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BOOK 耳を澄ませば、彼らの声が聞こえるはず

2013.05.13 Vol.591

 テレビや舞台、音楽などさまざまな分野で活躍するいとうせいこうが、16年ぶりに新作小説『想像ラジオ』を発表した。同作は2013年の『文藝』春号に掲載されると、すぐに話題となり、品切れになる書店が続出、入手困難に。さらに、インターネットやレビュー、ツイッターなどにも多くのコメントが寄せられ、発売前に重版になるという異例の事態となった。

 物語の主人公はDJアーク。彼は海沿いの町の高い杉の木のてっぺんに引っかかりぶら下がりながら、「想像ラジオ」という番組を発信している。アークの発信する電波が“想像”であるなら、リスナーも“想像”の中で受信する。軽快におしゃべりを続けながら、時には音楽を流しながら、リスナーに語りかけたり、リスナーからの手紙を読んだりするアーク。

 いつどこにいても受信できる「想像ラジオ」は、広島、長崎、東京、神戸、そして3.11以降の東北など、生きるものと死ぬものの世界がつながるところに流れてくる。死にゆくものが語りたいこと。生きるものが知りたい死者の思い。そうやって、私たちは「想像ラジオ」の中で、会話をすることで、悲観、絶望感、深い悲しみといった感情を整理していくのかも知れない。

 DJアークはなぜ、そんな所で「想像ラジオ」を発信しているのか。彼が待っている〈声〉はいったい誰の声なのか。大切な人に伝えたい、大切な人の言葉をもらさず聞き取りたい。そう願えばあなたにも「想像ラジオ」がきっと聞こえてくるはずだ。

歌舞伎俳優の”タレント本”

2012.11.19 Vol.573

 四代目市川猿之助襲名を記念し「僕は、亀治郎でした。」が発売された。亀治郎時代の歩みを写真と文章で丁寧に紹介。140年間1日も絶えたことのない「猿之助」という名前を襲名するということについての思いを率直に語ったエッセイ。そしてその襲名公演の舞台裏も余すところなく披露している。さらに、梅原猛、三谷幸喜、蜷川幸雄による亀治郎へのメッセージほか、佐々木蔵之助や市川染五郎との対談、福山雅治とのツーショット写真まで! 譲れない美学を持つ亀治郎の哲学「カメテツ」ベスト28、歌舞伎のことからプライベートなことまで答えた100問100答など、亀治郎の魅力が凝縮された歌舞伎フォトブック。

「雪と珊瑚と」

2012.05.28 Vol.553


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 21歳の珊瑚は、生まれたばかりの雪と2人で暮らすシングルマザー。職もなく、働きたくても雪を預かってもらえる所もない。わずかな貯金を取り崩しての生活に、心も体も疲れ果てていた時に見た1枚の張り紙。「赤ちゃん、お預かりします」。追いつめられた状況の中、その張り紙が珊瑚の人生を変えることとなる。
 雪を預かってくれるという女性が作ってくれた温かいスープ、滋味ある言葉に珊瑚は生きる力が息を吹き返していくのを感じたのだ。母親から見捨てられ、雪の父親からも別れを告げられ、ひとりぼっちで雪を守り、戦ってきた珊瑚が選んだ道は、彼女が作ってくれたような、食べるとホッとして元気になれる食事を提供すること。貯金も担保も経営ノウハウも何もない珊瑚は、多くの人に助けられ、その夢の実現のために動き出した。
 殻に閉じこもり、一人で雪を育ててきた珊瑚が、それらの出会いを通し自分と雪、そして他人との距離を徐々に近づけていくのだが...。
 生きることは、こんなにシンプルでたくましいことなのだと気づかせてくれる優しく力強いストーリー。活字だけでも元気になりそうな、素材の旨みがこぼれ出るような料理の描写も絶品!


「雪と珊瑚と」
【著者】梨木香歩 【定価】本体1500円(税別) 【発行】角川書店



川島永嗣『準備する力』

2011.10.31 Vol.529

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 著者は現在、ベルギーのチームで活躍し、日本代表のゴールキーパーである川島永嗣。サッカーをあまり見ない人でも、鬼の形相の日本代表の守護神と言えば分かるだろう。この本は副題に「夢を実現する逆算のマネジメント」とあるように、サッカー選手である彼のこれまでの人生を振り返り、どう考えて目の前の道を選択してきたか、またこれからの人生をどうマネジメントしていくかが書かれている。



 ゴールキーパーはサッカーの中でも唯一手を使っていい特殊なポジションだ。プロローグの中で著者は言う。「フィールドの後ろからチーム、そして試合全体を見るように、自分自身のこともそうやって客観的に、時に主観的に見つめてきた」と。そこには、アスリートとして、勝ち負けにこだわり、闘志をむき出しに戦う姿とは正反対の緻密な自己マネジメント力があった。40歳まで現役を続けるための、肉体や精神の鍛え方、さらにその先の人生のビジョンから逆算して、今何をしなければならないのか。常に具体的な目標を描き、それに向かってひたすらに努力する。著者の人生哲学は、アスリートだけではなく、すべての職業の人のヒントになる言葉が詰まっている。




川島永嗣『準備する力』 【発行】角川書店 【本体】1300円(税別)




メインから穴場までリトル韓国のすべてがここに!

