玖村修平「第二の自分として進化していく姿を見せていきたい」

格闘家イケメンファイル Vol.110


 シューティングスターというキャッチコピーの字面のキラキラ感のみならず、夜空に瞬く星々のある種の儚さをも体現するかのように、美しすぎる容姿を惜しげもなく差し出して激しくアツい戦いを繰り広げるファイター・玖村修平。その姿勢に誰もが魅了されるエンターテイナーは、長期の負傷欠場を経て、第二章のスタートを切る。幼少期からともに格闘技の道を歩んできた弟・将史のKrush スーパー・バンタム級タイトルマッチと同日の9月26日、後楽園ホールで開催される『Krush.117』において、第5代フェザー級王座決定トーナメントへ参戦が決定した。
玖村修平(撮影・堀田真央人)
 同階級で戦ってきて“兄弟対決”に期待と注目を集めてきた玖村兄弟ですが、今回、階級をひとつ上げる決意をしたのはどういったきっかけが?

「昨年を振り返ると、弟がベルトを持つスーパー・バンタム級(55kg)で結果を残さないといけないと強く思っていました。そしてまず3月の『K’FESTA.2』での金子晃大選手との試合で評価してもらうことができて、その後6月に兄弟でスーパー・バンタム級世界最強決定トーナメントに出場。兄弟対決とまではいかなかったけれど一緒に出るという目標は果たせました。それから、次に何を目指していくかを見定めないまま臨んだ次の試合で負けてしまったんですよね。それに、もともと普段から体重を抑えているほうなので自分自身で減量がキツいと思ったことはなかったのですが、弟を見ていると、ぼくのほうは減量がキツそうに見えるらしくて周りからは “上げたほうがいいのでは” と言われてもいました。そうは言っても体重は落とせると思いますし、これまで負けた選手にリベンジしたい気持ちはずっと持っている、それにまだタイトルだって獲れていない。55kgでやり残したことは多くあるので、“うーん……” と。ただ、これからリベンジしていくために55kgでまた1からスタートするよりも階級をひとつ上げて、あたらしいスタートを切りたいと思ったんです。再起戦となりますが、9月にフェザー級(57.5kg)としてベルトを賭けたトーナメントの開幕戦から新たにスタートを切って、そこで優勝できたら55kg と57.5kg に兄弟でチャンピオンとして並ぶことができますから、まずそこが目標です。そして、弟はK-1のベルトをすぐに獲ると思いますので、そこで空いた55kgのベルトは、恐らく僕が敗戦してきた選手たちの元に渡りますよね。55kgのトップ選手たちもこれから階級上げてくると思いますし、そこでチャンピオン同士という形でリベンジできたらいいなと考えています。東京に来てすぐの2018年6月30日、たまたま弟と同じ日に試合をして、ふたりとも勝利を収め、そのちょうど1年後の2019年6月30日に両国でトーナメントに兄弟で出場するという目標も果たしました。3年目は、再起戦とともにフェザー級チャンピオンを目指す、僕の『第二章』が始まります」

 9月が再起戦。昨年10月の試合を最後に網膜剥離で12月から欠場中ということで、長期にわたり試合間隔が空きました。復帰が延びたのはコロナの影響もあるのかもしれませんが、この間はどのように過ごしていたのでしょうか?

「手術をして、退院後の2019年内は完全に安静にしていて、何もせずとりあえず回復に努めました。年が明けると段階的に運動の許可が出るようになり、まず1月半ばからは徐々に軽めのランニングやシャドー程度のトレーニングを始めて、2月に入ると対人練習以外はOKになりました。そして3月からはスパーリングも大丈夫だということになったので、そこから本格的に。今までのように継続的に試合をすることがないという状況の変化に合わせて基礎的な底上げを重点的にやりました。というのも東京に出てきてから、なかなかフィジカル強化に臨めるタイミングがなかったんですよね、コンスタントに試合ができるときに筋肉痛などで練習に支障が出るかもしれないと思うと、取り入れにくくて。階級を上げることになったこともきっかけのひとつなのですが、退院後に始めは怪我の影響で激しい運動もできなかったので、連動を意識したフィジカルトレーニングをしていて。単純に身体を大きくするということだけではなくて、身体の使い方、力の入れ方が全く変わった実感がありました。トレーナーから"パワー上がってるよ"と言われてもなかなか分からないですが、ジムのチャンピオンクラスの方たちのミット打ちと見比べていてもパワーが上がっていると思えるので、次は一発で倒せるような試合ができるかもしれない」

“一発で倒せるような試合をする” というのはもともと課題として持っていた?

「はい。フィジカルと並行して、相手からもらわずに当てる距離感やポジションなどのテクニックの強化をしてきました。うまい選手の動画を見たり、トレーナーが研究して伝えてくれる意見ともあわせて、もらわずに、当てて、一発で倒す、という練習をずっとやってきました。ぶっちゃけ(負傷欠場から試合間隔が空いてしまって)怖さのような感覚もあるんですけど、それ以上に自分の変わった姿を早く見てみたくて。練習動画を見返しても変化は実感しますが、実際にこの状態の自分が今リングに上がるとどれくらいのものなのかを試すのが楽しみです。試合しないと分からないですからね」

 攻撃をもらってはいけないと身をもって実感した?

「身体が元気なのに目が急に見えなくなってしまったことや、そのせいで手術も経験したことで、“何も考えずに打ち合って怪我するくらいなら、もらわないテクニックを身につけるべきだ” と痛感しました。2週間の入院で2度の手術をしたのですが、病院の広い部屋の片隅で1日中、見知らぬ天井と向きあっているだけで、トイレとベッドの間しか行き来することもできなくて。動けない間に映像など見ようともしていたけど、見ても自分は動くことができないので嫌になってしまって動画を再生しようとした携帯を投げてしまったり、すごくナーバスな時もありました。そして周りの人たちにこんなにも心配をかけているのかと。これまで、どうしても試合になるとアツくなって盛り上げる方向に走っていて、“もらってもいいや” くらいに思っていたのに、そんな戦い方をしていてはいけないと思いました。入院中、弟は1回くらいしか来てませんけど(笑)、母と祖父母が来てくれていましたし、退院後はスポンサーさんの忘年会で社長が僕のために涙を流してくれた。よく根本的な考え方を変えないと行動が伴わないと言いますけど、僕は痛い目を見たことで変わるチャンスがきたんですよね。だから『第二章』というのは階級の違いだけではなくて、僕自身が、ただ打ち合って楽しかった時期を経て、第二の自分として進化していく姿を見せていきたいです」
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