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スタートダッシュを楽しくキメる!『Hopeless Romantic』Michelle Branch

2017.04.10 Vol.688

 米シンガーソングライターのミシェル・ブランチが放つ最新作。ゼロ年代の女性シンガーソングライタームーブメントの立役者として活躍した彼女が14年ぶりに放つフルアルバムは、ザ・ブラック・キーズのパトリック・カーニーと、ベックやノラ・ジョーンズを手掛けるプロデューサーのガス・セイファートを迎えて制作され、自叙伝的なロック作品に仕上がった。

 ミシェルは本作で、失恋し新しい恋を見つける。本人の言葉を借りるなら「単に手放して、前進して、そして大丈夫になることを理解するってこと」が丁寧に綴られているのだ。ボーナストラックを含めて15の曲では、美しくてエモーショナルなギターサウンド、ベースライン、ミシェルの歌声が涙腺を刺激する。それと同時に体を突き動かさせてしまうのは、彼女のシンガーソングライターとしての魅力であり、スタッフ陣の手腕だろう。

 世界がいま最も注目しているとされる本作を携えて、6月には来日公演も決定している。彼女が新境地を切り開いたともいえるアルバムだけにライブパフォーマンスは見ておきたいところだ。

[ROCK ALBUM]ユニバーサル 発売中 2700円(税別)

ジャニーズの上田竜也と横山裕がそれぞれ異色のタッグで主演を務める舞台2本

2017.04.09 Vol.688

『新世界ロマンスオーケストラ』

 KAT-TUNの上田竜也の3年ぶりの主演舞台は初めての挑戦となるコメディー作品。

 上田はこれまでシェイクスピア作品や、蜷川幸雄、岩松了の演出のもと、シリアスな役柄で舞台に立ってきたが、今回は複数の女性に何股もかけるサイテー男という180度趣きの違う役。

 間もなく30歳を迎えるインディーズバンドのボーカルを務める拓翔にメジャーデビューの話が舞い込んでくる。その日を境に一気に調子に乗り始める拓翔だったが、彼には隠さないといけないスキャンダラスな秘密があった。

 拓翔は複数の女性と関係を持っているというサイテーっぷり。しかし世の中そううまくは回らないようで…。
 本作の作・演出を手掛けるのは今や飛ぶ鳥を落とす勢いの月刊「根本宗子」の主宰・根本宗子。「男性が中心にいて、周りに女子が群がっているハーレムな感じで、でもラブシーンなし、な作品をいつか作ってみたい、そんなことが成立する男性はめったにいない! 今回がチャンス」と本作を書き下ろしたという。拓翔をめぐって複数の女性たちが登場するのだが、女が複数集まった時の物語の転がしは根本の真骨頂。どんな物語を見せてくれるのか楽しみなところ。

【日時】4月30日(日)?5月21日(日)(開演は月?水19時、金13時、土日13時・18時。木曜休演。※30日(日)は18時開演。3日(水)は13時/18時開演。21日(日)は13時開演。開場は開演30分前)【会場】東京グローブ座(新大久保)【料金】全席指定 S席8800円、A席7800円、B席5800円【問い合わせ】東京グローブ座(TEL:03-3366-4020 [公演公式サイト] www.sekaroma.com/ )【脚本・演出】根本宗子【出演】上田竜也、清水くるみ、早織、青山美郷、長井短、根本宗子、宮崎吐夢、西田尚美

スタートダッシュを楽しくキメる!『CLIMATE CHANGE』PITBULL

2017.04.09 Vol.688

 米マイアミ出身の世界のお祭り番長こと、ピットブルの最新作。前作『ダーレ』(スペイン語歌唱アルバム)からは1年半ぶり、英語歌唱アルバムとしては大ヒット作『グローバリゼーション』から約2年半ぶりのリリースとなる。レゲトンやキューバンミュージックを取り入れたオリジナルなパーティーサウンドで世界を持ち上げてきた彼だが、前作そして今作のタイトルからも感じられるようにサクッと自分の貧しかった生い立ちを織り交ぜながら、今のアメリカや、アメリカンドリームを手にした現在の自分の立ち位置で人生を楽しもうと謳歌する。お祭り番長の最新サウンドで盛り上がろう! ハッピーなパワーがさく裂する楽曲は新しい生活にピッタリのサントラ。

