東京・浅草 業界初の女性人力車店長 関森ありささん 一人で抱え込むリーダーから、仲間を信じて支えるリーダーへ

「天下車屋」の店長・関森ありささん

 大学時代に目指していたアナウンサーへの道は叶わなかったが、その悔しさを原動力に、人力車俥夫と江東区のコミュニティラジオ局「レインボータウンFM」のラジオDJという2つの仕事に全力で打ち込み、20代を駆け抜けてきた関森ありささん。現在は観光案内人力車「天下車屋」の店長として活躍しており、浅草の人力車業界では初となる女性店長という重要な役割も担っている。一見すると順風満帆なキャリアに見えるが、その裏には店長就任への葛藤や後輩育成への悩みがあったという。これまでの歩みと現在の思いを聞いた。


――現在のお仕事について教えてください。

関森さん:人力車俥夫として9年目、ラジオDJとして8年目になります。大学時代はアナウンサーを目指して就職活動をしていたのですが、残念ながら夢を叶えることはできませんでした。それでも「話す仕事を続けたい」という思いがあり、人力車とラジオDJの二刀流を続けてきました。おかげさまでラジオ番組を任せて頂いたり、夢であったテレビ出演も経験することができましたし、人力車では業界初の女性店長という立場を任せていただいています。

――店長就任の話を聞いた時はどんな気持ちでしたか。

関森さん:正直、とても驚きました。社長から店長のお話をいただいた時、「会社には男性俥夫もいるのに、なぜ私なんだろう」と思ったんです。浅草の人力車業界では女性店長の前例がなく、ラジオDJの仕事を続けても良いと言われていたものの、本当に両立できるのかという不安の方が大きかったですね。店長になると他社も参加する連絡会への出席やスタッフ管理など責任も増えます。何かあれば最終的に店長の責任になりますから、「私には無理かもしれない」とも考えました。

レインボータウンFM「水曜スペシャル」などラジオ番組DJとしても活躍中

――それでも引き受けようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

関森さん:同世代の女性店主が営むお店に行ったことが大きかったです。仕事終わりの遅い時間でも、笑顔でお客様を迎えながら働く姿を見て、とても刺激を受けました。「私も浅草の街のためにもっと頑張りたい」そう思ったんです。また、社長から「男性社会でも、頑張れば女性でも出世できる会社を目指そう」と言われたことも大きかったですね。女性にもチャンスがある会社を作りたい。その思いに共感して店長を引き受ける決意をしました。

――実際に店長になってみていかがでしたか。

関森さん:昨年の店長1年目は本当に苦労しました。特に難しかったのは後輩育成です。女性店長という立場だからこそ、注意や指導の言葉が時には柔らかく受け取られ、意図したように伝わらないと感じることもありました。どうすれば相手にしっかり理解してもらえるのか、試行錯誤の連続でした。人力車は車の引き方だけではなく、観光ガイドやコース知識など覚えることがたくさんあります。研修を終えてデビューまでたどり着いても、雷門前でお客様にお声がけをする難しさに直面し、辞めてしまうスタッフも少なくありませんでした。真剣に向き合ってきた後輩から「辞めます」と言われた時は、本当に落ち込み、心が折れてしまいそうになることもありました。「私の何がいけなかったんだろう」と自分を責めたこともあります。

――そんな時、どのように乗り越えたのでしょうか。

関森さん:社長から「一人で抱え込みすぎだよ。会社はチームワークなんだから」と言われたんです。その言葉で考え方が変わりました。それまでは店長だから自分一人で何とかしなければと思っていました。でも、周囲に頼ることも大切だと気づいてからは、すごく気持ちが楽になりました。最近も研修中に心が折れてしまいそうになった後輩がいましたが、その時は私だけでなくスタッフみんなで話を聞きました。結果的にその後輩は無事にデビューできたんです。あの時は本当にうれしかったですね。

 

――女性店長になってから感じる変化はありますか。

関森さん:最近は女性の応募者から「女性店長がいるから入りたいと思いました」と言われることがあります。その言葉を聞くと、挑戦して良かったなと思いますね。今は後輩の女性俥夫も育成していますし、会社全体の雰囲気づくりや、一人ひとりがどうしたら輝けるのかを考える毎日です。

――最後に、これからの目標を教えてください。

関森さん:私は29歳になり、周りでは結婚する友人も増えてきました。でも今は、女性店長としてもっと会社に貢献したいですし、後輩たちと一緒に成長していきたいと思っています。人力車で学んだコミュニケーション力はラジオDJの仕事にも生きています。そして、後輩たちにもこの会社での経験を通して人として成長してほしいと思っています。将来、「天下車屋で働いて良かった」と思ってもらえる人を一人でも増やしたいですね。そして、地域の皆さんや浅草のお店の方々と力を合わせながら、これからも浅草を盛り上げていきたいと思います。

 

一人で抱え込むリーダーから、仲間を信じて支えるリーダーへ。

 業界初の女性店長という肩書き以上に印象的だったのは、「後輩を輝かせたい」と語る関森さんの言葉だった。人力車とラジオ、二つの現場で培った経験を糧に、関森さんの挑戦はこれからも続いていく。

■レインボータウンFM:https://885fm.jp/
■観光人力車 天下車屋:http://tengasyaya.com/