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作家・いしいしんじ3年ぶりの小説集『マリアさま』をめぐる言葉と音

2019.12.18 Vol.Web Original

 作家のいしいしんじが3年ぶりの小説集『マリアさま』(リトルモア)を出版した。2000〜2018年の間にさまざまな媒体で発表した短篇・掌篇から選りすぐりの27篇を収録。同書の刊行を記念したイベントが荻窪の「Title」にて行われた。当日は『マリアさま』の世界を拡げてくれるようなお話と、刊行に際して作られたプレイリスト〈『マリアさま』のためのサウンドトラック〉から、いしいが愛用する蓄音機“コロちゃん”で蓄音機用レコード=SP盤をかけていく特別な夜となった。イベントの内容からほんの一部をお届けする。司会進行は「Title」店主の辻山良雄。

 ◆ ◆ ◆

辻山良雄(以下、辻山):私はリブロという本屋に勤めていたことがあり、池袋本店が閉店することになって辞めたんですけど、お世話になった人に「これからお店を準備します」みたいなメールを出していたら思いがけずいしいさんから返事をいただきまして。「まったく新しい、けれどなつかしい。ずっとそこにあったはずなのに、たったいまできた空間」ということを返してもらって、それで「Title」のホームページの左上に“まったく新しい、けれどなつかしい”という言葉をずっと使わせてもらってます。

いしいしんじ(以下、いしい):本当にそういう場所になったのは、僕が辻山さんとお目にかかった時に、辻山さんがそういう場所の気配を出してはった。そっちのほうに向かうんだろうなというのがあったからそういうふうに言ったんで、それを僕が受け取って「こうなんじゃないですか」って言っただけなんですよね。

辻山:その言葉をいただいて、なにか店自体が物語性を帯びるというか。いしいさんが気配を嗅ぎ取って、そういう言葉を出したというのは、小説にもつながる話だなと思いましたね。『マリアさま』は18年間に書かれた短篇を27篇集めたということで、実際にはこれに載らないような短篇もいっぱい書かれていると思うんですけれども。

いしい:この中に野球の話(「子規と東京ドームに行った話」)があるんですね。『野球小僧』という雑誌が創刊された時に、僕の担当編集者から「野球小説やらないですか」って話があって、季刊だったから4篇あるはずなんですよ。チェ・ゲバラと一緒に日本対キューバ戦を見るとか、横山やすしと甲子園球場に行くという話(笑)。選ばなかったのかなと思ったら、送ってなかったんですよ。送り損ねてるものがまだいっぱいあるはずなんです。

【オススメCD 4選】2010年代の終わりに聞いておきたい音楽

2019.12.18 Vol.725

「冬空 / White Wings」
三代目 J SOUL BROTHERS

 三代目の最新シングル。今年、青、赤、白をテーマに掲げて作品を発表するとしていたが本作がその第3弾。シルキーでスムースな曲に乗せて歌われるのは決して会うことができない人へ想いを届けようとする究極のバラードで、恋焦がれる胸の苦しさや切なさに飲み込まれてしまう、没入感のある楽曲。EXILE AKIRAと林志玲が出演する映画さながらのミュージックビデオもあいまって、スケールの大きなラブソングになっている。「White Wings」は優しい言葉と感情の温かさを描いた楽曲になっている。赤シングル、青シングルも合わせて聞きたい。

[J-POP SINGLE]rhythm zone 12月11日(水)発売 CD+DVD1800円+税 CD1000円+税

【オススメDVD 5選】家族と、仲間と…みんなで見れば倍楽しいエンターテインメント!

