気鋭のジャーナリストとノンフィクション作家がトークイベント 宮下洋一、河合香織が語る「命」は誰のものなのか

9月1日、『安楽死を遂げた日本人』刊行記念「誰が『命』を選ぶのか――終末期医療・生殖医療の現場から考える」
写真左よりノンフィクション作家の河合香織、著者でジャーナリストの宮下洋一
 前著『安楽死を遂げるまで』で世界6カ国にわたる安楽死と自殺ほう助の現場を取材した宮下洋一。その続編となる『安楽死を遂げた日本人』の刊行記念イベントが、下北沢の本屋B&Bで行われた。ノンフィクション作家の河合香織を招き、“生”と“死”という対極のテーマを扱う2人が、「命」の当事者とは誰なのかを語り合った。

 冒頭で司会者が河合の著書『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』が第18回新潮ドキュメント賞を受賞したことに触れ、この日は同賞の候補作でもあった宮下との恩讐を超えた対談であることを強調すると、会場は祝福の拍手に包まれた。

 安楽死に対して中立的な立場の宮下は「欧米は個人主義で、死に対しても自分の意志が通りやすい。日本では死が個人のものではなく、むしろ家族のものであるんじゃないか」と死生観の違いを語る。河合は本書を「前作よりさらに個別の事情を取り上げて生きるとは? 死ぬとは?という問題を描いている」と絶賛し「昔から“畳の上で死にたい”といいますが、その言葉には家族や親しい人に見守られて『ありがとう』、『大好きだよ』と言って死んでいくことも含まれている。主人公の女性はある意味そういう思いをスイスで実現していて、死は自分だけでなく家族のものであるというのをすごく感じました」と感想を述べた。
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