映画監督・瀬々敬久が語る「映画とミステリー」

吉田修一の傑作短編集『犯罪小説集』を映画化『楽園』
『悪人』『怒り』と映像化が続くベストセラー作家・吉田修一の傑作短編集『犯罪小説集』を2部作の超大作『64 ーロクヨンー』を大ヒットさせた名匠・瀬々敬久監督が映画化。自身もミステリーや犯罪小説の大ファンという瀬々が“犯罪の物語を語る”理由とは?
瀬々敬久監督(撮影・蔦野裕)
「ミステリー好きなんですよ。〈このミステリーがすごい!〉とかは毎年買っていて、基本的にベスト10に入った作品は、ほぼ読みます(笑)」とミステリーファンを公言する瀬々敬久監督。

「アーナルデュル・インドリダソンの『湿地』とか『緑衣の女』とか、好きですね。どちらかというと海外作品のほうがよく読むかな。『ミスティック・リバー』も映画化前に読んでいましたし。うーん、なんだか暗いものばかり読んでいる気がしますね(笑)。要は、風景が浮かび上がってくるようなミステリーが好きなんです。『湿地』だったら、読んでいるだけで北欧の陰鬱とした湿地の風景が、そこに暮らす人々の人生を象徴するように浮かび上がる。そういうミステリーは頭の中で映像がありありと浮かび上がってくるので読んでいても楽しいです」

 そんな瀬々監督の最新作が、ベストセラー作家・吉田修一の短編集『犯罪小説集』のうちの2編『青田Y字路』、『万屋善次郎』を原作とした映画『楽園』。

 とある地方都市とその先の集落を舞台に、少女失跡事件の容疑者となった青年、少女の最後の目撃者として傷ついた心を抱えながら成長した少女、集落の人々との些細な齟齬を機に追い込まれる男…3人の運命が絡み合い、たどり着く衝撃の結末とは…。
1 2 3 4>>>