くチェック!
VOCAL BATTLE AUDITION Presents”VOCAL BATTLE STAGE 2014″

2014.04.13 Vol.615

 ボーカルとダンスの融合で唯一無二のエンターテインメントを送り出す、EXILE。彼らを作り上げる上で重要なのがオーディションだ。なかでもボーカリストを発掘するVOCAL BATTLE AUDITION(VBA)からは、多くの才能が生まれている。本公演はオーディション出身のボーカリストが集結するもの。EXILEのNESMITHとSHOKICHI、三代目 J Soul Brothersの今市隆二&登坂広臣らが美声を響かせる。

少人数で濃密なお芝居が2本

2014.01.19 Vol.609

π*π『マーブル』
 最近ではコメンテーターとしても活躍している、タレント・俳優の松尾貴史とナイロン100℃の看板女優である松永玲子が新たに演劇ユニットを立ち上げた。毎回さまざまな作家、演出家とタッグを組み、2人を好きなように料理してもらおうという。
 もともとこの2人は1998年に立ちあがった松尾と演出家のG2によるユニット「AGAPE store」で多く共演。絶妙なコンビネーションを発揮していた。
 記念すべき第1回はさまざまな社会派テーマをアートな視点から舞台上演を続けている「劇団東京フェスティバル」の公演を見た松尾と松永からの熱烈なラブコールによりきたむらけんじが担当。
 舞台は新宿ゴールデン街にある一軒のバー。2人が演じるのは写真家を夢見る男とバーのママ。
 実在した「流しの写真家」故・渡辺克巳と渡辺が足繁く通ったゴールデン街でのエピソードをモチーフに描く大人の物語。
【日時】1月23日(木)〜27日(月)(開演は木19時、金土14時/19時、日13時/18時、月14時。開場は開演30分前。当日券は開演の45分前)【会場】小劇場 楽園(下北沢)【料金】全席指定4800円(前売・当日共)【問い合わせ】ネルケプランニング(TEL:03-3715-5624=平日11〜18時 [HP]http://www.nelke.co.jp/)【作・演出】きたむらけんじ(劇団東京フェスティバル主宰)【出演】松尾貴史、松永玲子(ナイロン100℃)

STAGE さまざまな表現と手法

2014.01.05 Vol.608

柿喰う客『世迷言』

 最近では外部作品での「演出家」としての活躍が目立つ中屋敷法仁が、自らの劇団である柿喰う客に1年半ぶりに新作を書き下ろした。そしてそれを持って、本多劇場に初進出する。
 今回のお話は、『今昔物語』や『竹取物語』といった国文学の作品を題材に「去る」をテーマに描かれる。
 舞台は平安時代末期の日本。竹から生まれた美しい姫君のもとには各国から求婚者が絶えなかった。しかしその結婚の条件は、西国の山奥に棲むという「女鬼の生首を持参せよ」というもの。しかし女鬼を退治するには人間だけの力だけでは不可能。下級貴族たちは山間に潜む大猿の一族を味方につけようとするのだが…。
 客演に篠井英介。柿喰う客の独特のスタイルと篠井がどんな化学反応を起こすのか? まさか「女鬼」のごとく、柿を食い散らかしたまま去っていくのか? 不思議な組み合わせに興味は尽きない。

【日時】1月29日(水)〜2月4日(火)(開演は水〜金19時30分、土日14時/18時、月14時/19時30分、火14時。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)【会場】本多劇場(下北沢)【料金】全席指定 通常5500円/前半割引(29〜31日)4800円/平日昼割(3、4日14時の回)5300円/乱痴気公演(1、2日18時)5500円(キャストシャッフルにて上演)【問い合わせ】ゴーチ・ブラザーズ(TEL:03-6809-7125=平日10〜18時 [劇団HP]http://kaki-kuu-kyaku.com/)【作・演出】中屋敷法仁【出演】七味まゆ味、玉置玲央、深谷由梨香、永島敬三、大村わたる、葉丸あすか/鉢嶺杏奈、橋本淳、富岡晃一郎/篠井英介

