これまでの鼓童のイメージをくつがえす新たな試み 新作公演『巡-MEGURU-』が11月よりスタート

 新潟県佐渡島で指導し、1981年に結成された「鼓童」。日本の伝統的な和太鼓を中心とした舞台は、日本のみならず世界で高く評価されている。そんな鼓童が、新作公演『巡-MEGURU-』の日本全国ツアーを11月から開催する。「今度の『巡』では太鼓のイメージや固定概念を変えたいと思っています」と住吉佑太。11月の公演は、その住吉が演出を担当、ほぼすべての曲を作っているという。

住吉「太鼓というと若い人は、鉢巻きを巻いて上半身裸の男性が、夏祭りでドンドンっていうイメージをお持ちじゃないですか? 実際にそういうふうにも言われますし、生で見た事がある太鼓の演奏は、大体がそんな感じだと思います。ただ僕はもう少し音楽的で、パフォーミングアートとして成り立っているというところを伝えたいなと。ですから、あえてメロディアスでポップに仕上げた曲を入れるなど、それまでのちょっと近寄りがたかった太鼓の印象を取っ払い、入り口をもっと広げて、多くの人に太鼓に触れていただく機会を作りたいと思っています。そんな気持ちから11月の公演は、自分たちと同世代の人が面白いと思ってもらえる作品というのを意識して、曲作りや演出をしました」
 横で聞いていた山脇千栄が続ける。「私は『巡』が、鼓童のメンバーになって初めて稽古に参加したプロダクションになるので、思い入れも強い作品なんですが、本当に新しい太鼓のイメージが広がるプログラムになっていると思います。心象風景を住吉がイメージし、それをテーマに曲を作っていく。そしてその風景が“巡る”ように展開していきます。演奏する私自身も、すごくイメージしやすく舞台に入り込んで、演奏できますし、お客様も入り込みやすく、そのイメージを共有することで楽しんでいただける舞台になっています。また、クラブミュージックのような曲もあるので、和太鼓ですが踊りだしてしまうような気分になる場面もあります」

住吉「そうは言っても、鼓童がこれまでやっていたような舞台をやめるわけではないんです。昔からやっている作品もやり続け、古典や鼓童が目指す基本は大切にする。その一方で新しい事にどんどん挑戦し、これまでとは違う側面を増やしていく。その両方がこれからのグループには必要だと思います。その新しい事をやる第一作目が、今回の『巡』になります」
 実は住吉と山脇は同郷(香川県)の幼なじみ。

山脇「小学校で同じ太鼓チームに入っていたんです。その後住吉は18歳で佐渡に渡り鼓童に参加したんですけど、私は看護学校を出てから来ました。いったんはあきらめた太鼓の道でしたが、一度きりの人生、好きな事をやりたいと思い、住吉を追うように佐渡に行って鼓童に入りました。今はとても楽しいです」

『巡-MEGURU-』というツアー名の意味

住吉「ほぼ、私の曲なのですが、コンセプトは心象風景を巡るコンサートです。そこで“巡る”という曲をテーマに据え、その曲が何度も出てくることで、すべてがつながっている事を表現しました。それがある時は景色、ある時は時間のようにずっと流れている中で、いろいろなカラーを持った曲たちが垣間見えて、それぞれの世界観を巡っていくという作品になるように演出をしています。 “巡”という曲を作ろうと思った時に、その言葉から、反復とか循環というイメ―ジがあったんですね。ですから音楽的にも反復する曲を作りたかった。しかし、太鼓で反復していても、ただずっと打っているだけだし、笛だと人間らしさが出てしまう。それで他にミニマルミュージック的に反復できる楽器はないかなと思った時に、マリンバがいいんじゃないかと思い、今回はマリンバを使っています」

 演出も担当している住吉にはあるジレンマが…。

住吉「基本的には僕自身も演奏者なので、ものを俯瞰して見るのがすごく難しい。これは自分が悪いんですけど、何を血迷ったか自分の曲を全部入れてしまったので、演出かとプレイヤーが話し合って創り上げていく作業がやりづらい(笑)。例えば周りから、ある部分が長いんじゃないかと指摘されても、一生懸命作って自分の思い入れが入っているので“長いかな?”みたいな感じになっちゃうんですね。そこをどれだけ乖離し、俯瞰で見る事ができるかが、課題でしたし、とても勉強になった部分でもあります」

山脇「住吉の思い入れはすごく感じます(笑)。私たちは住吉の脳内をいかに再現するか。そしてそこに私たちの解釈も加えていく。そういうふうに作っているような気がします。そのため、いつも以上に演出をする上で、常々プレイヤーにお互いが感じていることを、どんどん言い合おうと住吉が声掛けしていたのが、印象的でした」

 鼓童といえば、海外での公演が多く、非常に多くの国や地域の人々に高い評価を受けているが、この作品もいずれは海外を目指すのか?

住吉「僕自身は、いずれはと願っています。鼓童の基盤となる『道』という作品があるのですが、そういうものといい意味でコントラストが付いたものがいいなと思って始めたので、まずは11月からの国内ツアーで公演してからということになると思います、そこで反響が良ければ、海外進出もできるんじゃないかと。プレイヤーも別の人がやるわけではなくて、それぞれを行き来しているので、この間まで角刈りだったのに、こっちではちょっとおしゃれな髪形になっているということになるかと(笑)。その振り幅が、グループとしての要をより強くしていくと思うので、そういう意味でも今回の公演はひとつの挑戦だと思っています」

 ツアーの見どころは?

住吉「皆さんが持たれている太鼓の固定概念を打破した新しい部分がすごくあるので、太鼓を見に行くと構えずに、インストのライブを見に行こうというような気軽な気持ちで足を運んでもらえればと思います。ビジュアル的にも、ふんどしや半纏に角刈りというイメージを覆すような衣装も取り入れています。これまでの鼓童のファンの方にも新鮮だと思いますし、初めて見る方にもすんなりと受け入れられるような気がします。そうやって、入り口に入って来て下されば、私たちでその世界に誘って行きます。私たちは、まずその入り口を広げるというのが、今回の一番の課題だと思っていますので、ぜひ構えずに足をお運びください」

山脇「この作品には、すごく新しいところと、懐かしい所が両方入っている、和の音楽の最新バージョンのような作品だと思います。太鼓という楽器は打てば響くのですが、その音にはなぜか感動するところがあって、人の本能を左右させるような魂の震えを与えることがあります。この作品を見てもらうことで、何だか分からないけどゾクゾクするとか、懐かしいとか、逆に新しいという気持ちを感じていただけたら。太鼓の、そして『巡-MEGURU-』という作品の魅力を伝えられるパフォーマンスをお見せしたいと思います」




鼓童『巡-MEGURU-』11月より日本全国ツアー
【東京公演】12月19日(水)~23日(日・祝)/文京シビックホール 大ホール
※チケットはチケットスペースで発売中
ほか、四国、中国、関西、中部、信越、関東などで公演予定
【問い合わせ】鼓童 TEL:0259-86-3630
詳しくは鼓童『巡-MEGURU-』特設サイト(https://www.kodo.or.jp/meguru/)へ