八代目尾上菊五郎襲名披露興行の最後は7月の全国公演。「雨の五郎」「藤娘」の舞踊2本立てに襲名披露の口上を挟み音羽屋ゆかりの「魚屋宗五郎」
また「魚屋宗五郎」については「父の近くでおなぎという役を何度か務めさせていただき、父の雰囲気、江戸の雰囲気というものは感じていたものの、感じるのといざ自分がやってみるのとでは大変大きな違いを感じました。江戸の息遣い、生きている人たちの言葉遣いや、仕草や体遣いも含めて、初演の時には“果たしてこれが本当に宗五郎になっているのかな?”という自信のなさでいっぱいだったんですけれど、回数を重ねていくうちに、父の指導も含めて自分の腹に役が落ちて、自分が宗五郎という役に収まり、それで自分なりの宗五郎が生まれてきた。今回、博多座と巡業で3回目になるのですが、やっと自分にこの宗五郎がなじんでくるのではないかと自分自身に期待しているところではあります。この魚屋宗五郎には江戸時代の町人の意地、妹の無念、そして失敗した人でも必ずしも見捨てないという江戸の温かさというものが詰まっていると思いますので、その温かさを感じていただける舞台にしたいと思っております」と作品への思いを口にする。
七代目菊五郎からのアドバイスなどについては「稽古をじっと見つめていて、これということはないんです。“お前は俺のどこを見てきたんだ?”ということを無言で稽古場で見つめていられる。逆に何も言われないほうが怖いですよね。何も言われないというのが正解ではないと思うので。もっともっと父に見てもらって、父が築き上げてきた魚屋宗五郎に近づきたいと思いますし、5代目6代目菊五郎が築き上げてきた江戸情緒を大切に演じていきたいと思っています」と芸の継承の難しさを感じさせた。

