不可思「格闘技でワクワクできることを探していきたい」


 退学を勧告した先生は現在のご活躍をご存じなのでしょうか。

「分からない(笑)。きっかけをくれた先生なんで、テレビとかで見ててくれたらうれしいですけどね」

 タイ人のお母さん、日本のお寺のご住職のお父さんの間でどんなふうに育ったのでしょう。

「両親の出会いは、“親父やるなあ”と思うんですけど、タイのカフェで、親父がカネ払わずに帰ろうとするのを“ちょっと待って”と止めたのが、そこでバイトしてた母で。親父が惚れて通いつめて、帰国後は手紙でやり取り。その3回目に日本に呼ばれて母が来てみたら結婚式が用意されてたらしいんです(笑)。いまだに“騙された。親戚が集っていてかわいそうだから結婚してあげた”と言っていますよ(笑)。そういう親父だったり仏教とかが自分自身のものの考え方に影響したりということはないですけど、親父自身、もともと代々お寺だったわけでもなくて割と好きに生きてる感じで、放任主義。高校やめるときも何も言わなかったですし。好き放題やらせてくれてるおかげで、今の自分があります。寺を継いでほしいとは人に言ったりもしているようですが、僕に対しては『“やらなくてはいけないから”では門弟さんに失礼だから、やりたくなったらやればいい』と言ってくれています。定年がある職業でもないので、親父が元気なうちはまだ考えなくていいかなと。二人必要なほど大きい寺でもないので」



 得度をしているので不可思選手は、お坊さんではあるのですよね?

「お経をあげに回ったりは以前からしています。僕の後で親父が行くと“今日は若様じゃないの?”と言われちゃうらしいですよ(笑)」

 不可思選手も結婚してお子さんも。ご両親のようなドラマティックなエピソードが?

「全然。中1からずっと、その間にいろいろありながらも(微笑)付き合っていて、なかなかキッカケがなくて。上京する時に一緒に来るというので“じゃあ籍入れちゃう?”みたいな。真面目に格闘技をやる意味でもプラスですし家庭があることで、遊びを“ほどほど”にセーブできる(笑)。洗濯とか皿洗いとか家事もかなり手伝っているほうですし、試合の後は家族でゆっくり出かけたり、家庭ではポイントを稼ぐ堅実な戦い方をしてますね。遊んでどんどん減っちゃうので(笑)。ただ、格闘技は好きで勝手にやってることなんで、もちろん、やっているからには結果は出さなきゃいけないけど、それは“家族のため”ではないんです。格闘技だけでは家族を食わせられないという時期は、好きなことやっててそれじゃ向こうの親に合わせる顔がない。なので正社員として勤めていました。それも1年くらいで、格闘技一本でやっていけるようになった。でも、格闘技は自分のためにやってることであって、たまたまそれで家族が生活できてラッキーという感じです。だから、たまにそういう人もいるけど僕は家族をリングに上がらせたり、舞台上で子どもを抱いたりってことをしたいとは全く思わない。見に来てほしいという気持ちはありますけど。格闘家は安定とは程遠いですから先のことを考えすぎても仕方ないと思っていますが、嫁は僕のことも考えて家計を見てくれていて。僕は“何とかなる、死ななければいい”と楽観的な感じです」



 会見では蝶ネクタイ姿も。ルックスやファッションも注目されています。ファッションのこだわりは?

「全身無地でシンプルにしたり派手な柄モノを取り入れてみたり、両方好きなので気分で変えています。好きな服があるとそればっかり着てしまいますね。飽きっぽい性格ですけどハマると、なんでも長続きするんです。コーデは家でよく“このほうが受けがいい”とか的確なアドバイスをもらって、蝶ネクタイも“いいんじゃない?”って。やっぱり海外の選手はすごくオシャレですよね。みんながカチッとしてても面白くないからスーツでも“オシャレだな”と思ってもらえる雰囲気を出したいです。ファッションとか別の切り口で自分に興味を持った人が格闘技を見てくれるようになったらいいですよね」

 オフの過ごし方は?

「趣味らしいは趣味は映画鑑賞くらいですね、映画館にはひとりでもよく行きますし、子供が生まれる前は嫁と、週イチくらいのペースで通ったり。ここ数年のベスト1は『インターステラー』!ストーリーの構成力がすごいです。音楽はHip Hopが好きで、クラブに行って踊ったりするのも好きなので、そこではEDMでもなんでも、楽しければいいという感じ。酒も飲みますし。そういう軽いノリも自分だし、パパの顔も自分。その両面が、“自分”なんです。家族がいるからって落ち着きたくはないし。男子たるもの“モテたい”ですしね。好きな女性のタイプはエキゾチックなキレイ系。背が高くて胸も大きい子がいい。一番好きなサイズは、Gカップですね。痩せてて巨乳って最高じゃないですか。あとお尻もパッと見で“スクワットしてるな”という、鍛えたハリのある大きなお尻が好き。そんな女性に囲まれた“スター”に憧れますね。もちろん何もしないですけど(笑)、これもモチベーションのひとつです。でも、同性から認めてもらえるのもうれしいですよね。例えば武尊を見てて、ここ一番というところでハズさないアイツはカッコいいというか、スゲーな、と思います。向こうは…どうかな、僕をカッコいいとは思ってないでしょうね(笑)」
火の鳥 不可思(ふかし)
福岡県遠賀郡出身。1991年6月17日生まれ。クロスポイント吉祥寺所属。2008年8月プロデビュー。KING OF KNOCK OUT初代スーパーライト級王者、WPMF日本スーパーライト級王者、第4代RISEライト級王者、初代Bigbangライト級王者、元REBELS-MUAYTHAIスーパーライト級王者。戦績は51戦37勝(14KO)12敗2分。Twitterアカウント:@FUKASHI19

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