5月30日に初防衛戦のWBO女子Sフライ級王者・吉田実代「“女子ボクシングも面白いな”と思われるような試合をする。生で見てほしい」

現WBC世界ライトフライ級王者の拳四朗(右)とスパーリング。拳四朗の右ストレートがヒット(撮影・蔦野裕)

二十歳からボランティア活動。勝ったらやりたい活動が2つある

 メディア側の問題でもあるんですが、どうしてもその人のことを一言で表す言葉が必要な時もあります。
「今回の試合が決まった時も“ママさん対決”とかってなっていました。“吉田って強いよね、シングルマザーのわりに”みたいなのがどっかについて回っている。でもそれは自分の責任でもあって、本当に強かったら“吉田って強いよね。でもシングルマザーらしいよ”ってなったと思うんです。その話題が先行したのは自分の実力不足だと思っていて、それは自分が一番分かっているので、悔しいところですよね。だからそこは変えたいというのはあります」

 TOYPの授賞式の際に「二十歳からボランティア活動をしています」と。そのきっかけは?
「ちょっと横道にそれていた時期がありまして(笑)。中学校くらいから、自分でフリースクールを作りたいと思っていました。今では鹿児島でもフリースクールはあるんですが。あったら私、行くのに、って思っていました。勉強も本当は英語とかやりたかったし。私が鹿児島にいた時は学校に行かないとか行けないってなると“ぐれた”とか“やんちゃになった”と言われちゃう時代でした。そういうのにずっと違和感があったし、環境が悪くなって、一気に落ちていく子をたくさん見ていて、もったいないなと思っていました。環境で人って変わるから。自分はそこで周りにも恵まれたりして、自分でなんとか今のところに来れたんですけど」

 自分が受けた恩とか愛情を返したいという思いから?
「恩返しをしたい。でも、私が恩を受けた人たちはすべてを持っている、じゃないけど、その人たちはその恩を私に返してほしいと思っているわけではないので、こうやって私がそういったものを引き継いでいければ。そうすることが多分、その人たちも喜んでくれる。私を応援してくれる人たちは私が人間的に成長することがうれしいと思うんです。だから私が人にいい影響を与えたり、自分が人格的に成長したり、選手としても強くなっていくのが恩返しだと思っています。以前は恩を受けた人にどうにか恩を返そうという気持ちでやっていたんですが、今はそういうふうに考え方が変わりました」

 それを二十歳の時に気づいた?
「友達と『いいことしようぜプロジェクト』とかいってやっていました(笑)。鹿児島の繁華街でゴミ拾いを始めたり、格闘技団体の大会で募金活動をやって、そのまま施設に持って行ったりとか。二十歳からずっとやっているんですが、新聞社の人たちが取材してくれたりして、私が以前からボランティア活動をやっていることが残っているので、今は世界チャンピオンという肩書もあって“こういうことをやりたい”と言った時に大人が話を聞いてくれるようになりました」

 児童養護施設でのボランティア活動、子供食堂のお手伝い、福島にも足を運んだ。
「今は人をサポートする形で自分の主催ではやっていないんですが、今年、勝ったら2つくらいやりたいことがあるんです。自分主催で社会福祉をやりたいのと、新宿区の歌舞伎町とか新大久保あたりの環境の整備とかをやりたいなと思っていて。すごく心配なんです。トー横キッズみたいな子たち。この子たち、大丈夫なのかなって。あれは考えないと。実際にPTAでも青少年育成課といったものもあるんです。本当はそこに入りたかったんですけど、試合もあるし自分の子供の面倒も見ないといけないんで。でもそういう気持ちはあります」