2019.12.15 Vol.725

『ライオン・キング』

 1994年に公開されたディズニー・アニメーション映画『ライオン・キング』が実写もアニメーションも超えた、フルCGによる驚異の“超実写版”として新たに誕生! 監督は『アイアンマン』『ジャングル・ブック』を手掛けたジョン・ファヴロー。「サークル・オブ・ライフ=自然界の命は大きな環で繋がっている」という壮大なテーマを、かつてない臨場感あふれる映像で体感できる一本。また、映画音楽の巨匠ハンス・ジマーがアニメーション版と同じく楽曲を提供。さらに大人気アーティストのファレル・ウィリアムスが「王様になるのが待ちきれない」や「ハクナ・マタタ」といったおなじみの曲にアレンジを加えたことでも話題に。

販売元:ウォルト・ディズニー・ジャパン 発売中  MovieNEX 4200円(税別)

年末年始は“映え”アート展へ!「山沢栄子 私の現代」

2019.12.15 Vol.725

 日本における女性写真家の草分け的存在・山沢栄子の生誕120年を記念した写真展。

 山沢栄子は1899年大阪に生まれ、1920年代のアメリカで写真を学び、1930年代から半世紀以上にわたり日本における女性写真家の草分けとして活躍。当初はポートレートの撮影を主な仕事としていたが、晩年の1980年代には抽象絵画のような写真作品を制作する作家として知られ、高い評価を得ていた。とくに、カラー写真による色鮮やかな作品群は、当時の日本では他に例を見ないものであり、〈私の現代 / What I Am Doing〉と題して発表されたこのシリーズには、きわめてコンセプチュアルな表現も含まれている。

 本展では、1970~80年代に手がけたカラーとモノクロによる抽象写真シリーズ〈What I Am Doing〉を中心に、 抽象表現の原点を示す1960年代の写真集、戦前の活動を伝えるポートレートや関連資料などを展示し、写真による造形の実験を重ねることで、独自の芸術表現に到達した作家の歩みをたどる。

 また会場では東京都写真美術館のコレクションから、アルフレッド・スティーグリッツやポール・ストランド、アンセル・アダムス、エドワード・ウェストン、イモジェン・カニンガム、ラルフ・スタイナーほか、ファッション・広告写真のセシル・ビートン、ジョン・ローリングス、ポール・アウターブリッジ・ジュニアらの作品も加えて紹介し、1920年代以降のアメリカ近代写真の状況と、山沢への影響を探っていく。

一度見ると病みつきになる種の作品 芸劇eyes plus 12月のワワフラミンゴ『くも行き』

2019.12.14 Vol.725

 ワワフラミンゴは作・演出の鳥山フキを中心に活動する演劇団体。2004年に旗揚げされ、カフェやギャラリーといった小さな空間での公演が多く、その場所の特性を生かした作品づくりを得意としている。

 その作品はエビ、カニ、ホッチキス、双子等、独自の興味や関心をもとにシュールな漫画を思わせるような不思議な世界観で構成される。いわば一度見ると病みつきになる種の作品だ。

 また鳥山の作風は、特定のストーリーにこだわらず見聞きしたものや感じたもの、俳優たちの話から自身の生活に至るまでを作品に反映するというもの。それはポストドラマ的でありつつも、目を覚ましたときに何となくつながっていたかのように思えてしまう「夢」のようでもある。 そんなオフビートで「脱力系」な物語を女性キャストを中心に紡ぎ出す。

 今回は2度目の芸劇登場。2013年に芸劇 eyes番外編「God save the Queen」に招聘され、注目を浴びたのだが、だからといって何が変わるわけでもなくマイペースの創作活動を続けているのもまた彼女たちらしい。

 というわけで、彼女たちが大きな舞台で上演することはめったにないことなので、必見。18日の夜、19日の昼夜には終演後にアフタートークもあり。

渋谷でビギナーのための「開高健」ナイト開催!【おすすめ書店イベント】

2019.12.14 Vol.725

 12月に没後30年、2020年12月に生誕90年を迎える開高健。『パニック』、『裸の王様』、『夏の闇』、『オーパ!』などの小説やルポ、エッセイのほか数々の名言、壽屋(現・サントリー)宣伝部時代の名キャッチなど、今も輝き続ける開高健の世界を知ってほしい。そんな思いでノンフィクション作家の角幡唯介やWEBライターの岡田悠など各界から8人の開高ファンや関係者が登壇し、熱く語り合う。

【オススメコミック3選】2019年を締めくくる一冊はこれだ!

