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2月は黒人歴史月間!今すぐ読みたい話題の本『黒人の歴史 30万年の物語』

2024.02.12 Vol.757

 毎年2月はアメリカとカナダにおいて「黒人(アフリカ系アメリカ人)歴史月間」ということをご存じだろうか。

 1926年に米ハーバード大出身で歴史家のカーター・G・ウッドソン博士が創設し、奴隷解放の父と呼ばれるエイブラハム・リンカーンと、奴隷制廃止運動家のフレデリック・ダグラスの誕生月である2月にアフリカ系アメリカ人の歴史やその功績を称えるものだ。

 そんな今月にぴったりの『黒人の歴史 30万年の物語』(河出書房新社)は、2021年に英DK社から刊行された書籍の日本版。アフリカの歴史で最も強力な帝国は? ジャズの先駆者は? そして「Black Lives Matter」運動のきっかけは? 280点超の地図や図版を収録し、アフリカ系アメリカ人の歴史を総合的に網羅した日本で唯一の本書は必読の一冊だ。

【書評】「私の中のくもをさがす」高橋久美子、西加奈子の新刊『くもをさがす』を読む

2023.04.22 Vol.Web Original

 直木賞受賞作『サラバ!』をはじめ『さくら』『i』『夜が明ける』などで知られる作家の西加奈子さん。新刊『くもをさがす』(河出書房新社)は2021年のコロナ禍、滞在先のカナダで乳がんを宣告されてからの約8カ月間を克明に描いた初のノンフィクション作品だ。

 音楽活動を経て現在は作家・作詞家としてエッセイ、小説、絵本、歌詞などさまざまなジャンルで文章を紡ぐ高橋久美子さんは本書をどう読んだのか。

渋谷・新宿・銀座・上野…80年代と現在を定点観測『東京タイムスリップ1984⇔2021』

2021.07.19 Vol.743

 雑誌「平凡パンチ」特約フォトグラファーだった著者が、写真専門学校の卒業生有志で行った展覧会のために撮影した1984年の繁華街。コロナ禍でネガフィルムの整理をはじめたことで、時空を超えて現在の同位置・同角度からの写真を新たに撮影し、対照的に並べて比較した写真集が本書である。

 いつの時代も若者の街だった渋谷や新宿が、37年を経るとこんなにも変わるものなのか。著者がモノクロ撮影を主戦場としていたこともあって、経過した年月以上に失われた時間や風景を思わせる。当時を知る人には懐かしさやノスタルジーが、今の若い人には目新しさが感じられる構成。写真の下に添えられているキャプションにも、思わず「そうそう」とうなずいたり新たな発見があったり。

 現在の街並みは2020〜2021年にかけて撮影されているが、このコロナ禍の風景もきっと数十年後に懐かしむ日が来るのだろう。

1137日間にわたる国立競技場建設ドキュメント『国立競技場 Construction』

2021.07.19 Vol.743

 いよいよ始まる東京オリンピック・パラリンピック。その主会場となるのが、建築家の隈研吾氏が設計を手がけた「国立競技場」(=オリンピックスタジアム、新国立競技場)である。同所が誕生するまでの一部始終を、定点カメラにより撮影した写真集が『国立競技場 Construction(コンストラクション)』(一般社団法人共同通信社著、河出書房新社刊)だ。

 刊行する河出書房新社の所在地は、新しい国立競技場の目の前。同社の好立地を生かし、共同通信社が建設に向けた準備工事の始まった2016年10月から完成した2019年11月まで24時間、1137日間にわたって屋上にて定点撮影した。トータルで約16万枚にも及ぶ膨大な写真の中から厳選し、日本を代表するスタジアムが完成するまでのドラマを克明に描き出す。

萩尾望都の痛みと失われた大泉時代『一度きりの大泉の話』【TOKYO HEADLINEの本棚】

2021.05.14 Vol.741

『ポーの一族』『トーマの心臓』『11人いる!』などの作品で知られる漫画家の萩尾望都。本書はこれまで封印してきた“大泉時代”と呼ばれるデビュー当時の話を、約12万字にわたって書き下ろした最初で最後のエッセイである。

 当時、萩尾らが暮らした練馬区南大泉の半長屋には、数々の女性漫画家や周辺人物が集い、親交を深めていたという。時系列で真摯に語られる家族関係、漫画への情熱、名だたる漫画家や編集者たち……そしてある“事件”が起きたことで萩尾は大泉をあとにし、二度と過去には触れなくなる。同時代に活躍した漫画家たちとの交流、文通したりアシスタントしたりしながら売れっ子になっていくエピソードは、少女漫画好きならば誰もが興奮することだろう。

 それだけに「『小鳥』の巣を描く」以降の話には胸が痛む。前書きに「私の出会った方との交友が失われた、人間関係失敗談」とあるが、誰しも経験のある青春時代の傷が瞬間冷却されているようで辛いのだ。収録の未発表スケッチや『ハワードさんの新聞広告』も必見。

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