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今度狙うのは『自由』だ。東京芸術劇場『カノン』

2021.08.17 Vol.744

 東京芸術劇場では2009年に野田秀樹が芸術監督に就任以来、さまざまな自主企画による作品を上演している。その中に国内外の演出家が野田の戯曲に挑むというシリーズがあり、昨年3月には劇団・快快の野上絹代が『カノン』を演出する…はずだったのだが、その時期といえば新型コロナウイルス感染症の感染者が徐々に増え始め、イベント等の開催の自粛が求められ始めたころ。この公演もぎりぎりまで開催を模索。劇場入りまでしたものの、無念の公演延期となっていた。

 今回、関係者の尽力もあり約1年5カ月の時を経て、ついに公演が実現する。

 キャストについては一部を除き、昨年3月の公演メンバーらがそのまま出演。沙金役のさとうほなみが2021年4 月に世界190カ国同時配信された NETFLIX 『彼女』に主演し、注目を浴びるなど、俳優たちは昨年3月以降、それぞれの分野で大きく成長した。

 作品では思想や理想、人間の本質、若者たちの焦燥感といったものが描かれており、昨年3月でも十分上演の意義がある作品だったのだが、コロナ禍にある現在、その意義はより一層高まったと言えそうだ。

男たちが役を入れ替えながらモノローグを綴っていく「ティーファクトリー『4』」

2021.08.16 Vol.744

 本公演は昨年5月に世田谷パブリックシアターで上演される予定だったのだが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止による緊急事態宣言が発出された影響で延期となっていたもの。

 1年3カ月の時を経て全スタッフ・キャストそのままに上演されることとなった。

 この戯曲は2011年に世田谷パブリックシアター学芸企画〈劇作家の作業場〉「モノローグの可能性を探る」という上演予定のないワークショップからスタートし、改稿とリーディングを重ねるなかで2012年に白井晃氏の演出で舞台化され、鶴屋南北戯曲賞、文化庁芸術選奨文部科学大臣賞を受賞するなど高い評価を得た。その後、ニューヨーク、ソウル、コペンハーゲンといった世界各国でも上演された。今回は川村自らが演出を手掛ける。これまで川村が他のカンパニーと演出家に書き下ろした戯曲をティーファクトリーで上演したことはなく、かなりのレアケース。

 物語は5人の男たちが役を入れ替えながらモノローグを綴っていく独特なスタイルで進む。どうやら被害者の遺族らしい彼らのモノローグから生と死、感情の停止といったものが浮かび上がる。

 コロナ禍で1年延期され、東日本大震災から10年の今年、この作品が上演されるというのも何かの縁と感じざるを得ない。

言語が消滅する世界を描いた傑作 筒井康隆『残像に口紅を』

2021.08.15 Vol.744

 夏の文庫フェアの季節が到来した。読む機会のなかった古典や名作に触れられるのは、文庫本の良さでもあるだろう。中でもロングで売れ続け、最近改めて話題を呼んでいるのが、1995年に刊行された筒井康隆の『残像に口紅を』(中公文庫)だ。

『残像に口紅を』はある「ことば」がひとつ、またひとつと消えていく世界を舞台にした実験的長篇小説。たとえば「あ」が使えなくなれば、文中の「愛」も「あなた」も消えていく。評論家の津田は言う。

「そして当然のことだが、ことばが失われた時にはそのことばが示していたものも世界から消える。そこではじめて、それが君にとっていかに大切なものだったかということが」

 2017年にも「アメトーーク!」でカズレーザー氏が絶賛してブームが巻き起こり、今回はTikTokで紹介されたことをきっかけにヒット。言語が消え、表現が消える不条理な世界で何が残るのかを描いた傑作は、新しい読者によって何度でもよみがえるのだ。

夏のおすすめアート展はポップ&インパクト満点!「KAWS TOKYO FIRST」

2021.08.14 Vol.744

 色彩豊かなインパクト満点のキャラクターなどで広く知られ、ジャンルを超えて人気を博すポップカルチャーの巨匠KAWSによる国内初の大型展覧会。展覧会タイトルを、2001年に渋谷パルコで開催された自身日本初の個展と同じ「KAWS TOKYO FIRST」とし、20年を経た今年“原点回帰”の思いを込め、創作と進化の軌跡をたどる。

