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【STAGE】KAAT×PARCOプロデュース『オーランドー』

2017.09.22 Vol.698

 本作は、20世紀モダニズム文学の重鎮で最も有名な女流作家のひとりであるヴァージニア・ウルフの代表作を、アメリカの劇作家サラ・ルールが翻案したもの。サリー・ポッター監督の映画「オルランド」(1992年)でも知られる人物オーランドーを、現代的に生き生きと描き、「愛とは」「人生とは」「運命とは」といった永遠のテーマを問いかける。

 オーランドーは16世紀のイングランドに生を受けた少年貴族。エリザベス女王をはじめ、あらゆる女性を虜にする美貌の持ち主だったのだが、初めて恋に落ちたロシアの美姫サーシャには手ひどくフラれてしまう。傷心のオーランドーはトルコに渡り、その地で30歳を迎えたのだが、彼は一夜にして艶やかな女性に変身してしまうのだった。

 オーランドーの数奇な運命を通じて“真の運命の相手には時代も国も性別も関係なく巡り合えるはず”というヴァージニア・ウルフの強いメッセージが描かれている。

 オーランドーを演じる多部未華子らわずか6人の俳優が、16世紀から20世紀という長い時間をまたぎながら20以上の役を演じる。

【STAGE】T FACTORY『エフェメラル・エレメンツ』

2017.09.21 Vol.698

 2010年の30周年以降、川村毅はひとつのテーマを掲げ、そのテーマに基づいた作品作りを長いスパンで続けている。そしてこの2017年からの数年間は「自身の原点を再考する」新作を創っていくという。

 川村は33年前、23歳の時に近未来、軍事用アンドロイドの人間への反乱を描いた『ニッポン・ウォーズ』という作品を書いた。当時としては荒唐無稽のSFでしかない話だが、今はAIと人間の共存というテーマがよりリアルになっている。そんな時代にもう一度、同じテーマで新作に取り組む。ヒューマノイド・ロボットの生命と感情を問いながら、人間というものをもう一度問い直す作品となるという。

 公演期間中の23日(土)19時30分と24日(日)13時に『ニッポン・ウォーズ』のリーディング公演もある。第三エロチカの看板俳優だった宮島健と川村が、初演と同じ役で出演するという貴重な公演だ。

【STAGE】ブロードウェイミュージカル『ファインディング・ネバーランド』

2017.09.10 Vol.698

 ブロードウェイミュージカルの新作が日本上陸。時を超えて愛され続ける名作「ピーターパン」の誕生に隠された、作家とある家族の実話を描く。本作は、ジョニー・デップの主演した映画『ネバーランド』をベースにしている。 

 舞台は19世紀後半のイギリス。劇作家のバリは父親を亡くし傷心の少年ピーターと出会い、交流を深めていく。物語の中に希望を見出して成長していく少年やその兄弟の姿から、バリも劇作家としての原点を思い出し……。

 ゲイリー・バーロウによる楽曲はドラマティックで空想想が膨らむ、『ヘアー』や『ピピン』を手掛けたダイアン・パウルスによる演出、セリーヌ・ディオンやシルク・ドゥ・ソレイユに携わったミア・マイケルスによる振付など、最初から最後まで見逃せない場面ばかり。

この夏、注目のミュージック『55』C&K

2017.07.23 Vol.695

 男性シンガーソングライターユニット、C&K(シーアンドケー)による最新アルバム。55分間のライブの後に握手会をするスタイルの全国ツアーを、そのまま収録したと言っても過言ではない内容。合宿をし膝を突き合わせながら楽曲を作る原点の方法に立ち返って作られた本作は、熱やさまざまなエモーションが濃縮して詰め込まれている印象。ライブを念頭に制作したというだけに構成も一回の公演を再現しているかのよう。盛り上がって、ちょっとクールダウン、そしてピークへ。アガらずにはいられない内容だ。シングル『Y』を含む全12曲を収録。初回盤にはライブ映像を収めたDVDも。

[J-POP ALBUM]ユニバーサルミュージック 7月26日(水)発売 初回限定盤(CD+DVD)5200円、通常盤3000円(すべて税別)

これだけ聞いておけ!『Ego』RAC

2017.07.14 Vol.694

 米ポートランドを拠点に活動するプロデューサーのRAC(アール・エー・シー)の最新作。大学の寮から活動をスタートした彼も今は、レディ・ガガを始め、エリー・ゴールディング、フェニックス、フォスター・ザ・ピープルら世界規模で愛されるアーティストたちとの仕事で、アーティスト同様、熱い視線を集めている。彼自身が一番の情熱を注いだという本作は、ダンスフロアを沸かせるだけでなく、ロックやポップスなど他ジャンルも取り込んでしまった意欲作。ウィーザーのリヴァース・クオモ、ヴァンパイア・ウィークエンドのロスタムなどそうそうたるメンバーが参加。ハッピーでファンなアルバム。

[ROCK ALBUM]COUNTEAR RECORDS / Beat Records 7月14日(金)発売 2200円(税別)

これだけ聞いておけ!『Hug Of Thunder』Broken Social Scene

2017.07.13 Vol.694

 カナダ出身の大所帯バンド、Broken Social Scene(ブロークン・ソーシャル・シーン)が7年のインターバルを経て最新作を発表。作品ごと圧倒的な風景を見せてくれるBSCサウンドの力はさらに強力になって、ファンを満足させてくれる。タイトルトラックはファイストが参加した美しいナンバー。一転、先に発表されていた『Halfway Home』はキッズを飛び跳ねさせるバンドテイストが前面に押し出された曲。郷愁を誘う『Skyline』など聴きごたえ満載。プロデューサーは、ザ・ホワイトストライプスやザ・ストロークスを手掛けたジョー・チッカリ。

