【インタビュー】岩井秀人が語る再演論 

(撮影・蔦野裕)
 演劇界には新作至上主義みたいなものはある?

「うーん。僕の印象だと、それが進んでいるかというと、そうでもないと思います。松尾スズキさんが再演を始めましたよね。それは結構大きい気がします。僕と同じころに小劇場からスタートして、今では大きな劇場で公演を打っている劇団や劇作家・演出家の方々も、3本に1本が新作で2本は再演とか書き直したりというものが多いですよね」

 岩井は今年、通常、稽古の最初に行われる、台本をみんなで読む「本読み」を人前でやってしまおうという「いきなり本読み!」という企画を立ち上げ、すでに6回行った。最近の自身の演劇との距離感は?

「自分の中では“演劇嫌いです”って敵対しているくらいがやりやすいなって感じです(笑)」

 今回は長野と三重で地方公演もあるのだが、これが終わったら演劇公演はしばらくない?

「ちょっとそんな感じはあります。最近は演劇の役割みたいなものが、80~90年代とはもう違ってきているんじゃないかと思うようになりました。演劇の取柄ってスピードだったと思うんです。でもネットがある今は“激遅”で“激重”のメディアですよ。俳優・スタッフとたくさんの人が必要で、場所も必要。お客さんもそこに来なければいけないんだけど、来るという行為自体が労力になる時代になっている。もうその面でネットには絶対に勝てないです。そうなると現代性というものも強みだったんですけど、それもあやしくなってくる。もし現代性を訴えるとするなら、現代を描くより古典をやって現代に貫くといった演出をしたほうが演劇としては強みになるはず。YouTubeなどを見ていたほうが圧倒的に現代のことは肌感覚で得られるし。そういう変化が起きているのに、相変わらず演劇界の人ってそういうものを見ないで『生』ということに異様に執着してる人が多い」

 今回の公演は客席を前後半分に分け、前は通常の客席、後ろはひとつ置きに座る形にするという。

「規制についてはもう100%入れてもいいことになってます。でも、そこまでみんなのリテラシーは下がってないのでそこは慎重にして、こういう形にしました。やってみたら、意外に密な席のほうが予約が入っている。これはちょっと読みとはずれました。みんなゆったり見たいんじゃないかと思ってたんですけど、料金が1000円違うんで、それは大きかったのかな」

 11月22日の18時の回には劇作家の加藤拓也氏、俳優の藤原季節と松本穂香によるアフタートークが行われる。通常は作・演出の岩井も参加するのだが、今回は参加せず、3人による「見た人たちで話そう!」形式のトークになるという。

(TOKYO HEADLINE・本吉英人)
ハイバイ『投げられやすい石』
【日時】11月18日(水)~24日(火)
【会場】東京芸術劇場 シアターイースト(池袋)
【問い合わせ】ハイバイ(TEL:050-5373-8215〔HP〕http://hi-bye.net/
【作・演出】岩井秀人
【出演】井上向日葵、岩男海史、町田悠宇、山脇辰哉
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