為末大「社会の長短を浮き彫りにした、 東京五輪・パラリンピック」【2021年重大ニュース】

 いよいよ年の瀬。振り返ってみれば新型コロナウイルス感染症、東京オリンピック・パラリンピック、岸田新内閣の発足、秋篠宮ご夫妻の長女・眞子さんの結婚、MLB・大谷翔平選手の2021シーズンMVP獲得など、今年もさまざまなニュースがあった。各界の著名人が気になったニュースは? 

為末大(Deportare Partners代表/400mハードル日本記録保持者)撮影・蔦野裕

 社会の良い部分と悪い部分、どちらも表れた大会でしたよね。良かったのは、困難な状況の中、五輪・パラリンピックを最後までやり遂げたこと。“コロナ禍で開催できたのは日本だけ”という声をよく聞きました。一方、悪い点は、意思決定の仕方。“一部の人たちが決定して、それをアナウンスする”というこれまでの形が全く通用しなかった。議論のプロセスはオープンでなければいけないと、多くの人が強烈に学んだ大会だったと思います。個人的には、引退してから初めて客観的に五輪を見ることができました。これまでは選手の姿に自分を重ねてしまうことが多かったのですが、それも削ぎ落とされて、純粋に感動していました。現役選手は僕らの時より数段コミュニケーションや心の状態を保つのが難しい状況で、本当によく頑張ったと思います。

為末大…1978年広島県生まれ。スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2021年12月現在)。現在は執筆活動、会社経営を行う。Deportare Partners代表。新豊洲Brilliaランニングスタジアム館長。Youtube為末大学(Tamesue Academy)を運営。主な著作に『Winning Alone』『走る哲学』『諦める力』など。