【映画監督が解説! 主演男優賞受賞俳優には日本との縁も】
今年も映画の都、ハリウッドのドルビー・シアターで開催された第98回アカデミー賞。昨年は、NEON北米配給のショーン・ベイカー監督作『ANORA アノーラ』(24)が作品賞を含む5部門を受賞するなど、インディペンデント映画の快進撃が際立っていたが、今年はメジャー作品が面目躍如。蓋を開けてみると、下馬評通り、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ワン・バトル・アフター・アナザー』が作品賞と監督賞を含む6冠に輝き、オスカー史上最多の16部門にノミネートされたライアン・クーグラー監督の大ヒット作『罪人たち』は、4部門を受賞。昨年話題を呼んだワーナー・ブラザース配給の2作品が席巻する結果となった(今年のワーナー作品のノミネート数は30で11受賞!)。
ポール・トーマス・アンダーソンの監督作が、作品賞を受賞するのは今回が初めてだが、ハリウッドでも大いにリスペクトされるアンダーソンが、今までの作風とは異なるアクションを軸としたユニークかつパワフルなアクションスリラーでついに栄冠に輝いた。監督賞と脚色賞も受賞し、作品賞と合わせ3つのオスカーを獲得。監督10作目にしてついに頂点に上りつめた、まさにポール・トーマス・アンダーソンの年となった。ちなみに、授賞式で彼の隣に座っていたのは妻で女優のマヤ・ルドルフ。彼女の主演作で大ヒットコメディ『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』(11)の主要キャスト5名がプレゼンターとして登壇(この中の1人、ローズ・バーンが主演女優賞にノミネートされていた)、軽妙なコントを繰り広げながら、作曲賞と音響賞を発表し場内を沸かせた。
昨年は、コラリー・ファルジャ監督のボディ・ホラー『サブスタンス』(24)が作品賞を含む5部門にノミネートされ1部門を受賞し、世界的なホラー人気はより高まっている感があるが、ヴァンパイア・アクション・ホラー『罪人たち』は、一人二役を演じたマイケル・B・ジョーダンが主演男優賞に輝き、ライアン・クーグラーが脚本賞を初受賞。撮影監督のオータム・デュラルド・アーカポーが撮影賞を受賞し、有色人種女性初の快挙を成し遂げた。またスウェーデン人作曲家のルドウィグ・ゴランソンは、『ブラックパンサー』(18)『オッペンハイマー』(23)に続き3度目の作曲賞受賞となった。
ちなみにマイケル・B・ジョーダンは、授賞式後にドルビー・シアターからも近い、以前L.A.ドジャースの山本由伸投手もお気に入りのアメリカン・フードのお店だと語っていた、人気ハンバーガー・レストラン「In-N-Outバーガー」にオスカー像を持って来店。店員や居合わせた客たちを驚かせつつ、大好きなダブルチーズバーガー(ダブルダブル)に舌鼓を打った。同店のハンバーガーの特徴だが、厚みのあるジューシーなパティと、フレッシュなトマトとレタスの瑞々しい食感が非常に印象深い。数々のシークレット・メニューもあり。ジョーダンは授賞式直後に会場の外で、アメリカの人気ファッション・ページ、ザ・ピープル・ギャラリーの取材を受け、一番お気に入りの映画として宮崎駿監督の『もののけ姫』(97)を挙げていた。ジョーダンは日本のアニメが大好きで、初めて一人で海外旅行で訪れた国が日本だという。
ホラー関連では他にも、北米で大ヒットを記録した『WEAPONS/ウェポンズ』でエキセントリックな怪演を披露し、40年ぶりにアカデミー賞にノミネートされたエイミー・マディガンが助演女優賞を受賞(夫は4度のアカデミー賞ノミネート経験がある名優エド・ハリス)。ホラー映画での助演女優賞獲得は『ローズマリーの赤ちゃん』(68)のルース・ゴードン以来の快挙。Netflix配給、ギレルモ・デル・トロ監督の『フランケンシュタイン』は美術、メイクアップ&ヘアスタイリング、衣装デザインの3つの賞を受賞。同じくNetflix配給、ソニー・ピクチャーズ・アニメーション製作の『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』は、長編アニメ映画賞と歌曲賞の2冠に輝いた。
日本映画では、日本実写映画史上最大のヒットとなった、李相日監督の『国宝』がメイクアップ&ヘアスタイリング部門にノミネート。残念ながら受賞とはならなかったが、ノミネートされた意義は大きく、今後この部門のみならず、幅広い部門で日本映画が注目されるきっかけになったのではないだろうか。メイクアップ&ヘアスタイリング部門には、他にもノルウェー・ポーランド・スウェーデン・デンマーク合作のホラー映画『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』もノミネートされ、ジャンルに関係なく国際的な作品もしっかり選考の範囲に入っていることを証明した。同部門では『スマッシング・マシーン』のカズ・ヒロもノミネートされていた。
気の早い話だが、来年のアカデミー賞は、クリストファー・ノーラン監督の『オデュッセイア』やドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『Dune: Part Three(原題)』、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督、トム・クルーズ主演のブラックコメディ『Digger(原題)』というメジャー大作3本が軸になってくる予感。日本からは濱口竜介監督作『急に具合が悪くなる』や是枝裕和監督の『箱の中の羊』、山崎貴監督作『ゴジラ-0.0』などが絡んでくるだろうか?
(文・小林真里)

映画『罪人たち』 配給:東和ピクチャーズ・東宝
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