 KAWS(カウズ)=ブライアン・ドネリーは90年代初めにグラフィティアート界で頭角を現して以降、ニューヨーク・ブルックリンを拠点に国際的に活躍する稀代のアーティスト。現在では、グラフィティ、絵画、グラフィックデザイン、産業デザインはもちろん、ユニクロやアベイシングエイプなどの著名ファッションブランドやディオールをはじめとした有名ブランドデザイナーとのプロダクトコラボレーションを通じて若い世代を中心に幅広い人気を誇る一方、近年はファインアートの世界でも揺るぎない地位を確立している。

 国内初の大型展覧会となる本展では、コマーシャルアートとファインアート双方の領域を網羅するKAWS の視覚的アプローチに迫り、彼が創作した約150点の絵画や彫像、プロダクトを通して、そのユニークな芸術制作の軌跡や美術史的意義をたどる。さらにKAWSが保有するプライベートコレクションの中から、自身が影響を受けたアーティストの作品も展示予定。他にも、事前にスマホにダウロードして楽しむAR(拡張現実)作品や、子どものためにKAWSが手掛けたインタラクティブ体験も登場する。

【明日は何を観る?】『ザ・スーサイド・スクワッド 5463“極”悪党、集結』『フリー・ガイ』『ドント・ブリーズ2』

2021.08.13 Vol.744

『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』

 人類最大の脅威、禁断の「怪獣」プロジェクト。世界を救うため、政府に極秘で集められたのは14人全員終身刑のクソやばいヤツら。たった10年の減刑と引き換えに成功率0%のデス・ミッションに挑む“極”悪党たちが暴れまくる!

監督:ジェームズ・ガン 出演:マーゴット・ロビー、イドリス・エルバ他/2時間12分/ワーナー・ブラザース映画配給/8月13日(金)より公開 R15+ thesuicidesquad.jp

自分を守り、みんなを守り、生の音楽の楽しさを守っていきたい「FUJI ROCK FESTIVAL」

2021.08.13 Vol.744

 フジロックフェスティバルが20〜22日まで新潟・苗場スキー場で行われる。コロナ禍での開催となる今年は、参加者、出演者、スタッフ、フジロックに関わるすべての人たちの安全を確保するため「開催における新型コロナウイルス感染拡大防止対策ガイドライン」に沿って、徹底した対策を講じ開催する。

 出演ラインアップは国内で活動しているバンドやアーティストのみ。ヘッドライナーは、初日がRADWIMPS、中日がKing Gnu、最終日は昨年も出演予定だった電気グルーヴ。そのほかにも、yonige、MISIA、秦基博ら注目のアーティストの出演が決まっている。チェックしたいのはEXILE MAKIDAIらのPKCZ。21日に、「Day Dreaming」に登場する。

 会場までの行き帰りも含めて、大好きなミュージシャンの生演奏や生の音楽そのものをこれからもずっと楽しむためにも特別なフジロックを満喫したい。

TSUTAYAプレミアム 動画配信おすすめラインアップ!『ただひとつの愛』『#love2.5d』

2021.08.13 Vol.744

話題の映画や気になる海外ドラマ、チェックしておきたかったあの音楽に、話題のコミックス——。TSUTAYAのレンタルなら気軽にたっぷり楽しめます。さて今月のおすすめは……?

うつすだけでパラパラマンガ作家に!?お笑い芸人・鉄拳初の練習ドリル『鉄拳のパラパラマンガうつすだけドリル』

2021.08.11 Vol.744

 お笑い芸人・鉄拳が初のパラパラマンガ練習ドリル『鉄拳のパラパラマンガうつすだけドリル』を発売した。

 本に描いてあるイラスト1〜30コマをなぞりながらうつすだけで、動物や乗り物、おばけが回転したり飛んだりするパラパラマンガのできあがり。巻末にハサミで切って使えるオリジナルの用紙がついているので、買ってすぐにパラパラマンガを描くことができる。描けるパラパラマンガは「くるくる回る人」「落ち葉とミツバチ」「潜水艦と船」「鳥のフンとクマのぼうし」「おばけの野球大会」の5作品。登場するキャラクター数ごとにうつす難易度も変わるので、この夏の自由研究にもおすすめだ。スペシャル特典に鉄拳の人気作品「スケッチ」の一部も掲載。

