怖すぎる、でも面白すぎて止められない—『火のないところに煙は』【著者】芦沢央

2018.08.28 Vol.709

 夏といえば怪談。表紙をめくり目次を見ると、そんなよくある怪談話かと思いきや…。  作家の“私”はある日、『小説新潮』の編集者から「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」という短編小説の依頼を受ける。怪談を書いた経験がない“私”は断ろうと思ったが、ひとつ気になる事が。その依頼の舞台が“神楽坂”だという事。心のどこかでずっと引きずっていながらも、向き合わず、忘れたと思っていた出来事。まるで何者かに“忘れようだなんて許さない”と言われているような気がする。そんな気持ちと納得のいく説明が欲しくて、情報提供も兼ね“あの事”を小説として発表する事にしたのだが…。  作品はそれぞれ、怪談というより怪異な現象について書かれている。幽霊やお化けといった類の話でもなく、日常の些細な違和感とでもいうべきか。それが増大し、出口のない迷路に迷い込んだような感覚に襲われる。“私”は誰に導かれ、それらの話に出会い、書き綴っているのか。それぞれの出来事の検証やお祓いに立ち会ってはいるが、論理的に説明できるわけもなく、むしろ論理的に説明づけることが正しいのか分からない。  知らず知らずのうちに怪異に取り込まれた時、人はその運命から逃れられないのかも知れない。現実と虚構の境目があやふやで、常に不安な気持ちにさせられる、怪談より怖い一冊。

【いまライブで聴くべきバンド】埼玉・越谷「越谷EASYGOINGS」編

2018.08.06 Vol.Web Original
 今日もまた、都内のライブハウスではたくさんのバンドやアーティストがライブを行っている……けれど、数も種類も多すぎて、誰を見に行ったらいいのか分からない!!! だったらプロに聞きましょう!  今月は、東京を飛び出して、埼玉県越谷市へ! ライブハウス「越谷EASYGOINGS(イージーゴーイングス)」の若き店長、サダさんに、イチオシを聞いてきました。渋谷や下北沢といった都心のライブハウスとは違った名前が聞けるかも……?

緻密な伏線、鮮やかな切れ味、驚きと余韻の残る結末。『道具箱はささやく』【著者】長岡弘樹

2018.07.27 Vol.708

『傍聞き』で第61回日本推理作家協会賞短編部門を受賞、13年刊行の、警察学校を舞台にした『教場』がベストセラーとなった長岡弘樹の最新刊。同書は原稿用紙20枚前後のごく短い作品を15編収録。短編の名手と言われるだけあり、すべての作品が前振りから結末まできっちりと伏線を回収しつつ、鮮やかに展開。エッジの効いた作品が並ぶ。  張り込みをしていた2人の刑事は、油断したすきに犯人を取り逃してしまう。ホテルの宴会場に逃げ込んだ犯人は、招待客に紛れてしまい…(「声探偵」)。犯人をあぶり出すため、1人の刑事はある作戦を決行する。唐突にも感じる行動だが、最後の最後で、その理由が明らかに。それまでのストーリーに、さまざまなヒントが隠されているのだが、その一連の流れが見事過ぎて、不意を突かれてしまう。何度か読み返すと伏線が複数張られていた事が分かり2度、3度と驚かされる。 「仮面の視線」は、インドの建設現場に赴任している日本人が誤ってタクシー強盗を殺してしまった事から起こる悲劇を描いた作品。過剰防衛で有罪になる事を恐れた彼は逃げる事を選択。だが、その様子を見ていたものが。目撃者が自分の運転手だと知った時、彼はある決意をするのだが…。選択肢を誤った結果訪れる悲惨な結末。最後の1行に背筋が寒くなるとともに人間の愚かさ、そして歯車が狂った人生のやるせなさに胸が痛くなる一編。
『道具箱はささやく』 【著者】長岡弘樹【定価】本体1500円(税別)【発行】祥伝社

【いまライブで聴くべきバンド】下北沢のライブハウス「下北沢BASEMENTBAR」編

2018.06.29 Vol.Web Original
 自称「東京イチフレンドリーなライブハウス」、下北沢BASEMENTBAR。音楽の聖地・下北沢で、日々音楽の現場を目の当たりにするブッキング担当に、「今聞くべき、ネクストバズバンド」について話し合ってもらった。  BASEMENTBARのフレンドリーな魅力について知りたい方はライブハウスは、音楽好きの社会人サークルだ! 【下北沢BASEMENTBAR】

【インタビュー】古谷経衡 初の長編小説と新書を同時刊行 

2018.06.29 Vol.web Original
 インターネットとネット保守、若者論、社会、政治、サブカルチャーなど幅広いテーマで執筆評論活動を行っている古谷経衡。最近ではテレビやラジオのコメンテーターとしても活躍中だ。そんな古谷氏が6月、新書と小説を2冊同時に刊行。『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『ネット右翼の終わり』『ヒトラーはなぜ猫が嫌いだったか』など、これまでの話題となった著書とはまた違ったアプローチとなった同書について話を聞いた。

マキタスポーツ&スージー鈴木の脚注ぎっしりの音楽本が話題! 「ハズキルーペでかなり読める」!?

