利益率30%で書店を元気に! “炎の講演家” 鴨頭嘉人と『コミュニケーション大全』の挑戦

 10月27日から11月9日までは読書を推進する「読書週間」。しかし、この20年で日本の書店数はおよそ半分に減少している。そんな中、 “炎の講演家” として知られるYouTube講演家の鴨頭嘉人さんの新刊『もう人間関係で悩まない!コミュニケーション大全』を発売する鴨ブックスでは、販売価格に対する書店の利益率を従来より約10%高い30%に設定。発売から8週間で累計4万部に達する売れ行きを見せている。 “書店を元気にする出版社” 鴨ブックスと『コミュニケーション大全』に込めた思いとは?(全2回のうち第1回/後編に続く)

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書店利益率30%の小規模出版社「鴨ブックス」を設立したYouTube講演家の鴨頭嘉人さん(撮影:蔦野裕)

経営理念は “書店を元気にする出版社”

 日本マクドナルドを経て人材育成やマネジメント、リーダーシップについての講演・研修を行う鴨頭さん。新たに立ち上げた少人数出版社「鴨ブックス」は、経営理念に “書店を元気にする出版社” を掲げている。

鴨頭嘉人(以下、鴨頭)「僕の講演活動を運営する東京カモガシラランドの経営理念は “良い情報を撒き散らす!!” です。YouTubeチャンネル、Facebook、Instagram、TikTok、Voicy……とありとあらゆるSNSを運用し、人の心が元気になったり明るくなったり、人生が豊かになるような情報を出し続け、世の中のよい情報の総量を増やせば人の心は豊かになるという信念でやってきました。

 ところが、動画を視聴する人と本屋さんで本を買う層は違っていて、YouTubeチャンネルの登録者数が100万人になっても情報が届かない人たちがいます。その人たちのために書籍を出すべきだという思いはありましたが、年間の講演回数が300~400回あって出版社に企画書を持っていく余裕がない。だったら自分たちで本を出版する仕組みを作りたいと思ったのが、鴨ブックスの前身となる『かも出版』というレーベルです」

 かも出版では出版取次(取次、書籍・雑誌の卸売業者)と取引口座を開設しなくても自社の本を書店に流通できる「口座貸し」と呼ばれる手法で出版活動を行っていた。

鴨頭「かも出版は本を制作するだけで営業活動ができないので、今度は書店さんとコミュニケーションが取れないという壁にぶつかりました。 “どうにか取次と口座を開設できないのかな” と悩んでいた時に、僕がやっている『話し方の学校』に取次大手の社員の方が学びに来ていることを思い出し、 “すごくおいしい肉が食べられる店があるんだけど、食べに来ないか” と言って呼び出したわけです(笑)。

 それまでは誰に聞いても “鴨頭さん、それは無理だよ” と言われ続けたのですが、彼の答えは “いけると思います” でした。僕のYouTubeチャンネルなどの影響力、かも出版の実績を含めてきちんと交渉すれば、取次が乗ってくれる可能性はあると言ってくれたんです。しかも彼は、たまたま所属する取次を退職していて(笑)。じゃあ一緒に出版社を作らないかと誘ったところ、若い頃からの本当の夢が本作りだったそうで、一緒にやりましょうと快諾してくれました。50代、ジジイ2人が手に手を取り合って『少年ジャンプ』の世界ですよ(笑)」

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