[DANCE ALBUM]ソニーミュージックジャパンインターナショナル 発売中 2200円(税別)

12トンの水が降る傑作ミュージカルが渋谷で開幕

2017.04.04 Vol.687

 英ダンサーのアダム・クーパーが主演するミュージカル『SINGIN’ IN THE RAIN~雨に唄えば~』が3日、東急シアターオーブで開幕した。2年半ぶりの来日公演で、アダムが土砂降りの雨のなか水しぶきを上げながらダンスする演出は健在。ずぶ濡れになりたいオーディエンスも殺到しそうだ。

 初日公演の前に行われたプレスコールで、12トンの水を浴びながらダンスを披露したアダムは、その直後に取材に対応。ずぶ濡れだったことについて聞かれ、「大丈夫です。50人のスタッフが僕の面倒を見てくれるので」と話し笑わせた。制作スタッフによれば、水は適温に保たれているというが「温泉ほど温かくはない」とのこと。
 
 ミュージカルは、ジーン・ケリーが雨の中で歌って踊るミュージカル映画の名作『雨に唄えば』を舞台化したもの。ハリウッド映画がサイレントからトーキーへと変わっていく時代にブロードウェイを目指す作家や役者たちのサクセスストーリーと、映画製作現場の舞台裏を描いている。

 30日まで同所で。

なんてかわいいのだ。ああ、なんて、なんて、なんて。—角田光代

2017.03.28 Vol.687

 47人の作家・著名人による猫についてつづったエッセイ&マンガを集めた一冊。猫の可愛さをひたすら書くもの、名前の由来、猫との別れの一日と思い出、路地で一瞬すれ違った時の描写、猫の尻尾についての考察など、直接的な関わりから、猫がチラっと登場するだけのエッセイまで猫の出現方法はさまざま。水木しげるは、猫を擬人化させ言葉を喋らせ、猫から見た人間の生き方を鋭く批評。また、長谷川町子の絵と文章による「どうぶつ記」は、マンガとは違う長谷川のユーモラスな魅力があふれる作品だ。柳瀬尚紀の『私家版猫事猫信ことわざ小辞典』は、小学館『故事俗信ことわざ大辞典』の猫にまつわることわざの解釈に訂正を入れるという手法を用い、猫を全面的に擁護するという試み。ほかにも、穂村弘は歌人らしく、猫を見かけた時の様子を、詩的に表現。ひとつの物語となっている。多くの有名、人気作家のプライベートな姿が見えるようなほほえましいもの、作家の個性があふれる猫愛に満ちた作品が多く収録されている。しかし、谷崎潤一郎から角田光代まで。猫好きな人がどんなに多い事か。この世から猫がいなくなったら、生まれなかった文芸作品もたくさんありそうだ。

【収録作家】(掲載順)角田光代、片岡義男、村上春樹、堀江敏幸、吉本ばなな、丸谷才一、鹿島茂、小林まこと、横尾忠則、穂村弘、浅田次郎、幸田文、吉行淳之介、長谷川町子、半藤末利子、加藤典洋、谷崎潤一郎、寺田寅彦、柳瀬尚紀、金井美恵子、池澤夏樹、柴田元幸、武田花、大島弓子、小池真理子、いしいしんじ、小倉千加子、伊集院静、平川克美、佐伯一麦、高橋源一郎、、平出隆、佐々木幹郎、水木しげる、澁澤龍彦、安西水丸、斎藤環、野坂昭如、中井久夫、中島らも、田村由美、麿赤兒、保坂和志、アーサー・ビナード、田中小実昌、伊丹十三、町田康。

