SearchSearch

グカ・ハン『砂漠が街に入りこんだ日』の魅力を語り尽くす

2020.10.15 Vol.734

9月26日、原正人×斎藤真理子、韓国からフランスへ 越境して見出した「私(je)」の物語@本屋B&B

Withコロナ時代を生き抜く生物学の書『これからの時代を生き抜くための生物学入門』

2020.09.27 Vol.733

 NHK「クローズアップ現代」やフジテレビ系「全力!脱力タイムズ」の有識者「全力解説員」で知られる生態学者の五箇公一。学者らしからぬ黒ずくめの服装とサングラス姿を覚えている人も多いのではないか。

 本書は、五箇が語った生物学や進化の話を口述筆記の形でまとめた初めての著書だという。当初は大人向けに「性」の話を中心に書き起こす予定だったが、制作中に話が広がり、生物学の見地から見た人間という生物の特異性や未来予測までが縦横無尽に語られている。まえがきで本人が〈科学的な妥当性が必ずしも十分ではない解説や表現が混じっているであろうことも正直否定はしません〉と正直に記しているが、その分エンターテインメント性があり生物学に興味を持つには十分。最終章では五箇自身の生態に迫りつつ(?)、研究者としての歩みにも触れられている。

 図らずも時はコロナ禍。先行きの見えない不安やSNSでの誹謗中傷……何かと問題の多い人間だが、今こそ本書から生物の多様性を学ぶべきだろう。

【おすすめ書店イベント】落語家・立川談慶と脳科学者の茂木健一郎が“withコロナ時代”を語り合う

2020.09.14 Vol.733

『安政五年、江戸パンデミック。〜江戸っ子流コロナ撃退法〜』(エムオン・エンタテインメント)発売を記念し、落語家・立川談慶と脳科学者の茂木健一郎のトークイベントが決定した。安政5年、医学が未発達だった江戸を襲い、一説によると30万人の死者を出したと言われるコレラ。同書では落語家である著者が、江戸っ子たちから現代のコロナ禍に対処する思考法を読み解く。江戸のパンデミックに学び、コロナ禍をどう過ごし、これからをどう生きるのかそれぞれのフィールドから語り合う。

「立体怪談」を得意とする講談師の決定版人物評伝『評伝 一龍齋貞水 講談人生六十余年』

2020.07.28 Vol.731

 神田松之丞が大名跡である六代目神田伯山を襲名するなど、にわかに講談が注目を集めている。講談とは、高座に置かれた釈台を張り扇で叩いて調子をつけながら、軍談(修羅場)や政談などを面白おかしく語って聞かせる話芸のことだ。時折寄席に行くだけで講談はおろか落語にも明るくない筆者だが、伯山を始めその師匠である人間国宝の三代目神田松鯉の講談はやはり聞かせる。

 講談の世界では「講釈師、冬は義士、夏はお化けで飯を食い」と言われ、夏の風物詩となる怪談物。初見の際は場内が暗転して驚いたが、さらに釈台のスイッチを操作して照明や音響、大道具などを効果的に用いた「立体怪談」を得意とするのが講談師初の人間国宝で本書の主人公、六代目一龍齋貞水だ。

 本書は読売新聞の記者である著者の長年にわたるインタビューと取材に基づいてまとめられ、本人も決定版と認める人物評伝。貞水の半生はもとよりジャンル解説や演目一覧、先人の講談師との思い出、巻末には講談年表が収録されるなど資料性も高い。講談に興味を持ったすべての人に読んでほしい良書なのである。

世界が分断する今だからこそ読みたい「食」の本『ハイパーハードボイルドグルメリポート』

2020.06.12 Vol.730

「緊急事態宣言」が解除され、おずおずと書店が開き始めた。この間にさまざまな書評で目にして、一番読みたいと思っていたのが本書だ。

『ハイパーハードボイルドグルメリポート』は、テレビ東京で不定期に放送される異色のグルメ番組のプロデューサーである著者が、少年兵、マフィア、カルト宗教、スカベンジャーの「食」に密着した取材の裏側や心の内をまとめた書籍である。3年をかけて執筆したというだけあって、528ページにわたるぶ厚さに圧倒的な質量と熱量の言葉が綴られている。

 最低限の機材と荷物を携えてほぼ一人で行われるという取材中、見たことや考えたであろうことが本書に詰め込まれているのだが、にわかには信じられないエピソードの数々に、頭をガツンと殴られた後のようにしばし呆然としてしまう。一体これが仕事で行ったロケの最中に起こる出来事なのか、と。

 冒頭で「頭の中にはこの本がその終着点として想像されていた」と著者は語る。「料理は最も身近な魔法だ」とも。どんな場所にいるどんな人間でも腹は減って飯は食うのだ。新型コロナウイルスで世界が分断する今こそ、そんな当たり前の事実が胸に迫る。

『まちの本屋』の著者・田口幹人「本屋になれる」オンラインサロン開設

2020.04.18 Vol.729

 今年初開催され、大きな話題を呼んだ「二子玉川 本屋博」。そこで異色のブース「語夢万里(ごむまり)文庫」を出展していたのが、元さわや書店(盛岡市)の書店員で、現在は出版取次(書籍の卸売問屋)の楽天ブックスネットワークに勤務する田口幹人氏である。ブースで促進していたのは、本屋の開業をサポートするオンラインサロン「もういちど、本屋へようこそ 〜知を編み、血を継ぎ、地を耕す〜」。一体、どんなサロンなのか、田口氏に話を聞いた。

