能年玲奈の”コメディー愛”が注ぎ込まれた、オタク女子のシンデレラ!

異色のシンデレラストーリーで天性のコメディエンヌっぷりを発揮! 『海月姫』主演 能年玲奈

 国民的女優・能年玲奈が、見るからにイケてないオタク女子に! 東村アキコによる大人気連載中の同名コミックを能年玲奈主演で実写映画化した話題作がついに公開。異色の主人公を演じながら、またしても観客の共感をわしづかみにする能年玲奈を直撃。

「またコメディーができる、と思ってすごくうれしかったです」と、本作『海月姫』の主演が決まった時の喜びを語る能年玲奈。

「やっぱりコメディーって好きなんです。見れば明日も頑張ろうって思える、エネルギーが渦巻く感じが好きだし、演じるうえでも自分としては一番パワーが出せると思っていて。確かに、コメディーを演じるのはすごく難しいですけど、いろいろと研究して少しずつ自由になりつつあるかな、と。まだまだなんですけどね(笑)。そう思えるようになったのは、やっぱり『あまちゃん』での経験が大きいです。そうそうたる先輩方に助けていただきながら、初めて本格的にコメディーと向き合って、本当に楽しかったです。いい緊張感を保ちつつ、そのなかでどれだけ自由になれるか…挑戦する感覚に、生きてる!って感じました(笑)」

 そんな彼女が今回挑んだ『海月姫』は、“コメディエンヌ・能年玲奈”の新たな魅力に触れることができる注目作。なにしろ彼女が演じるのは、ダサ系メガネ&ボサボサ三つ編み&すっぴん&スウェット姿という、とことんイケてないオタク女子・月海(つきみ)。“男を必要としない人生”を掲げる、ぼろアパート・天水館(あまみずかん)の住人たち“尼〜ず”とともに、ダメダメながらもそれなりに楽しい日々を送っていたが、女装美男子と童貞エリートのイケメン兄弟との出会いを通して、仲間とともに一歩前へ踏み出していく姿を描いた異色のシンデレラ・ストーリーだ。
「原作を読んだんですけど、ちょっと変わった女の子たちが暴れまわっているのが、すごく楽しかったです(笑)。こんなに濃いキャラの女の子たちがひしめき合っている作品もそんなにないので、実際に演じるのがすごく楽しみでした。月海は、普段は自分がダメな人間だと思っているナイーブな部分があるんですけど、好きなことに集中し始めると誰も止められなくなるくらい熱中してしまう。その切り替えの部分を特に大事にして、月海を演じました。そのナイーブさが、内向するものではなく外に放出されていく感じが出せればいいな、と」

 月海の見た目についても、かなりこだわったという。

「当初、普段の髪型のままでいこうかという案があったんですけど、私が「(原作と同じ)三つ編みがいいです!」と言い張って、三つ編みにしていただきました(笑)。しかも、最初は細めのきれいな三つ編みだったので「もっと太くてくしゃくしゃな感じがいいです!」とお願いして、このようになりました(笑)。あと、実はそばかすも川村監督に言われる前に自分でつけてみたんです。監督に“(そばかす)つけたんですよ〜”と見せたら“あっ…、それくらいなら”と、OKを頂きました」

 劇中では、オシャレ女子に変身するシーンもあるのだが…。

「月海らしさにかなりこだわったので “オシャレ月海”より“スウェット月海”のほうが好きです(笑)」

オタクな“尼〜ず”に共感!? 「実は私もスウェット派です」

 ハードなスケジュールで行われた撮影も、楽しかったと振り返る。

「1日の撮影時間が長かったのでスタッフさんたちがすごく大変そうだったんですけど、私に関しては、雨に打たれるシーンで撮影の間ずっと濡れっぱなしだったことくらいで、それも全然へっちゃらでした。少し大変だったのは“石化”(笑)。カットがかかった時の状態で、何十枚か全方位の写真を撮るので、ずっとそのまま待っていなくちゃいけなくて。動かないように耐えました(笑)」

 そんななか、頼もしい仲間となってくれたのが天水館に住む個性豊かなオタク女子“尼〜ず”を演じた共演者たち。アフロヘアの鉄道オタク・ばんばさんに池脇千鶴、スレンダーな三国志オタク・まややに太田莉菜、天水館のオーナーの娘で和物オタクの千絵子役にお笑いコンビ・アジアンの馬場園梓。どこからどう見てもオタク道を極めたキャラを、豪華な個性派キャストが演じているのも話題となっている。

「“尼〜ず”とのシーンは本当に楽しかったです。演じている方も皆さん、すごい方ばかりで。撮影以外でも、篠原さんが手芸部を発足してくださって、みんなでクラゲの人形を作ったりして、それも楽しかったですね。私が作ったクラゲは劇中、月海の部屋のシーンに使われています。けっこう大胆に映っているので、探してもらえたらうれしいです(笑)」

