【いまライブで聴くべきバンド】西麻布「新世界」編

 今日もまた、都内のライブハウスではたくさんのバンドやアーティストがライブを行っている……けれど、数も種類も多すぎて、誰を見に行ったらいいのか分からない!!! だったらプロに聞きましょう!

 今月うかがったのは眠らない街六本木・西麻布エリア。クラブのイメージが強い港区エリアだが、実はライブハウスもあるのをご存知だろうか。 ライブハウス「新世界」の店長の尾崎さんは、ライブハウスでは珍しい女性店長。ずっとJ-POPが好きだったという彼女は、どんなライブバンドを勧めてくれるのでしょうか。

昭和歌謡とネオPOPSの融合「野佐怜奈」

 ぱっとみ、30年前のアイドルのような風貌の野佐怜奈(のされいな)。ジャンルとしては懐かしさのある歌謡POPSといった歌い味で、昭和歌謡好きはグッとくるものがあると思います。とはいえ、懐かしいだけではなく、しっかりと古き良きジャンルに新しさが融合しています。ここ数年ブーム化している、ネオシティポップ好きが好きな人や、そろそろ似たりよったりなシティポップに飽き飽きしてる人には、ぜひ聴いてみてほしいです。

 イヤホンで聴いている時は、言葉の温かみに耳が傾くのですが、ライブ時は歌唱力に圧倒されます。野佐のライブは、演奏する箱やイベントによって、楽器の種類やアレンジが全然変わるんです。ハープだったりトークボックスだったり、何回聞いても少し違う味わいを見せるのも見どころの一つです。古き良き、と新しさの融合というのは思うより難しいと思っていて、野佐怜奈に関しては、その圧倒的な歌唱力があるからこそ、サウンドがどう変わってもその曲の良さの新しい感動を味わえるんだと思います。

 また企画力がとにかくすごいので、イベントそのものが面白いのも魅力。例えば先月は文化祭をテーマに、高校の文化祭の体育館ステージに見立ててライブを行っていました。誰にでも通じるテーマを軸に、音楽の垣根を飛び越えて楽しめるイベントは誰でも遊びに来やすいと思います。
明るさとアンニュイさのコントラストが美しい「赤松ハルカ」

 赤松ハルカ(あかまつはるか)の作る楽曲を言葉で説明するのはとても難しいのですが、例えるなら「戦争が終わって、時代が明るくなった時にラジオから聞こえてくる」ような…。そんな、明るさとアンニュイさ、どちらも持っているアーティストです。

 彼女が歌う時、いつも余計なものは必要ないな、とそんなふうに感じてしまいます。照明なんていらなくて、道端でおもむろに弾いていても、そのオーラと空気感に飲み込まれてしまうような、そんな存在感や佇まい、呼吸の美しさを感じさせるアーティストです。

 座ってお酒のグラスを傾けながら聴いてほしいアーティストです。キャバレーで、BGMとして歌っているのに、意識のすべてがそちらにとられてしまうような…そんな陰の雰囲気が好きな人はぜひ一度生の歌声を聞きに来てほしいです。ライブによって他アーティストとのセッションもあり、かなり聴き応えがあると思います。

 大森靖子や酸欠少女さユリなど、ノンフィクションな痛みを歌ったアーティストが流行っていますが、彼女たちが20代の痛みを歌えるアーティストだとしたら、赤松ハルカは30代以降の「酸いも甘いも」を歌える人だと思います。
繊細なイントロと裏腹な深い音圧で世界観に飲まれる「UNCLOSE」

 UNCLOSE(アンクローズ)を初めてライブで見た時、久しぶりに「骨太な」ロックを聴いたな、と思わされました。美しいイントロから入る電子音ボイスなのに、曲展開はミクスチャーのような切り替わりを見せるので、急に「闇に飲まれる」という感覚に襲われます。ライブハウスで爆音で聞いても、演奏の上手さのおかげなのか「耳障り」ということがなく、ただのうるさいロックを聞きたくない人にはおすすめです。

 今らしい打ち込みサウンドは使いこなしつつも、人の演奏するバンドサウンド部分もしっかりと成立していて、生音と電子音のバランスがいいんです。そんな音圧が深さとは裏腹な、飾り気のないベースボーカルのREIの佇まいも印象的です。他のメンバーはガスマスクをつけてライブしていて、世界観が独特です。この空気感はやはり生音を聴いてこそ感じるものだと思います。
店長の尾崎さん
六本木の新しい文化と、新宿「ゴールデン街」の古き良き文化の融合したライブハウス

「新世界」は、六本木と西麻布の境目の高級できらびやかな雰囲気のある街にある。隣は有名なクラブ「西麻布エーライフ」。そう聞くとなんだか敷居の高い場所のように感じてしまうが、尾崎さんは次のように語る。

「もともと、ライブハウスの歴史やルーツとして、現在の形に至るまでに自由劇場であったり、音楽実験室として親しまれていたり、サブカルチャーの発信地としての歴史も受け継いだライブハウスなんです。そのために西麻布や六本木のクラブから流れてくるEDMとは真逆の、落ち着いた音楽を好む人も多いと思います。ライブハウスといったら爆音!……という雰囲気が得意じゃない人にはおすすめです。うちでは座席に座ってのアコースティックイベントなどもあり、イベントやステージに立つアーティストによって形式がガラリと変わるのも特徴のひとつなんです。その反面、下北沢のような”音楽好きのコミュニティ”感が薄いんです。サブカルのコミュニティって、服装がずれただけでちょっと仲間に入りづらい雰囲気があるけど、新世界はむしろ自分の美意識が強すぎて、周りと全く同調しないような個性を持つ人同士が、お互いを尊重しあえるような空気があります」

 挙げてもらったアーティストたちも、渋谷や下北沢のアーティストたちはまた違う、しかし六本木の典型的なイメージとも一銭を画す個性的なアーティストたちばかりだ。


「新世界」はイベント公演日以外はカラオケバーとして営業している。そのため、普通のライブハウスよりお酒の種類が多いのも魅力。カラオケバーとしても客単価5000円程度で思いっきり楽しめるということで、西麻布界隈では比較的安く遊べるとのこと。また、東京一トイレがキレイである自信もある!という。

 ライブハウスの薄暗く開けていない印象はなく、親しみやすさの中に西麻布の意地も感じる佇まいだ。まずは一度、ライブイベントとしてだけでなく、ふらりと飲みに立ち寄ってみるのもいいかもしれない。

(取材と文、写真・ミクニシオリ)

音楽実験室 新世界
【住所】東京都港区西麻布1-8-4 三保谷ビルB1
【電話】03-5772-6767
【URL】http://shinsekai9.jp

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