STAGE クラシックな作品からアバンギャルドな作品まで

2013.12.22 Vol.607

東京乾電池『チェーホフの「かもめ」』

『かもめ』はチェーホフの四大喜劇のうちのひとつで、作者自身の身辺に起きたことがいくつも盛り込まれ、「最も私的な作品」といわれているもの。
 東京乾電池では22年前の1991年から4年間でチェーホフの四大喜劇を上演。その22年前にアルカージナを演じた角替和枝が今回は演出を担当する。
 作家志望の青年トレープレフと女優を夢見る恋人ニーナを通して懸命に生きながらもすれ違っていく若者たちの姿を描いていく。
 トレープレフとニーナはトレープレフの母である女優アルカージナとその恋人で流行作家のトリゴーリンに翻弄され、互いの生き方を変えられていく。トリゴーリンにひかれたニーナはトレープレフのもとを離れ、やがて女優となる夢をかなえていく。トレープレフも小説家としての夢をかなえ、そしてついに二人は再会するのだが…。
 トレープレフにはCM映画などでも活躍中で、最近では東京国際映画祭出品作『なにもこわいことはない』や李相日監督の『許されざる者』などの話題作にも出演する岡部尚、ニーナは劇団入団当初から座長の柄本明の期待も大きい松元夢子が務める。
 柄本は今回は舞台美術として参加する。

【日時】1月7日(火)〜12日(日)(開演は7日19時、8〜11日14時/19時、12日14時。開場は開演30分前。当日券は開演1時間前)【会場】ザ・スズナリ(下北沢)【料金】全席自由 前売 3000円/当日 3500円【問い合わせ】東京乾電池(TEL:03-5728-6909=平日11〜18時[HP]http://www.tokyo-kandenchi.com/)【作】A・チェーホフ【演出】角替和枝【出演】宮田早苗、松元夢子、岡部尚、嶋田健太、谷川昭一朗、伊東潤、吉川靖子、山地健仁、吉橋航也、麻生絵里子、鈴木千秋、飯塚祐介、川崎勇人

STAGE 12月はスズナリ三昧!?

2013.12.09 Vol.606

モダンスイマーズ『死ンデ、イル。』

 作・演出を担当する蓬莱竜太の作る作品は人が生きていく中で避けることのできない機微、宿命、時代性にあふれている。
 その物語は時に重々しく、時に切ない。登場人物たちの背負わされた業の深さに、思わず前のめりになってその世界に引きずり込まれる感覚だ。
 今回は消えてしまった「彼女」をめぐる物語。その「彼女」を演じるのは新劇団員となった坂田麻衣。劇団としては“無骨な男たちの集団”というイメージがあった彼らだが、今回初めて新劇団員として女優を迎えた。

 これまで大規模なプロデュース公演や映像の世界での経験をホームである劇団公演にフィードバックしてきた蓬莱。劇団員としての女優の誕生で、製作過程に置いてより幅広い選択が可能になるに違いない。

 また今回の公演から「より多くの方々にモダンスイマーズを、演劇を、知ってもらいたい」という思いからチケット代を一律3000円とするという大きなチャレンジを始めた。「一度演劇を見て見たかった」なんて人はもちろん、チケット代高騰でついつい演劇から足が遠のいている人にも朗報だ。
 古山と小椋がWキャストでの出演となるので両バージョンを楽しんでもらいたい。

【日時】12月12日(木)〜22日(日)(開演は平日19時30分、土日15時。18日(水)と20日(金)は15時の回あり。21日(土)は19時30分の回あり。開場は開演30分前。当日券は開演の45分前)【会場】ザ・スズナリ(下北沢)【料金】全席指定 3000円【問い合わせ】モダンスイマーズ公演事務局(TEL:070-5556-2722[HP]http://www.modernswimmers.com/)【作・演出】蓬莱竜太【出演】古山憲太郎、津村知与支、小椋毅 西條義将、坂田麻衣【客演】松本まりか、西井幸人、宮崎敏行/高田聖子

STAGE 「フェスティバル/トーキョー13」参加劇団の作品

2013.11.11 Vol.604

チェルフィッチュ『現在地』『地面と床』

 この秋のチェルフィッチュのキーワードは「初」。

 まずは初の連続上演。11月に「フェスティバル/トーキョー13(F/T13)」で『現在地』を、12月にKAAT神奈川芸術劇場で『地面と床』を上演する。

『現在地』は昨年初演された変化をめぐる架空の物語で今回は初めて女性だけのキャストで臨む。そしてチェルフィッチュは意外なことにF/T13には初参加。

 2本目の『地面と床』は世界9都市国際共同製作による最新作。5月にブリュッセル(ベルギー)にて初演され、世界ツアーをへて待望の横浜凱旋公演となる。本作の「初」は初の音楽劇ということ。バンド・サンガツの作り出す音楽と、劇が対等に存在する新たな世界観に挑むという。