作れなくてもいい!?滝沢カレンのレシピ本『カレンの台所』が破壊力抜群【今日のおうち時間】

2020.04.17 Vol.Web Original

 独特すぎる日本語使いで“言葉の魔術師”と評され、バラエティ番組などで活躍するモデルの滝沢カレン。自身のインスタグラムでのハッシュタグ「#カレンの台所」の料理投稿も話題の滝沢が放つ初のレシピ本『カレンの台所』(サンクチュアリ出版)が破壊力抜群だ。通常のレシピ本ではまず見られない文章表現と、分量の明記がないという思い切った構成で、発売から1週間で3万部を突破するヒットを飛ばしているのだという。早速、本書を入手して人気の秘密を探った。

小池百合子都知事の知られざる半生が一冊に『女帝 小池百合子』発売

2020.04.14 Vol.Web Original

 新型コロナウイルス感染症への対応でますます存在感を増す東京都の小池百合子知事。7月に東京都知事選挙を控える小池知事の知られざる半生を追いかけたノンフィクション『女帝 小池百合子』の刊行が文藝春秋より発表された。著者は『原節子の真実』で第15回新潮ドキュメント賞を受賞したノンフィクション作家の石井妙子。

 裕福な“芦屋のお嬢さん”というイメージと食い違う幼少期、“カイロ大学首席卒業”を裏付ける3種類の卒業証書の矛盾、カイロ時代の同居女性が証言する留学生活やその学力と結婚・離婚、愛憎入り混じる父のエキセントリックな人生、華やかなキャスター時代、日本新党からの参議院選出馬、小泉内閣での環境大臣就任、そして東京都知事へ……。権力への階段を歩む女性の半生を、ノンフィクション作家の石井妙子が4年の歳月を費やして取材・執筆した。

 誰も知らなかった小池百合子像が明らかになるという本書。『女帝 小池百合子』は文藝春秋より5月29日発売。

沖縄の「味な」島建築をめぐる『沖縄島建築 建物と暮らしの記録と記憶』

2020.02.17 Vol.727

 筆者が初めて沖縄本島に旅行したのは20年ほど前のことだった。「亀甲墓(かめこうばか)」や「石敢當(いしがんどう)」など、目にするものすべてが珍しく、本土との違いに驚いた記憶がある。

 そんな沖縄の島建築を紹介する本書は、決して有名だったりデザイン性が高いわけではないものの、土地に根ざした10軒の建築物と、そこで生活する人々の話を丹念にすくいあげている。味噌屋や泡盛工場、戦前から続くホテル、ドライブイン、コルビュジエ風の教会……。シリーズ名の「味な建物探訪」にもうなずける、散歩していてひょっこり出てきたらうれしくなるような場所ばかりだ。

 さらにコラムでは「鉄門扉」、「花ブロック」、「直書き看板」などの知っているようで知らなかった意匠を網羅。こんな意匠を探しながら沖縄を歩けば、風景ががらりと変わって見えるだろう。

 副題に「建物と暮らしの記録と記憶」とある通り、いつまで残っているか分からない建物を書き留めておく意味合いもあるようだ。取材中に公設市場がなくなってしまい、「あとがき」を執筆中に首里城が焼失してしまったことにも触れられている。
「二子玉川 本屋博」の出版社ブースで入手した掘り出し本。本書を頼りに実際に建物を探訪したくなる。

田中裕子と蒼井優が“二人一役”50万部超のベストセラー小説『おらおらでひとりいぐも』映画化決定!

2020.02.16 Vol.727

 第158回芥川賞と第54回文藝賞をW受賞し、50万部を突破するベストセラー小説『おらおらでひとりいぐも』の映画化が決定した。当時63歳の新人・若竹千佐子のデビュー作で、夫を亡くしてひとり暮らしをする74歳の桃子さんを主人公に、〈おらだば、おめだ。おめだば、おらだ〉と脳内からジャズセッションのように湧き上がる東北弁を織り交ぜながら、これまでの人生を振り返りたどり着いた「老いの境地」を描く。

 主演は現在の桃子役に田中裕子、若い頃の桃子役に蒼井優が決定。なお、田中の映画主演は15年ぶりで、蒼井との共演は今回が初となる。監督は『南極料理人』、『横道世之助』の沖田修一が務め、脚本も原作に惚れ込んだ沖田自身が執筆した。原作『おらおらでひとりいぐも』は絶賛発売中、映画は2020年公開予定。

本屋のフェス「二子玉川 本屋博」ヘッドライナー 個性派書店を生み出す2人の「本屋の未来」会議

2020.02.11 Vol.727

 二子玉川ライズ ガレリアで1月31日〜2月1日の2日間、本屋の魅力と可能性を発信するフェス「二子玉川 本屋博」が初開催され、31日に週替わりで1冊の本を販売する森岡督行(森岡書店)と歌舞伎町ブックセンターやBUNDAN COFFEE&BEERなどのプロデュースを手がける編集者の草彅洋平(BAKERU)のトークイベント「本を人が選ぶ場所は本屋だけ?」が行われた。

 冒頭で「本屋を経営したい人がいると全力で止めるんですけど」と草彅。“本プラス何か”がテーマのイベントによく登壇する森岡はこれまでに出たアイデアとして「恵比寿・POSTの中島(祐介)さんは『本だけでいいんじゃないですかね』。荻窪・6次元のナカムラクニオさんは本屋プラス神社。本屋の一角に神社を設けて本の神様をまつり、大晦日には火を焚いてその年に買った本をくべる。『夢の本屋ガイド』という本では、HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEの花田(菜々子)さんの本屋プラス発電所」などを述べた。「基本、何か燃やしていく感じなんですかね」という草彅に、森岡は「新刊本の38%くらいは(売れずに)燃やされているという現実がある。燃やすのであれば火力発電すればいいんじゃないか」と出版業界の現状を補足。

Copyrighted Image