小池百合子のMOTTAINAI 恐るべきイスラム国を生んだ背景とは 

 2010年暮れのジャスミン革命から始まった「アラブの春」はもはや歴史の1ページでしかないようです。内戦が続くシリア、政権が不安定なイラクの混乱に乗じてイスラム国なる凶暴な集団が地域を跋扈しています。あのアルカーイダがその凶暴さにあきれて、絶縁したほどです。


 イスラム国は今年6月、一方的に独立を宣言し、早々にパスポートまで発行しました。当初は5000人程度の勢力だと伝えられていましたが、数か月で6倍以上の3万人にも膨れ上がっています。拘束していた欧米人の首を跳ねる画像を次々にネットに掲載するなど、世界を震撼させています。斬首執行人はイギリス国籍を有する元ラッパーというように、世界各国から若者たちが義勇兵として駆けつけていることも背景にあります。


 欧米に暮らす移民2世、3世は差別に対する怒りや、失業といった現実的な事情を抱えています。フランスは公立学校でのイスラム式スカーフ着用を禁止、罰金を科す法律を成立させ、欧州人権裁判所も支持するに至るなど。つまり、ヨーロッパ社会はイスラムに対しNOを突き付けたことになります。


 リーマンショック以降の経済状況が若者へのしわ寄せを生み、失業を加速させました。月給4万〜8万円とイスラムのプライドが満たされるならと、イスラム国へ若者がなびく背景にはイスラム国組織の広報の上手さも手伝っています。ネットを駆使し、イスラム教徒にこそわかる周波数でメッセージを送り続ける発信力には舌を巻きます。


 イスラム国の財政は、イラク第二の都市モスルを占領した際に銀行から強奪した数億ドルもの現金や、奪取した油田から密輸した原油代金などによる荒稼ぎによるもの。凶暴なイスラム国の軍隊を前に軍服を脱ぎ去り、さっさと逃げたイラク政府軍が残した軍事物資や最新鋭の兵器もバカになりません。


 イスラム国はアメーバーのように勢力を伸ばしています。イスラム国にとっては現在の国境は何の意味もありません。ましてや100年前、英仏が机上の地図上に直線で引かれた国境は彼らには憎むべき対象でしょう。


 イスラムの根本思想にはウンマ(共同体)をベースとし、シャリーアと呼ばれるイスラム法が社会を治め、預言者ムハンマドの後継者を意味するカリフが指導するという原則があります。自らをカリフと名乗るイスラム国の指導者バグダディー師が夢見るのは100年前どころか、イスラムの勃興期である7世紀かもしれません。


 遅まきながらの米軍などによる空爆は人命や人権には無関心なイスラム国には義勇兵を増やす機会に映ることでしょう。残念ながら当面、混乱は続きます。(自民党衆議院議員)