2018.06.22 Vol.707
 マキタスポーツとスージー鈴木が出演する音楽番組『ザ・カセットテープ・ミュージック』(BSトゥエルビ、毎週金曜深夜2時~2時30分)を書籍化した『カセットテープ少年時代 80年代歌謡曲解放区』が発売された。  本の内容は「A面に入れたいサザンの名曲」「松田聖子の80年代名曲特集」「語られていないチェッカーズを語る」「画期的!ユーミンのコード&メロディー」と、番組に忠実だ。 「資料的な価値が高い」とマキタ。コード進行はもちろん、沢田研二だとか「ザ・ベストテン」、82年組といった言葉の説明で脚注がぎっしりと埋まっている。スージーがエクセルで自作した「メロディー図解」もあり、さながら教科書か参考書だ。 「東京ー大阪間で読み切れるような本のほうが売れるでしょ、たぶん絶対そうなんですよ。それを考えると脚注とかを載せるのはあまり喜ばれないかもしれないけど、(スージー鈴木は)一歩踏み込んだことを言ってるし書いてきている人だし、載せておいたほうがいい、と」  第一線で活躍するアーティストが生み出したコードやメロディーの展開に注目して語る。書籍の行間や真っ黒な脚注から、J-POPが引き継いだDNAも感じられ…。 「20代、30代の人にも読んでほしい」と、スージー鈴木。「僕らが中学生高校生だった80年代は、60年代の音楽を本で知りました。でも今はそういうガイドブックやガイダンスが無さ過ぎる。『昭和歌謡』と乱暴に括って、懐かしいものは全部素晴らしいみたいな話になっている。それをはっきりと選別したいんです」  番組は40~50代が楽しく見られるものを目指してスタートしたといい、6月2日に渋谷で行われたイベントの客席も年齢層が高めだった。「ハズキルーペを使えばかなり読める」というマキタの呼びかけに客席は大笑いだった。

「料理研究家がうちでやっているラクして楽しむ台所術」林幸子【TOKYO HEADLINEの本棚】

2018.06.20 Vol.707

 大人気料理研究家グー先生こと、林幸子氏の「料理研究家がうちでやっているラクして楽しむ台所術」が好評発売中。たまに作るのはいいけど、毎日料理をするのは大変。働く主婦にとっては、献立を考えるのすら苦痛だと感じる人もいるとか。そんな時のお助け技が、同書には詰まっている。著者の林先生は、30年以上活躍するカリスマ料理研究家。そんな先生が日ごろからやっている時短テクを惜しげもなく披露。最小の手間で最大限においしさを引き出す実用的な方法を教えてくれる。手抜きではなく、ちょっとした工夫で「ラクして楽しく」が同書の基本。無理せず、無駄なく、そして効率よく。道具選びから、出汁のとり方、献立づくり、料理のアレンジ術、残りものをおいしくする工夫、片づけ術まで、先生が実践している「台所しごと」のコツが満載。ひとり暮らしの人、新米ママさん、ベテラン主婦、そして料理男子も必読の書。

「不機嫌は罪である 」齋藤孝【TOKYO HEADLINEの本棚】

2018.06.20 Vol.707
 コミュニケーションに関する著書も多い齋藤孝の最新刊。現代の日本社会において、“不機嫌”な態度をする人が増えている。職場で、電車で、レストランで、そして家庭で。不機嫌をあらわにすることは、自分の気持ちをダウンさせるだけではなく、周りの人をも不愉快にし、状況はますます悪化していくばかり。現代は、不機嫌な態度により人を服従させ自分の思い通りにさせようとする人ばかりか、ただ単に不機嫌を巻き散らしている人も多い。著者はその原因のひとつに、SNSを上げる。ネット社会となった今、人は他者の不機嫌に傷つきやすくなる一方で、24時間攻撃性を発揮できるようになった。既読スルー、未読スルーに敏感に反応し、日常のささいなイラつきを手軽に発信する。  また芸能人の不倫報道など、自分には関係ない事にでも匿名性をいい事に、怒りの矛先を向けるのだ。それらの事が、仕事や人間関係に大きな損害をもたらす。そう考えると、いつも上機嫌でいる事は、自分自身にとっても、社会のためにも大切だ。不機嫌をコントロールし、その気分を自分の中から排除する。さらに、意識的に自分自身を上機嫌にすることで、人生が豊かになるのだと。同書には簡単に気分を変える呼吸法や、著者おススメの映画や書籍の紹介など、不機嫌を解消するためのすぐに実践できる方法も書かれている。上機嫌に生きたいと願う人の指南書として手元に置いておきたい。