2011.05.30 Vol.511

 日本のリトル韓国、新大久保を網羅したガイドブックが発売された。「プチ韓国 新大久保完全ブック」は、メジャーから”通”しか知らない穴場スポットまで、新大久保の最新情報が満載。韓流スター御用達の店、本格グルメ、韓流美容が体験できるエステ、イケメン店員のいる店など定番情報からディープな裏情報まで盛りだくさん。『美男(イケメン)ですね』のチャン・グンソク、超新星など日本でも大人気の韓流スターたちの作品カタログも付いている。これ一冊で新大久保がもっと楽しめる「新大久保完全ガイド」の決定版!

 

“悪魔払い”は実在した。では“悪魔”は…?『ザ・ライト エクソシストの真実』

2011.04.04 Vol.504

 現実に存在する、悪魔払いのプロフェッショナル・エクソシストの秘密が、今明かされる―!? ごく普通の神学生がエクソシストになるまでを追い、彼が目の当たりにする“禁断の真実”を描くミステリアスな話題作。

 知られざる神秘の世界にいざなうのは『羊たちの沈黙』『ハンバニル』などで、見る者を戦慄させてきた名優アンソニー・ホプキンス。本作では、主人公の青年を導く一流のエクソシストに扮し、またしても観客をおののかせてくれる。 その弟子となる青年・マイケル役に、本作で長編映画デビューを果たしたイケメン舞台俳優コリン・オドノヒュー。他、キアラン・ハインズ、ルドガー・ハウアーら熟練俳優も顔を揃える。

 バチカン公認の正式な職業として、21世紀の今も実在するエクソシスト。実際に「悪魔はいる」と語る司教もいるという。その事実があるだけに、映画で描かれるエピソードがリアルに迫る。

石井光太『飢餓浄土』

2011.03.28 Vol.503
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 2005年に大宅壮一ノンフィクション賞候補作となった『物乞う仏陀』を発表した石井光太は、現在もっとも注目を集めるノンフィクション作家といってもさしつかえないだろう。


 著者は世界中を旅し、現場に足を踏み入れ、そこに溶け込み、現代日本のぬるま湯に浸かりきった我々には想像もつかない世界を突きつける。


 今回彼が描くのは戦地や密林で生きる人々と幻のかかわりについて。フィリピンの密林に現れる人食い日本兵の亡霊、ある日突然、「私が産んだ」と言って乳飲み子を抱き始めたオカマの話など、現実と幻を行ったり来たりするうちに自らの足元がグラグラと揺らぎ始めていることに気がつく。


 感心することもあれば、不快に感じる出来事もある。すべてをひっくるめて、読まずにはいられない。中毒になる一冊。



著者:石井光太 出版:河出書房新社 定価:1680円



川口葉子『東京の喫茶店 琥珀色のしずく77滴』

2011.03.28 Vol.503
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「喫茶店とカフェの違いは何ですか?−そんな疑問を持つすべての人へ−」と帯にあるように、同書は東京の喫茶店案内だ。カフェともチェーン店のコーヒーショップとも違う喫茶店。オーナーではなく、マスターがいれる一杯のコーヒーに、お店のすべてが詰まっているような、そんな心安らぐ空間だ。ぬくもりのある写真からは、そんな喫茶店の空気感が伝わってくる。


 第5章の「神田神保町 古本街の喫茶店」では、神保町界隈で14軒の店を紹介。ぶらぶらと古本屋をのぞきながら見つけたお気に入りの一冊を持って入りたくなる店ばかり。同書の中で著者は言う。「喫茶店なんてただ愛すればいいんです」。喫茶店に行って、一杯のコーヒーとお気に入りの本で、心落ち着く時間を過ごしたくなる。



著者:川口葉子 出版:実業之日本社 定価:1680円



エクスペンダブルズ

2011.03.07 Vol.500

 シルベスタ・スタローン、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、ミッキー・ロークら磨き上げられた肉体を持つ俳優たちが集合した戦争アクション映画。エクスペンダブルズ(消耗品)と名乗る傭兵部隊は南米の島国の軍事独裁政権を倒すために現地に乗り込む。監督と脚本はスタローン自身が担当。

 

バンドやろうよ!Vol.2

2011.03.07 Vol.500

 元気いっぱいの女子バンドの存在が定着するなかで、もっと多くの人にバンドの楽しさやスゴさを伝えるイベントが多数行われている。そのなかでも、近年デビューした女子バンドのなかで目覚しい成長を遂げているSCANDALの所属事務所が主催する「バンドやろうよ!」は、注目のイベントだ。2回目の開催となる11日は、SCANDALに加え、ボーカルに頼らないという新しいスタイルのガールバンドByeByeBoy feat.cossami、コピバンコンテスト・グランプリに輝いたHi-Lab、さらにステレオポニーも招いて、オムニバス形式で展開。第一回がshibuya eggmanだったことを考えると、SHIBUYA-AXという会場も大きくなったが、イベント内容そのものもバラエティーに富んで成長した感がある。

 

杉戸洋 − 青木淳 展

2011.03.07 Vol.500

 美術家・杉戸洋と建築家・青木淳。アーティストと建築家のコラボが生み出す、表現の広がりを楽しめる展覧会。その青森県立美術館で4月23日から開催される開館5周年記念展「はっぱとはらっぱ 青木淳×杉戸洋展」の、さきがけとして行われる。

 建築も美術も完結することのない“テストピース”だと言う2人。本展では、日常で誰もが目にするものを使って、ギャラリーを“スタディー空間”にする、ユニークなインスタレーションを披露する。作品は完成すればおしまい、ではなく、使う人や見る人によって、常に少しずつ生まれるもの…そんな作り手の思いを共感できるはず。

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