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三方よしの時代から「四方よし」へ。そのビジネスはアフリカのバナナペーパーにあった。【寺尾聖一郎の「SDGsなライフシフト」】

2021.07.06 Vol.Web Original

 

こんにちは、前回のコラムではプラスチックについて書かせていただきました。今回はプラスチックと対照的な紙についてSDGsな視点でレポート致します。

 

■令和商人は「四方よし」

三方よしとは「自分良し」、「相手良し」、「世間良し」の三方を満足させる言葉で江戸時代中期の近江商人の思想・哲学として有名な言葉ですね。持続可能な社会を目指すためには、この三方に加えて「地球良し」が重要な商いのキーワードと言えるでしょう。それを実現している素敵なビジネスを紹介させていただきます。

 

90年の老舗企業が取り組む本気のSDGsビジネス

今回取材した企業は山櫻さん。1931年の創業当初より名刺・はがき・封筒などオフィス向け紙製品の製造販売をされている90年の老舗企業。1990年に業界で初めて再生紙を使用した名刺を発売するなど、環境ビジネスの最先端を走ってきました。昔からのご縁あって公私ともにお世話になっている市瀬豊和社長に取材をさていただき「紙×SDGs」の最先端ビジネスについてレポートします。

 

■日本の紙生産量は世界第3

日本の紙生産量は、中国・米国についで世界第3位。国民一人当たりの消費量も、年間201kgと世界平均56kgを大きく上回ります。日本では使い終わった紙の回収、再利用に取り組み、古紙回収率は約80%、古紙利用率も65%を超え、まさに世界トップクラスにあります。

 

紙製品ビジネスはSDGs17目標項目の全てに当てはまる。

取材で分かったことは、山櫻社は紙の製造から加工、印刷まで統合的なペーパーカンパニーで、自然の素材を使って製造する紙事業にとって環境との関りは非常に深い関係です。SDGsを一早く企業戦略に掲げ、持続可能な社会へ貢献するための製品作りの姿勢は、まだ知名度の低かったSDGsが始まるずっと前から環境事業に努めていました。

 

ザンビアのバナナとの出会い、そして決意。

市瀬社長が自らアフリカのザンビアを訪ねて見たものは、バナナの収穫ビジネス。電気、ガスもない生活を送っている小さな村は、貧困のため教育を受けることがなく、生きるための肉体労働だけを繰り返す日々を送っていて、そのための密漁や森林伐採もやむなく行っている地域でした。バナナは現在世界約125ヵ国で栽培と言われていますが、収穫の際、大量の茎が廃棄されています。実はその茎から紙を作るバナナペーパーの技術が生まれたことで、バナナと茎が村の収益になる仕組みが生まれたのです。のちにこのビジネスによって、40人以上のオーガニックバナナ農家が潤い、数多くの女性と男性の雇用が発生し、150人以上の子どもの教育環境が整い、500人以上の最貧困層が普通の生活に近い環境を得ています。それにより、貧困で苦しむ人々が行う違法の森林伐採や野生動物の密猟を防ぎ、人と森と絶滅危惧種を守るフェアトレードビジネスがバナナペーパーによって解決しているのです。

*ワンプラネット・ペーパー®協議会HPより。

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