日本の女子レスリング草創期から取材してきた男から見た強さの秘密 ——布施鋼治氏

2017.03.27 Vol.687

 2008年に『吉田沙保里 119連勝の方程式』で「ミズノ第19回スポーツライター賞優秀賞」を受賞したスポーツライターの布施鋼治氏による『なぜ日本の女子レスリングは強くなったのか 吉田沙保里と伊調馨』(双葉社。本体価格1500円)が刊行された。

「リオ五輪前、全国少年少女レスリング連盟の今泉雄策理事長から『吉田と伊調の足跡をシンクロさせながら、女子レスリングの歴史を振り返るノンフィクションを書かないか?』と薦められたのがこの本を書くきっかけでした」と語るのは著者の布施氏。

 布施氏は古くはプロレスから始まり、今では総合格闘技、ムエタイ、レスリングを中心に取材するスポーツライター。
「87年秋の話になるけど、ヨーロッパを放浪中に第1回世界選手権を取材する機会を得たんですよ。現地を訪れた日本のマスコミは僕ひとりでした(笑)」

 その時になにか感じるものがあった?

「それだけ当時の女子レスリングは世の中からマイナー扱いされていたわけだけど、当時セミプロライターだった僕を福田富昭さん(現・日本レスリング協会会長)や今泉さんは快く受け入れ、コーチの部屋に寝泊まりさせてくれました。来る者は拒まずという姿勢に居心地の良さを感じましたね」

 その後定期的にレスリングを取材している布施氏は現在RIZINで総合格闘家として闘う村田夏南子もプロ転向以前から取材している。

「この本でも夏南子ちゃんにはかつての吉田の最大のライバルとして登場してもらいました。練習熱心な子なので、新天地での成功を願っています」

 現在の日本のスポーツ界はレスリングに限らず、なぜか女子の活躍が目立つ。古くから女子レスリングの取材を続けてきた布施氏の目から見て、なにか原因のようなものを感じることは?

「この本の冒頭でも書きましたけど、『男性にできて女性にできないことは何ひとつない』ということに尽きますね。強くなるにつれ、女性アスリートはタレント性も磨かれているような気もします」

 2020年の東京オリンピックに向け、気持ちの高まる一冊!

新しい何かが始まる!『FROM DEEWEE』Soulwax

2017.03.27 Vol.687

 DJデュオ、2 Many DJsとしても活動するベルギー出身のロックバンド、ソウルワックスがオリジナルとしては12年ぶりに放つ最新作。90年代には“踊れるロック”曲、キャッチーな楽曲でシーンを夢中にさせていたが、2000年以降はDJの活動のほうが目立ちがちだったのは事実。その一方で溜りにたまっていたメンバーのバンドとして作品を発表したいという想いがさく裂しているのがこの作品だろう。リスペクトされる“ダンスロックバンド”として彼らは、本作で、2017年の踊れるロックをスマートに提示して見せる。たたずまいも含めて、やっぱりカッコいい。

[ROCK ALBUM]Play It Again Sam / Hostess 発売中 2490円+税円(税別)

新しい何かが始まる!『Different Creatures』Circa Waves

2017.03.27 Vol.687

 英ロックバンド、サーカ・ウェーブスの最新アルバム。2013年にリヴァプールで結成されるとともにブレークを果たした彼らが鳴らすのは、UKロックが脈々と引き継がれている耳なじみの良いメロディーとポップネス、高揚感を煽るギターからなるロック。多ジャンルや電子音、ダンスビートにのったロックといった2000年代以降の傾向から、一歩踏み出した勇気のあるロック。ノスタルジックではなく、新しいものをどんどん取り入れるでもなく、奇をてらわずにロックする。その真っ当さに覚醒の感がある。サマソニで再来日。

[ROCK ALBUM]Virgin / Hostess 発売中 3200円(税別)

「僕も“意識高い系”だからわかるんです」古谷経衡

2017.03.26 Vol.687

 これまで、政治や社会、国際問題についての著書が多かった著者による新刊『「意識高い系」の研究』が好評だ。カフェでmacを広げ、流行のお店で食事をして、ブランド品を持ち歩く。グルメとオシャレでキラキラと輝き、仕事も順調…。そんな日常をSNSにアップする。そんな“意識高い系”を鋭く斬る!

