【徳井健太の菩薩目線】第35回 知人、友人から借りるお金は“借金”ではなく、単なる“たかり”

“サイコ”の異名を持つ平成ノブシコブシ・徳井健太が、世の中のあらゆる事象を生温かい目で見通す連載企画「徳井健太の菩薩目線」。第35回目は、借金について独自の梵鐘を鳴らす――。
 借金っていうのは、友人から借りたお金と消費者金融から借りたお借金では全く別物だと思うんだよね。前者は、基本的に利子すらつかない。友人や知人、家族からお金を借りる場合は、借金ではなく“たかり”という意識を持った方がいい。それくらい傲慢なことをしているってことだよ。

 俺は、消費者金融からしかお金を借りたことがない。利子だけで、月30万円ほど返済しなければいけないという悪夢のような時期もあった。もうどこからも借りられないという状況だったから、どこかにウシジマくんがいることを願ったほどだった。借金苦という状況にもかかわらず、その一年後には結婚。しばらくして、『ピカルの定理』のレギュラーが決まって、その何年後かに完済することができた。今思うと、よくそんな状況で結婚できたと思う。当時、どう返済していたのか、今となっては思い出せない。俺も、嫁も、狂っていたんだと思う。

 俺が友人からお金を借りることを良しとしないのは、俺自身が人にお金を貸すことが好きではないからだ。自分が嫌なことって、人にするべきじゃないからね。自分と近しい関係の人からお金を借りる、もしくはお金を貸す行為って、なんだか近親相姦的な不道徳性を感じてしまうのは気のせいだろうか。なんというか、とても近しい人の性行為を見ているような気持ちになるんだ。

 そもそも借金なんてものは、人に知られるべきものじゃない。友人に頼み込むというのは、恥部をさらけ出すようなものだよね。せめて第三者に黙っているならいい。ところが、近しい人から金を借りている奴ほど、周囲に妙なテンションで、「俺、〇〇さんから50万の借金してんだよ」なんて笑っていたりする。やっていることは、公然わいせつ罪と変わらないと思うんだけどね。

 例えば――。飲み会で知り合った異性と、その後ホテルに行きました。かくがくしかじかで、こういうプレイをして、相手の反応はこうでした……なんて話を、同じ飲み会に同席していた人間に、事後報告している奴がいたとする。その空間の“程度の低さ”がにじみ出てはいないだろうか? 俺からすれば、知人からお金を借りるという行為は、こういった感覚に近い。

親しい人からの借金は、校内の書き初め大賞くらい価値がない



 消費者金融からお金を借りるということは、言うなれば風俗に行くようなもの。プロに対してきちんと対価を払って、自分の欲を満たせというわけだ。プロから手ほどきを受けてもいないのに、何を根拠に借金自慢をしているの? って話。利子もつかなければリスクもない。でも、金は借りている。本来であれば、日陰しか歩いてはいけない人間だよ。

 唯一のリスクがあるとすれば、借りている人との交友が途絶えることくらいだろう。でも、また違う知人に寄生して金をたかればいい。まるで次々にサークル内の異性と肉体関係を持ち、部を破壊してしまうサークルクラッシャーのようだ。悲しいかな、その程度の人間にしかなれないってこと。

 借金をしている時点で、すでに社会不適合者であって、クズなんだよね。クズであっても、日向を歩くか、日陰を歩くかは選べる。何のリスクも背負わずに、親しい人から金を借り続ける人間と、消費者金融から限界まで金を借りる人間、どちらのほうがヤバいかは言うまでもないだろう。中途半端に人間になろうとするな。借金しておいて、まともな人間のままでいれると思うなよってこと。

 親しい人からの借金は、子どものころの校内の書き初め大賞くらいの価値しかないんだ。社会人になったときに、履歴書に「〇〇小学校 書き初め大賞・銀賞」って書きますか? 500万円の借金があったとして、その内訳が両親から200万、友人Aから100万、知り合いの社長100万、後輩50万、消費者金融50万だったとする。

 俺から言わせれば、履歴書に「〇〇小学校 書き初め大賞・銀賞」、「△△中学校 体育祭 リレー1位」、「〇〇町 カラオケ大会ファイナリスト」、「××大学 みんなが選ぶ面白い奴 12位」と書き連ねるようなもの。消費者金融50万、これだけがヒリヒリするという意味で、「R-1ぐらんぷり 2回戦進出」くらいの価値がある。
 
 友人から100万円を借りている人間よりも、闇金から100万円を借りている人間の方が覚悟を感じるから不思議だ。背水の陣でいうと、後者は切り立った崖に加え、激流が迫るようなもの。対して、前者はインスタ映えしそうなカラフルなCGの川が流れているようなもんだ。借金をしないにこしたことはない。でも、せっかく借金をするなら、きちんと借金をしたほうがいい。じゃないと、何も残らないんだよね。

※【徳井健太の菩薩目線】は、毎月10日、20日、30日更新です
◆プロフィル……とくい・けんた 1980年北海道生まれ。2000年、東京NSC5期生同期・吉村崇と平成ノブシコブシを結成。感情の起伏が少なく、理解不能な言動が多いことから“サイコ”の異名を持つが、既婚者で2児の父でもある。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。