 聖域であるアパート・天水館にこもり、好きな世界に没頭する尼〜ず。実はけっこう共感できるという。

「お家から出る時にあがくところは共感できます(笑)。私は、出かけてしまえばアクティブになれるんですけど、出るまでが…(笑)。どうしようかな、やっぱりやめておこうかなとか考えて、結局、時間に間に合わなかったり(笑)。仕事ではそういうことはないですけどプライベートでは“行くしかない!”と覚悟を決めて、やっと出かける感じなんですよね。東京に住んで4〜5年経つんですけど、それこそ尼〜ずみたいに自分のよく知る範囲以外に出かけなかったりするので、なじみのエリアも無くて。代官山によく行ってる、なんて言えたらかっこいいなと思うんですけど。以前に代官山に行ったらすごくカッコいい人たちがたくさん歩いていて怖かったです(笑)」

 尼〜ずに劣らぬ?インドア派。

「家でダラダラするのが大好きなんです。しかもスウェットで(笑)。帰ったらまずスウェットに着替えます。でも尼〜ずと違うのは、私はオシャレするのも好き、ということですね」

 月海に転機をもたらす女装美男子・蔵之介を演じた菅田将暉の存在にも刺激を受けたと語る。

「菅田さんは、この役のためにかなり減量されて、撮影前にお会いしたときよりもっと細くなってて、すごいと思いました。それに、その日の撮影が終わって、メイクを落とした後は、ちゃんとパックもしていて。女装シーンのために徹底していらっしゃる菅田さんを見て、役作りへの姿勢もさることながら、女性としても見習わなければならないと思いました(笑)」

 月海と蔵之介たちが生み出した、クラゲモチーフのキュートなドレスも、心ときめかせてくれる。

「本当にクラゲをイメージさせるドレスばかりで、待ち時間に見ているのも楽しかったです。“あ、これ○○クラゲだ!”って、勝手に物色して楽しんでいました(笑)。見ていて楽しかったのは、タコクラゲやアカクラゲのドレス。ブルージェリーのドレスもかわいかったし…でもやっぱり劇中で着たミズクラゲのドレスが一番好きかな。そのままミズクラゲをくっつけたような、すごく自由な感じがいいなと思いました。私自身も趣味で服を作ることがあるので、何でもドレスにできるという発想に、刺激を受けました」

 ドレス作りという共通点もさることながら、好きなものに熱中するところは月海と同じ、と照れ笑い。

「集中してしまうと、周囲のことなんてお構いなしになるところが、似てると思います(笑)。私は、面白そうと思ったらすぐ“やる!”と言ってしまうところがあって、お芝居の道に入ったときも、そんな感じでした。夢中になれるものを見つけるには、少しでも好きかもとか、気になると思ったら、思い切って飛び込んでみることが大事かな、と思います」

役幅を広げた2014年。
さらなるチャレンジを狙う2015年!

 本作の公開はまさに年の瀬。年末年始はどう過ごす?

「今年の年末年始も、お仕事か家に引きこもっていると思います。温かい部屋の中でテレビのニュースを見ながら“人がたくさんいるな〜”と言いながら過ごすのも幸せ(笑)」

 今年は不良少女を演じた『ホットロード』などでさらに役幅を広げた。

「自分としては2015年、さらにたくさん仕事をしていきたいと思っています。これまでにやったことのないジャンルにも挑戦してみたいです。アクションとか。普段は、体を動かすのは嫌いなんですけど(笑)、映像でアクションを見るのは好きなので、やってみたいです。武器を持つ系の役とかいいですね…難しそうですけど(笑)」

 国民的女優となってからも、着実に成長を続けている。観客を爆笑させ、胸キュンさせ、共感させる本作は、改めて彼女の魅力に気付かされる一本だ。

「今回の作品では、自分にダメなところがあってもすごいことができるんだ、というメッセージを感じました。ほめ言葉を信じられなかった月海が、一つの目標をやり遂げたあと、どう変わるのか。自分たちもすごいことができるんだと気づいた月海の姿が、私自身とても心地よく感じました。本当に気持ち良く見終わることができる作品なので、ぜひ年末年始に映画館で見てもらえたらうれしいです。私も月海たちみたいに、役者オタクですと言えるよう、これからもがんばりたいです(笑)」

 気恥ずかしそうに笑いながらも、その目はまっすぐ前を見ている。
(本紙・秋吉布由子)

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『海月姫』
監督:川村泰祐 出演:能年玲奈、菅田将暉、長谷川博己他/2時間6分
アスミック・エース配給/12月27日より全国公開 http://www.kuragehi.me/http://www.kuragehi.me/
©2014「海月姫」製作委員会  ©東村アキコ/講談社