「ファミコン世代」が作る新しい政治【鈴木寛の「2020年への篤行録」第56回】

 今年の首都圏のゴールデンウイーク(GW)は概ね好天に恵まれました。連休前半には千葉市の幕張メッセでGW恒例のニコニコ超会議が開催され、7年目の今年の来場者数は、過去最多の昨年を更新する16万人と盛り上がりました。

“超会議”はニコニコ生放送の文化祭典としてのイメージが強いのですが、伝統的な分野からも野心的な企画が行われるのも見所です。まさに政治がその代表例で、インターネットを使った選挙活動の解禁が決まった2013年からは各政党がブースを出展するようになり、若者との新しい接点を探してきました。その年、まだ国会議員だった私も“隠し芸”の電子ピアノの演奏を披露したものです。

 今年は国政選挙がないためか、各党のブース出展は見送られました。しかし、小泉進次郎さんが夏野剛さん、落合陽一さんとのトークイベントで、「ポリテック」という新語を提唱し、注目を集めています。これは、政治とテクノロジーを掛け合わせた小泉さんの造語ですが、小泉さんは「今までの政治家の必須分野は外交・防衛、税制、社会保障、経済だったが、これに加えてテクノロジーのインパクトを理解しないといけない時代になった」「『テクノロジーで何ができるのか』という観点を政治・行政の中に確実に入れ込んでいきたい」などと語ったそうです(発言は朝日新聞より)。

 この一報を聞いて、私は隔世の感を覚えました。私自身がかつて政治家を志した大きな理由の一つが、当時の政治家たちのテクノロジーの無理解に憤りを覚えたからでした。もう20年以上前のことですが、インターネットの勃興期で世界的なイノベーション競争の時代が差し迫っているのに、永田町も霞が関も理解している人は本当に希少でした。そしてテクノロジーで政治や行政をダイナミックに変革する政策を自分の手で実現しようと思い立ったのです。

 2020年代以降、少子高齢化の脅威ばかりに目を向けられますが、人手不足をロボットやAI(人工知能)などテクノロジーで補うことで、ピンチをチャンスにすることはできるのです。ロボットを使ったほうがむしろスピーディーにできたり、コストを削減できたりすることもあるでしょう。

 小泉さんは1981年生まれ。同じように「ポリテック」の考えを志向する政治家たちの多くも70〜80年代生まれ。小学生時代をファミリーコンピュータ(ファミコン)で遊び、学生時代からインターネットに触れてきた、まさに「デジタルネイティブ」たちです。

“ファミコン世代”の政治家たちが、テクノロジーを融合した政策をどう推進するのか。非常に楽しみになってきました。

(文部科学大臣補佐官、東大・慶応大教授)

東京大学・慶應義塾大学教授
鈴木寛

1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、1986年通商産業省に入省。

山口県庁出向中に吉田松陰の松下村塾を何度も通い、人材育成の重要性に目覚め、「すずかん」の名で親しまれた通産省在任中から大学生などを集めた私塾「すずかんゼミ」を主宰した。省内きってのIT政策通であったが、「IT充実」予算案が旧来型の公共事業予算にすり替えられるなど、官僚の限界を痛感。霞が関から大学教員に転身。慶應義塾大助教授時代は、徹夜で学生たちの相談に乗るなど熱血ぶりを発揮。現在の日本を支えるIT業界の実業家や社会起業家などを多数輩出する。

2012年4月、自身の原点である「人づくり」「社会づくり」にいっそう邁進するべく、一般社団法人社会創発塾を設立。社会起業家の育成に力を入れながら、2014年2月より、東京大学公共政策大学院教授、慶應義塾大学政策メディア研究科兼総合政策学部教授に同時就任、日本初の私立・国立大学のクロスアポイントメント。若い世代とともに、世代横断的な視野でより良い社会づくりを目指している。10月より文部科学省参与、2015年2月文部科学大臣補佐官を務める。また、大阪大学招聘教授(医学部・工学部)、中央大学客員教授、電通大学客員教授、福井大学客員教授、和歌山大学客員教授、日本サッカー協会理事、NPO法人日本教育再興連盟代表理事、独立行政法人日本スポーツ振興センター顧問、JASRAC理事などを務める。

日本でいち早く、アクティブ・ラーニングの導入を推進。