『風、薫る』見上愛と上坂樹里、2人で駆け抜けた1年 「横にいてくれることがありがたかった」《インタビュー》

 

 見上愛と上坂樹里がW主演する、NHKの連続テレビ小説『風、薫る』が25日に最終回を迎える。生まれ育った背景が全く異なるりんと直美というふたりの女性が、それぞれの事情から、明治という激動の時代にはまだ知られていなかった看護の世界に飛び込んで奮闘。その姿に、多くの人が心揺さぶられたり、勇気づけられた。次の作品『ブラッサム』へとバトンを手渡した2人が、心地よい距離感で支えあいながら過ごした撮影期間を振り返る。

 

ーー約1年の長い撮影を終え、放送も最終回を迎えました。クランクイン前のご自分にアドバイスをしてあげられるとしたら、どんなことを伝えたいですか?

上坂樹里:うーん……死ぬ気で頑張れ!ですかね(笑)。

見上愛:(笑)。……私は、いっぱい頼れる人がいるから大丈夫だよって言ってあげたい。クランクイン前は今までヒロインをやられてた方からお話も聞いていたり、そういう姿を見ていたりもしたので、いろんなものを背負わなきゃという気持ちが過剰にあったんですけれども、始まってみたら樹里ちゃんもそうですし、他にも本当にたくさんの方々が支えてくださるし。自分が不得意なことは得意な人が補ってくださる、そういう経験がいっぱいあったので、1人で抱え込まずに飛び込んで、と。

ーー1年間の撮影を通して、1番辛かったことは?

見上愛:今年の年明けかな。年内はロケも多かったので、ゆったりとしていたんですけど、年明けから養成所に入学して、りん(見上)と直美(上坂)が養成所で学ぶことを私たちも学びながら撮影していかないといけなかったので、やることが多くなって撮影シーンも増えたなという感じで、てんやわんやしてました。でも、私が女子校出身ということもあって、同じ同級生として女性陣と撮影できることがすごく楽しくて! 独特な空気感なんです。すごく仲がいいけど、それぞれ自分に入ったり役に集中してるタイミングみたいなものが話さなくても最初から分かるメンバーで。大変なこともあったけど、かなり楽しい期間でもありました。

上坂樹里:養成所のチームは朝から夜まで一緒でチームでの撮影シーンも多かったですし、大変なこともあったけど、みんながいたから乗り越えられました。愛さんが言ったように、みんな無理しないで自然とその空気になじめたというか、養成所のパートが終わって急に人数が少なくなって、充実してたなあと思いました。個人的に辛かったのは……(夫の)吾郎さんとのシーンです。幸せな新婚生活から(吾郎さんが亡くなって)最後に直美が1人でボタンをつけるまで1~2週間で撮影しました。先の展開が分かってるから、一緒にご飯を作って何気ない会話をしてるシーンが辛くなっちゃって。その撮影期間はとにかく泣くことを我慢するのに苦労しました。直美が1番愛した人ですし、強さも弱さも教えてくれた大事な人が亡くなってしまったことは受け入れがたいし、苦しくてたまらなかったです。

一ノ瀬りんを演じてきた見上愛は、クランクアップ会見時に「誰かの命や生活をつないでくださっている医療従事者の皆様に感謝と尊敬の意を示したい」と話した。

ーー撮影をするなかで、この2人で良かったと思ったところはありますか。

見上愛:同じものを背負っている人がずっと横にいてくれる、樹里ちゃんが横にいてくれるっていうことが1年間走り抜ける上で本当にありがたかったなと思います。りんと直美の関係性においてもそうですが、1人だと成長できる度合いにかなり限りがあって。主人公にいろんな人が影響を与えて主人公の周りの人も成長していくっていうのが朝ドラの物語だと思うんですけど、りんと直美が2人で同じ速度で成長していくっていうのが、やっぱり今までになかった朝ドラになったんじゃないかなと思います。片方に何かあればもう片方が手を差し伸べて、そこから引っ張り上げてという関係性。ずっと手をつないで歩いてるわけじゃないけど、いざという時に手を差し伸べてくれる。2人だからこそできた、温かさのある、そして前に進む力もあるドラマになったんじゃないかなと思います。

上坂樹里:ドラマの中の話で言うと、直美もりんも同じ問題で同じように悩んで、1人の人生しか生きてなかったら触れることもできないところまで触れて。りんのことで直美も悩むし、直美のことでりんも悩んでくれるし、肯定も否定もできる。他人の人生に入り込んでくれる存在がいることはすごく大事で、だからこそ人生が豊かになるといいますか、そういうことを強く感じました。私はいま1人暮らしなんですけど、クランクアップして、家に1人でいる時間が長くなって……なんか隣りに誰かいてくれることの大事さというか改めて心強かったなと思ってます。

小川(大家)直美演じた上坂樹里は、劇中で、結婚し母にも。クランクアップ時には「21歳の私より、はるかに大きい人生を生きさせてもらった」と語った

ーー1年間2人で走り抜けてきて、お互いのいろいろな部分が見えてきたと思います。お互いに俳優として尊敬できる点や刺激を受けたことはありますか?