1934年初演のミュージカル・コメディ ブロードウェイ・ミュージカル『エニシング・ゴーズ』

2021.08.11 Vol.744

 1934年にブロードウェイで初演されたコール・ポーター作詞作曲のミュージカル・コメディ。主人公でナイトクラブの大スターのリノ、ウォール街のビジネスマンのビリー、社交界の華であるホープ、英国紳士のオークリー卿がそれぞれの思いを胸に同じロンドンに向かう船に乗船。そこに神父に変装したギャングのムーンフェイスやその情婦のアーマも乗り込んできて大騒ぎになり……。

 リノを演じるのは宝塚時代に男役を突き詰めて来た紅ゆずるで、本作が退団後初めてのミュージカルとなる。緊急事態宣言の発出によって東京・明治座での公演は一部中止となってしまったが、制作決定時の会見で、紅が「この作品を観劇している間は心を開放していただいて、明日から頑張ろうってポジティブに思っていただける作品にしたい」と話したように、元気をくれる舞台になるはずだ。

 本ミュージカルは日本では1989年に初演。それから再演を重ねて今回は8年ぶりの上演となる。8月11〜29日の明治座での公演の後は、名古屋、大阪、福岡でも公演がある。

夏のおすすめアート展はポップ&インパクト満点!「会田誠展「愛国が止まらない」」

2021.08.10 Vol.744

 美術家・会田誠がミヅマアートギャラリーでは5年ぶりとなる個展を開催。本展では、それぞれ制作動機は異なりつつ、「食」を契機に生まれた、自国・日本への断ちがたい会田の思いを題材とした3作品が一同に会する。

 ギャラリーのスペースを大きく占有するのは《MONUMENT FOR NOTHING V〜にほんのまつり〜》。同作は、兵站の軽視により飢餓に直面することが多かった旧日本軍の兵士をモチーフとし、素材や技法は青森のねぶたを参考にして制作された大作。東京では初お披露目となる。

 平面作品では、新作絵画シリーズ《梅干し》が登場。会田は高橋由一の《豆腐》(1877年)を「日本で最初にして最良の油絵」と公言しており、《梅干し》はそれを念頭に置いて制作された、油絵具による写生画。上記2点に加え、会期が1年延期されたことで新たに追加となった「漬物」を題材にしたコンセプチュアルな新作も本展で発表となる。

 デビュー以来ほぼ一貫して、日本文化や日本社会をテーマにしてきた会田誠。もちろん批評的まなざしではあるが、ここまでこのテーマにこだわり続けている現代美術家はそう見当たらない。ネットの一部で「反日アーティスト」とレッテルを張られることもあるが…はたして「愛国が止まらない」というタイトルは会田の真情なのか、それともアイロニーなのか。作品を実際に自分の目で見て確かめてみては。

厳選ホラー&スリラーショートフィルムを無料配信「ブリリア ショートショートシアター オンライン」

2021.08.10 Vol.744

 ショートフィルム専門のオンラインシアター「ブリリア ショートショートシアター オンライン(以下:BSSTO)」では「真夏のホラー&スリラー特集」と題し怖くて涼しくなる“冷感ショートフィルム”4作品を、8月31日まで限定配信中。

 配信されるのは、スプラッター・ホラーの金字塔『死霊のはらわた』シリーズ最新作『Evil Dead Rise(原題)』の公開も控えるリロイ・クローニン監督作『真夜中のベッドで』(アイルランド/約10分)や、父親から家の外に出ることを禁じられている少年の物語『悪魔が死んだとき』(ドイツ/約19分)、幼いころからの“友達”との別離を描く『セバスチャンと僕たち』(イギリス/約8分)、そして少女が父親に連れられ参加した奇妙な晩餐会を描く『シャドウアニマル』(スウェーデン/約22分)の4本。

 

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