「ひとつ言っておきますが、“意識高い人”は立派な人です(笑)。問題は“系”。これはもどきということですから」と古谷氏。

「“意識高い系”という言葉を世間に広めたのは、常見陽平さんの『意識高い系という病 ソーシャル時代にはびこるバカヤロー』という本。そこには言葉の意味と類別が書かれているので、“意識高い系”という言葉は大体正しく共通認識されていますが、それがなぜ発生したのかということまで踏み込まれていなかった。ですから、今回の僕の本では“意識高い系”が生まれた背景と、その気持ち悪さの正体を分析してみようと思いました」

 その根底には何がある?

「彼らは、実力を盛っているばかりか、それを人に見せびらかしているんです。それは人に承認されたいという欲求によるもので、強烈なコンプレックスがその人たちの中にある。自分を盛っているだけの人は“意識高い系”ではなく、ただのウソつきです(笑)。それをあの手この手で、写真に撮ってアップロードして、自慢するのが“意識高い系”。そこに非常に大きな闇が潜んでいると思っています」

 リア充との違いは?

「リア充な人は見せびらかしません。両者は対立の構造です。リア充は自明のことなので見せびらかす必要がない。そこには、これまで積み上げてきた時間の蓄積があり、そのおかげで余裕がある。そしてその余裕が洗練を生む。そこには、親から受け継いだ土地というものがあり…」

 興味深い分析はまだまだ続くが、文字数がなくなり…。“意識高い系”の本質を知りたい人はぜひ!

新しい何かが始まる!『HIT』三浦大知

2017.03.26 Vol.687

 三浦大知のキレのあるダンスと豊かな歌唱力に裏打ちされた息を飲むパフォーマンスに圧倒されっぱなしだ。三浦大知という稀有な才能をぎゅうぎゅうにできるだけ詰め込んでいて、最先端のサウンドを取り入れたダンスチューン、歌もじっくりと聞かせるミドルなど聞きごたえと“感じ応え”のある作品だが、彼のすべてが聞けるなんてことは到底言えない。それだけ彼が“持っている”ものは、とてつもない。圧倒されながら隅から隅まで聞きたい。『Cry & Fight』など全12曲。

[J-POP ALBUM]SONIC GROOVE 発売中【CD+DVD+スマプラミュージック&ム?ビー】4212円、【CD+Blu-ray+スマプラミュージック&ム?ビー】4644円、【CD+スマプラミュージック】3348円(すべて税込)

新しい何かが始まる!『THE JSB WORLD』三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE

2017.03.26 Vol.687

 国民的グループとして不動のポジションを築き上げた三代目 J Soul Brothersのデビューから現在に至るまでの軌跡を一挙収録したボリュームたっぷりのベスト盤。メンバーによれば三代目の新章の始まりを告げる作品にも位置づけられるそうで、よくあるこれまでの“まとめ”的な作品かと思って聞くと火傷する。熱量たっぷり運動量たっぷりで音源も映像からも彼らの勢いを感じずにはいられず、受け取るほうもまた聞くほどに気合が入ってくる。目と耳でまずは堪能して。自然と心はズキュンとやられる。

[J-POP ALBUM]rythm zone 3月29日(水)発売 【3CD+2DVD】5918円、【3CD+2Blu-ray】6998円、【3CD】3780円(すべて税込)

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