〈現在地〉【日時】11月28日(木)〜12月8日(日)(開演は月水木19時30分、日金15時、土12時/17時。5日(木)は15時の回あり。火曜休演。開場は開演30分前。当日券は開演の1時間前)【会場】東京芸術劇場 シアターイースト(池袋)【料金】一般前売4000円、学生3000円、U18(18歳以下)1000円【作・演出】岡田利規【出演】佐々木幸子、伊東沙保、南波圭、安藤真理、青柳いづみ、上村梓、石橋志保
〈地面と床〉【日時】12月14日(土)〜23日(月・祝)(開演は平日19時30分、土日祝14時。※14日(土)は17時開演。水曜休演。開場は開演30分前)【会場】KAAT神奈川芸術劇場(横浜)【料金】全席自由、整理番号付 前売一般3500円、当日 4000円/シルバー割引(満65歳以上)3000円/U24チケット(満24歳以下)1750円/高校生割引 1000円【作・演出】岡田利規【出演】山縣太一、矢沢誠、佐々木幸子、安藤真理、青柳いづみ【問い合わせ】『現在地』F/Tチケットセンター TEL:03-5961-5209 『地面と床』チケットかながわ 045-662-8866 [HP]http://chelfitsch.net/

「分かるっ!」女のショートコメディーが舞台で復活『祝女〜shukujo〜』

2013.11.10 Vol.604

 女性の本音やリアルな姿を描き出して人気を博したコメディー番組『祝女〜shukujo〜』が、舞台になって来年2月にカムバックする。

『祝女〜shukujo〜』は、2010年から2012年にわたってNHK総合で放送されたもの。番組では、仕事や休日、アフターファイブなど、日常の何気ないシーンを舞台としたショートストーリーをオムニバス形式でみせた。友達、主婦仲間との関係、職場でのやりとり、恋のライバルなど、さまざまな人間関係のなかで起こる出来事を、客観的に描いて、「ある!ある!」「分かるー!」と女性たちには絶賛され、男性たちを苦笑いさせた。舞台では、番組よりもパワーアップして、女のココロをより生々しくライブ感たっぷりに見せてくれそうだ。

 キャストは、番組のレギュラー陣である友近、YOU、市川実和子。さらに、人気爆発中の大久保佳代子(オアシズ)、入江雅人らも加わる。また、友近と大久保はWキャストで、それぞれの公演でストーリーも変わる。

 舞台版には、テレビ版でもおなじみのシリーズのほか新作も含まれる予定だという。

 年明けもっとも話題の公演のひとつとなりそうな『祝女〜shukujo〜』。チケットは現在、ローチケで発売中。クリスマスのプレゼントとしてもオススメだ。

演出の妙を感じさせる作品 世田谷パブリックシアタープロデュース『オセロ』

2013.05.27 Vol.592

 常に独創的な作品を発表する世田谷パブリックシアターが、またもや新たなる挑戦に乗り出す。

 今回の題材はシェイクスピア四大悲劇のひとつとして知られる『オセロ』。そして白井晃が『オセロ』を現代の視線で再構成・演出する。白井がシェイクスピアを手掛けるのは遊 機械/全自動シアター時代以来となるから、それだけでもレアといえばレアなのだが、今回はなにやら演出がかなり特殊なことになっているという。

 俳優は単にその役を演じるだけではなく、“素の俳優”と“俳優が演じている役”という二重構造の中で演じ、心情をシンクロさせていく。演出家は本来の意味の役割を越え俳優に関わろうとし、俳優は時として素の心情で共演者に嫉妬の目を向ける…。

 例えば舞台に立つ仲村トオルは、その時「オセロ」なのか、「オセロを演じる俳優」なのか、それとも「素の仲村トオル」なのか…といった案配。

 二重構造というと劇中劇を思い浮かべるかもしれないが、今回の場合は異次元というか異空間といった趣。劇場構造をも駆使した壮大なる挑戦ともいえる作品。

岩松了プロデュース「カスケード~やがて時がくれば~」

2011.03.07 Vol.500

岩松了が若手俳優たちとワークショップから作り上げる

 作・演出家・岩松了が今年早くも2作目の新作書き下ろし。

 1〜2月にかけ上演した『国民傘』ではオーディションで選ばれた俳優たちと「戦争」をテーマとするオムニバス形式の実験的な作品を作り上げた岩松。今回は昨今、舞台や映像で頭角を現しつつある若手俳優たちとのワークショップを経て、ひとつの作品に取り組むという。

 物語は「かもめ」の上演を控えた若い役者たちを中心に繰り広げられる。とある出来事をきっかけに彼らのバランスがくずれはじめ、さまざまな問題が浮き彫りになる。彼らを翻弄するのはチェーホフ? 世間の大人たち? それとも演出家? 涙を笑いで洗う青春群像劇。

 葛川思潮社の『浮標』での好演も記憶に新しい安藤聖、昨年の『シダの群れ』で岩松作品を経験済みの�「ジョンミョンら、これから気になる若手俳優たちがしのぎを削る舞台となる。

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