【平成ノブシコブシ徳井健太の菩薩目線】第1回「考えられる」子どもに育ってほしいなぁ

世の習わしに今日も勝手に梵鐘をつき鳴らす——。

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第一回目は、“公立と私立、どちらに進学させた方が子どもにとっていいのか”。世の習わしについて、今日も勝手に梵鐘をつき鳴らす――。

 俺って“サイコ”とか呼ばれていますけど、一応、二児のパパでもあるんですよ。「子育ては毎日が勉強」なんて言われたりするけど、ホントにそう思う。上の子は、来年、中学に進学するんだけど、公立と私立、どちらに行かせるべきか、すごい悩んだ。結論から言うと、公立に決めたんだけど、その判断が正しかったかは分からないよね。

 なんで公立を選んだのか? 俺は、自分の子どもにいろいろなタイプの子どもたちがいることを、自我が目覚める中学時代に知ってほしかったんだよね。例えば、どんくさい子や要領の悪い子がいたとする。そうすると、世の中にはそういう人たちがいて、すべてが自分のペースでいくことはないってことを、何となく理解すると思うの。

 芸人の世界って、短気な人が少なくない。要領の悪い人を見ると、よく芸人さんは「考えられない」って言うんだけど、俺は「考えられる」んだよね。いろんな人がいるんだから、いろいろなケースがあるよねって。俺自身、そもそも要領が良くないから。でも、要領は良くなくても、そういったことは分かるわけじゃん。

 頭の良い人たちだけが集まると、「考えられない」んだろうけど、どんくさい奴が半分もいたら、もうその状況では「考えられる」ことになる。昨今、政治家を筆頭にお偉いさんたちがパワハラまがいの発言をして世間を騒がしているけど、要領の良い人たちとしか接してこなかったから「ちーがーうーだーろー」なんて言い方をしちゃうと思うの。多分、苛烈な競争社会で生き抜いてきたって自負もあるんだろうな。

 俺は、自分の子どもが競争意識を持つのは、もうちょっと後でもいいと思う。私立の中学に入ったら、速攻で競争が待ち構えている。結果、早い段階から勝ち組と負け組の意識が染みついてしまいそうで。公立だったら、勝ち負け、頭が良い悪いだけじゃない感覚をたくさん吸収できるんじゃないかなって。

 でも、子どもの将来を考えたら、やっぱり良い学校、良い環境って大事だと思う。今、自分が暮らしているエリアが、東京でも治安がよろしくない地域だって自覚があるから、なおさら思う。この前、子どもと話していたら、「今度、隣町の小学校と決闘をすることになった」って話をされて、なんで俺は子どもが育つ前にこの街から引っ越さなかったのかって、自分をぶん殴りたくなったよね。そんな街の公立の中学に進学させるとなると、絶対に公立がいいとも断言できない。だからすごい迷った。本人としては、「まだ受験はしたくない」ってことみたいで、子どもの意見も尊重しながら決めていくしかないんだけどね。

 あと、俺たちが子どもの頃とは状況も環境も違うから、そこも単純には考えられない。スマホは当たり前で、コンビニもいたるところにある。俺みたいな北海道の田舎で高校卒業まで暮らしていた人間からすると、東京は魅惑が多すぎるの。特に、ドラッグ。せいぜい田舎の不良の限界点って酒かタバコ。でも、東京はドラッグまでたどり着くからね。それこそタバコ感覚で、「どうだ?」なんてドラッグを渡されたらやっちゃいそうでしょ? 自分の子どもも、今やそういう環境下と無縁じゃないと考えると、エリートだらけじゃない公立のほうがまだ安心だと思った。公立だったら、そんな貴重なものなさそうじゃない。

 勝手なイメージで申し訳ないんだけど、俺の中では私立の方がドラッグ率が高そうなんだよね。お金を持っているエリート崩れのワルって、もうドラッグじゃん。しかも、俺みたいな金持ちでもない三流芸人の息子なんて、真っ先にターゲットにされそうで。野島伸司の脚本でありそうでしょ、そういう展開。“事実は小説よりも奇なり”だから、親が過敏になっちゃいけないって分かっているんだけど、小説みたいなことまで考えちゃうの。でも、子どもたちの成長はその上を行っちゃうから難しい……っていうか、読めない。結局、毎日が行き当たりばったりになりがちだから、子育ては毎日が勉強なんだよなぁって。

 公立だったら、最悪、引っ越せばなんとかなる。場所を変えれば人間関係も変わるから。でも、私立だったらずっとその人間関係が続きかねない。中高一貫ともなれば、なおさらね。子どもにとって居心地が悪かった場合、その路線を変えることができるか否かってことで、中学は公立を選んだんだけど、今どき決闘を行うような地域だからね。マジで引っ越しの可能性についても、頭の片隅に入れておかないとダメだよなぁ。

徳井健太(とくい・けんた)
 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。



※「徳井健太の菩薩目線」は毎月10、20、30日に更新予定です!