2019.12.14 Vol.725

話題の映画や気になる海外ドラマ、チェックしておきたかったあの音楽に、話題のコミックス――。
TSUTAYAのレンタルなら気軽にたっぷり楽しめます。さて今月のおすすめは……?

根本宗子作『今、出来る、精一杯。』開幕。伊藤万理華「23歳の私だからこそ伝えられること精一杯伝えたい」

2019.12.13 Vol.WEB Original

 劇作家で演出家、そして女優と幅広く活動する根本宗子が主宰を務める月刊「根本宗子」は今年2019年が旗揚げ10周年記念興行として代表作『今、出来る、精一杯。』を音楽劇にリメイク。12月13日から上演がスタートする。舞台公演を前にマスコミ向けゲネプロが都内で行われた。

時代を経てもなお健在 ミュージカル『サタデー・ナイト・フィーバー』

2019.12.13 Vol.725

 ジョン・トラボルタ主演の映画『サタデー・ナイト・フィーバー』。1977年に公開されたこの映画は世界的ディスコブームを巻き起こし、指で天を指すあのポーズは、時代を経てもなお健在だ。

 本作はその名作映画を舞台化したもの。労働者階級に置ける厳しい現実から逃げだそうと、主人公のトニーが、唯一の生きがいであるダンスを武器に成功への道へ走り出すというストーリー。行き場のない青春のエネルギーを、“胸アツ”なディスコミュージックとエネルギッシュな振付けで魅せる。ビージーズを思わせるシンガーたちが歌うライブステージスタイルもまた新鮮だ。

 主演のトニーを演じるのは、『マシューボーンの白鳥の湖』などで知られるリチャード・ウィンザー。本作といえばまずノリノリのディスコダンスへとのイメージが直結するが、ソロ、デュエットなど、ディスコダンスだけではない、さまざまな種類のダンスが登場し、違いや豊さに圧倒される。2019年はディスコミュージックとともに締めくくろう。

ユーモラスかつスリリング『荒れ野』穂の国とよはし芸術劇場PLATプロデュース東京公演

2019.12.13 Vol.725

「穂の国とよはし芸術劇場PLAT」は2013年に愛知県豊橋市に開館した劇場で、豊橋市ばかりではなく東三河エリアの芸術文化交流に大きな役割を担っている。

 初代芸術文化アドバイザーを務めた平田満のもと、穂の国とよはし芸術劇場プロデュース公演『父よ!』(2013年、2015年)を上演した。そして、2017年には劇団KAKUTAの主宰である桑原裕子が作・演出を務め、プロデュース公演第2弾として『荒れ野』を上演。同作は第5回ハヤカワ『悲劇喜劇』賞、第70回読売文学賞を受賞するなど高い評価を得た。

 2018年4月、平田に代わり桑原裕子が2代目芸術文化アドバイザーに就任。そして2019年12月に『荒れ野』をオリジナルキャストで再演する。

 物語は郊外の古びた団地の一室が舞台。そこには奇妙な共同生活をする疑似家族が暮らしていたのだが、ある日、ニュータウンのショッピングセンターから火災が発生し、近接した一戸建てに住む3人家族がその部屋に避難してくる。偶然にも一つ屋根の下で過ごすこととなった人々の一夜の物語がユーモラスかつスリリングに描かれる。

 最初はバラバラに存在していた登場人物たちの関係性や、彼らの抱えている問題が、物語が進むにつれ徐々につながっていき、どんどん物語に引き込まれて行く。

【明日何を観る?】『ジュマンジ/ネクスト・レベル』『屍人荘の殺人』『カツベン!』

2019.12.12 Vol.725

『ジュマンジ/ネクスト・レベル』

「ジュマンジ」をクリアして2年。大学生になったスペンサーはあの興奮が忘れられずジュマンジを修理。またしてもゲームの中に。彼を救出するためマーサたちもログインするがゲームの世界はバグっており“無理ゲー”状態に…。

監督:ジェイク・カスダン 出演:ドウェイン・ジョンソン、ジャック・ブラック他/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント配給/12月13日(金)日米同時公開 https://www.jumanji.jp/

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