[ROCK ALBUM]Arts & Crafts / Hostess 発売中 2400円(税別)

これだけ聞いておけ!『YES』asobius

2017.07.13 Vol.694

 ロックバンドのasobius(アソビウス)の最新アルバム。メンバーチェンジで新体制となったバンドが完成させた初めてのアルバムだ。積み重ねてきた経験と、新しいバンドになったゆえの気合がビシビシと感じられる。アルバムタイトル『YES』に象徴されているのか、収録曲からは前向きさや明るさといったポジティブな印象のみが伝わってくる。かき鳴らされるギターにキラキラしたアレンジメント、そしてバシッと決まっているリリック&ボーカルなど、それぞれのエレメントは充実していて、ハイエナジーかつ高カロリー。ライブハウスに直行したくなる作品だ。

[J-POP ALBUM]UK PROJECT/RX-RECORDS 7月19日(水)発売 2500円(税別)

これだけ聞いておけ!『LAST SUPPER EP』LILI LIMIT

2017.07.12 Vol.694

 昨年のメジャーデビューから、作品のリリースやライブで新たな支持層を獲得し続けて、成長を続けているバンド、LILI LIMIT(リリリミット)の最新音源が届いた。芸術性と大衆性がバランスよく同居するサウンドが特長かつ魅力の彼ら。この作品でテーマにしたのは「最後の晩餐」だ。キャッチーなサビは一度聴いたら脳内でループする。アップテンポでダンサブルなメロディーとサウンドには、日常の中にある別れが綴られている。カップリングには『LIKE A HEPBURN』の他、2曲を収録している。今見ておきたいバンドのひとつ。秋からはツアーがスタートする。

[J-POP EP]キューンミュージック 発売中 1300円(税込)

これだけ聞いておけ!『A GOOD TIME』never young beach

2017.07.11 Vol.694

 今年最もブレークに近いと注目を集めるロックバンド、ネバヤンことnever young beachのサードアルバム。スタート時から着実に一歩ずつ歩みを進めてきたように見える彼らは、2017年のCDショップ大賞で入賞してそれがニュースになったり、大規模なイベントや夏フェスでプレーしたりと広がり方は加速している。本作はまたメジャーデビューアルバムでもある。

 ネバヤンの音楽や魅力はさらに広まっていきそうで、バンドにとって今この時が“A GOOD TIME”が到来しているのかもしれない。そんな中でリリースされる本作は、いろんな幸せ、言い換えるなら、ア・グッド・タイムをキャプチャーした楽曲で構成されている。『気持ちいい風が吹いたんです』『SUNDAYS BEST』、ライブでおなじみの『散歩日和に布団がぱたぱたと』のバンドバージョンなど。心地よいメロディーと美しいハーモニー、そしてウキウキせずにはいられないリズムや楽曲世界に、知らずに体を上下させたくなる。初回盤の特典DVDには初めてのワンマンツアーの模様が収録されている。笑顔になるライブの様子も必見だ!

[J-POP ALBUM]スピードスター 7月19日(水)発売 初回限定盤(CD+DVD)3800円、通常盤2600円(ともに税込)

番外編的なオムニバス公演 ハイバイ 『ハイバイ、もよおす』 

2017.07.10 Vol.694

 昨今では作・演出の岩井秀人の人生の周辺に起きたことを題材に、人生の深淵をのぞかせるような作品を描くことの多いハイバイだが、今回はちょっとばかり趣向を変えた番外編的な公演。

ハイバイは五反田団が毎年お正月に行っている「新年工場見学会」というイベントに2007年から参加。このイベントは両劇団に出演経験のあるような周辺にいる役者が多く参加し、数日の稽古で短中編を作り上げ上演しているのだが、本公演などとは違った実験的な作品はもとより思わぬ名作を生み出すなど、噂が噂を呼び、今ではすっかりチケット入手困難な人気イベントとなっている。

 今回はこの新年工場見学会で過去に上演された中から珠玉の名作3本と岩井の書き下ろし新作一人芝居をオムニバスで上演する。

 公演以外にも「おしえて、セクリ先生!」(2日18時)、「ハイバイシンポジウム」(3日14時)、「抽選どもども」(8日14時)、「ハイバイコメンタリー」(10日14時)と4回のプレミアムイベントを開催(イベントの詳細はハイバイのホームページで)。全体的に肩から力の抜けた感じの公演になっている。

過去作品を再創作するシリーズ『きゅうりの花』

2017.07.10 Vol.694

Cucumber+三鷹市芸術文化センターPresents土田英生セレクションvol.4『きゅうりの花』

 この「土田英生セレクション」は劇作家・演出家の土田英生が過去に上演した自作品を、自ら主宰するMONOとは別の枠組みで自身が望む俳優たちと再創作しようという企画。

 4回目となる今回は1998年に初演された『きゅうりの花』。「利賀・新緑フェスティバル」に関西の集団として初めて招へいされ、土田英生とMONOの名を全国に知らしめるきっかけとなった作品だ。その後、2002年に全国各地で上演され、今回は15年ぶりの再演となる。

 物語の舞台は後継者の不在や嫁不足に悩む過疎の町。ある日、町の活性化を図るためのイベントとして、地元に伝わる民謡をアレンジした踊りを東京で踊ろうという話が持ち上がる。住む者たちのこの土地に対する思いはさまざまで、そんな思いが交錯するなかイベントの当日を迎えることになるのだったが…。

 良質な会話劇であるのはもちろんなのだが、初演時より登場人物の年齢を上げ切実さを増すことで、より強い社会性を持った作品となっている。

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