見上愛:樹里ちゃんは、おおらかで周りが勝手に安心する空気感を常に持っていて。みんなもすごく助けられたと思います。お芝居のことで言うと、ものすごく感受性が豊かで、他の人のお芝居を受けて柔軟に直美を演じている印象がありました。自分でも想像ができなかったところに直美が行く感覚があったんじゃないかなと思います。そうやって生まれる化学反応みたいなものが作品を作っていく上での良さだったりもします。私たちも樹里ちゃんも、台本を読んでいるだけでは想像もできなかった、いろんな表情だったり感情を1番近くで見せてもらえて幸せだったなと思います。

上坂樹里:リスペクトすることがたくさんあるんですけど、現場の居方ですね。長いスケジュールだったり、自分がきっと1番大変な時、どんな時でも周りを見て、『風、薫る』っていう作品を先頭で引っ張って照らしてくれた。本当に愛さんの力のおかげだなと思っています。お芝居に関して感受性が豊かでいろいろな表情を見せてくれたとおっしゃっていただいたんですが、それを引き出してくれたのは、りんであり周りのキャストの皆さんの力。愛さんは、りんがこのシーンで求められてることだったり、前にこういうやり取りがあったから、このシーンはこうでこうであるとか細かく監督とお話しされてる姿が印象的でした。愛さんとりんが切り替わる瞬間はすごく分かるんですけど、その切り替わった瞬間のりんが私を直美にしてくれました。そんなりんと共に1年間走り切ることができて感謝の気持ちでいっぱいです。

ーー見上さんと上坂さんの関係も深まりましたか?

見上愛:大きくこれということがあったわけじゃないのですが、どんどん信頼関係が芽生えて、なんとなくですが、お互い何を考えてるかがテレパシーのように分かってきて。それがりんと直美という関係性にもつながるところがあって。自分のことのように分かるわけではないんですよ。なんか樹里ちゃん今何考えてるんだろう?って考えちゃう時間が自然と増えていって、それがすごく幸せなことで、すごく不思議な感覚です。

上坂樹里:家族よりも一緒にいた時間が長いっていうのもそうなんですけど、撮影以外のお休みの日とか、例えばスーパーだったりお菓子屋さんに行った時、「これ、愛さん好きそう!」って。そういうのを本当に自然と考えるようになって。愛さんも土日明けてリハーサルの時にこれあげるって美味しそうなお菓子をいっぱいくれたり。なんかそういう掛け合いが当たり前のようになっていきましたよね。

見上愛:会ってない時間も自然と考えちゃって。りんと直美も、きっとそうだったんじゃないかなと。劇中の新潟編もそうでしたけど、ずっと一緒にいたわけじゃなく、それぞれ違う人生を歩んでるけれども、お互いのことを思いあっていて、なんとなく相手の思考回路が分かってきてっていうのがすごく2人の関係性に近いものがあったと思います。

 

ーー『風、薫る』の経験が今後の俳優人生にどんなプラスの影響をあたえてくれそうですか?

見上愛:これを始める前もそうだったんですけど、豊かな人生を送っていきたいなと思っていて。このお仕事が好きで大切に思っているけれど、その表現の幅を広げていくためにも、いろんな経験をしながら、豊かにのんびりゆったり生きていきたいなという気持ちがあります。自分の人生とともに、りんの人生に向き合い続けた 1 年だったので、りんの思考回路や強さや柔軟さに助けられる瞬間が、いずれくるかもしれないなと思ってはいます。

上坂樹里:直美という役と出会えたこと、1年間同じ役を生きさせてもらって、お芝居以外でも感謝しきれないぐらいたくさんの方に支えてもらいました。この先お仕事でも、お仕事じゃない時にも、何か自分の中で悩みだったり、大変なことにぶつかった時に、この1年間が支えになってくれると思います。

 

『風、薫る』は、NHK総合で、毎週月~土曜午前8時~など。 「NHK ONE」で見逃し配信中。

 

(構成/TOKYO HEADLINE・酒井紫野)

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