【いまライブで聴くべきバンド】渋谷のライブハウス「TSUTAYA O-nest」編

2018.06.05 Vol.Web Original
今日もまた、都内のライブハウスではたくさんのバンドやアーティストがライブを行っている……けれど、数も種類も多すぎて、誰を見に行ったらいいのか分からない!!! だったらプロに聞きましょう!  渋谷のライブハウスの中では中規模で、これからまだ伸びしろのあるバンドのイベントを多く興行しているO-nest。そんなO-nestで日々、東京のリアルな音楽シーンを目の当たりにしているブッキング担当に、ライブハウスという音楽の中でも最も「現場」に近い人間だからこそ勧めることのできる「ライブでこそ聴くべきバンド」を教えてもらった。

さまざまなエンタメが楽しめる「Hibiya Festival 『The Stage』」

2018.04.24 Vol.705

 演劇、ダンス、舞踊、ミュージカル、そしてオペラまで、さまざまなエンターテインメントを気軽に楽しめる「Hibiya Festival」が26日にスタートする。メイン会場となるのは東京ミッドタウン日比谷。そのQホールでは「The Stage」として、国内を代表する気鋭のパフォーマーによる「出会いと融合」をテーマにした体験型展示とパフォーマンスが行われる。また「日比谷ステップ広場」ではさまざまなジャンルのショートステージが無料で見られる(4月27日〜5月6日)ほか、帝国ホテルや日比谷公園などでもさまざまな企画が行われる。 「Hibiya Festival」は26日〜5月20日。コア期間は27日〜5月6日。
■DAZZLE『ピノキオの嘘』 【日時】4月27日(金)、28日(土・祝)(開演は27日15時/19時、28日は13時/17時) 【料金】前売・当日5000円  ■累累ールイルイー 昼:『イーストサイド物語』夜:『おとしモノ』 【日時】4月29日(日)(開演は14時/19時) 【料金】一般前売3000円、学生前売(要学生証提示)2000円、子供(小学生まで)前売500円。累累昼夜セット券一般前売り5000円、同学生前売3000円。当日はそれぞれ500円増。未就学児童は保護者膝上は無料、一席座る場合は有料  ■オリエンタリズム『シュハリ』 【日時】4月30日(月・祝)(開演は13時/17時) 【料金】一般前売3500円、同当日3800円/小中高校生前売1300円、同当日1500円 ※要学生証提示  ■REVO side B『MIRAI no KIOKU ミライノキオク』 【日時】5月2日(水)、3日(木・祝)(開演は2日19時、3日13時/15時) 【料金】一般前売4000円、小中高校生前売2000円。当日はそれぞれ500円増。未就学児童は保護者膝上は無料、一席座る場合は有料  ■が〜まるちょば『That’s が〜まるちょばSHOW!+ ウエスタン』 【日時】5月4日(金・祝)(開演は13時/17時) 【料金】一般前売4000円、4歳〜中高校生前売2000円、シニア(60歳以上)前売3000円。当日はそれぞれ500円増。特別モヒカン割引(当日審査あり)もある。 【会場】東京ミッドタウン日比谷 Qホール 【URL】https://www.hibiya.tokyo-midtown.com/hibiya-festival/

【STAGE】日本のラジオ『カーテン』

2017.09.29 Vol.698
 今後の飛躍が期待される若手劇団を集めて贈る、三鷹市芸術文化センターの「MITAKA“Next”Selection」の第2弾。  この「日本のラジオ」の作品は、古典や実際に起きた猟奇事件をモチーフとし、性的倒錯者やセクシュアルマイノリティーといった個性的なキャラクターを登場させ、物語よりも言葉と関係性を重視し描いているのが特徴。  残酷な世界を描きながらも「観劇後にさわやかな気分になる」という感想も多いことから、劇団のキャッチコピーが「さわやかな惨劇」となっている。  代表で作・演出を務める屋代秀樹の「舞台と客席を隔てるのが嫌」という考えから、普段はギャラリーでの上演が多かったのだが、「どうしても劇場でなければ成立しないアイデア」があったところに“Next”Selectionの話があり、そのアイデアを作品化したという。

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