“ジャイアント・キリング”を果たした愛鷹 亮【格闘家イケメンファイル】


 入場曲のセレクトもかっこいいイメージを追求したのですか?

「入場曲に関しては、Hip Hopや洋楽が多いので、流行っている曲を選んでもインパクトが残らない。そこにあんな渋い曲が流れ出したら会場の空気が変わるんです。Bigbangに出ているときは、会場では“なにこれ?”とクスクス笑われたりしていたんですよ。その雰囲気がだんだん知られていくうちに歓声に変わっていくのがうれしかった。価値観が変わるようなインパクトを残したかったんです」

 安定職を捨てて選んだ格闘技の世界で、試合でもパフォーマンスでもインパクトを残しながら、今、眼前にはK-1のチャンピオンベルトがあるという状況です。今後、格闘家としてどんなふうに突き進んでいきたいと思っていますか?

「ファイターとしてはベルトを獲って防衛を重ねていきたいというのもありますが、何より“日本人でも重量級で活躍できること”をもっと証明していきたいという気持ちでやっています。自分を見て“階級を上げよう”というファイターがもっと増えたらいいと思っています。本当は大きい階級でやりたいけれど階級を下げてやっている人たちというのがいる。自分より身長が高いのに、なんでその階級でやっているんだと思う選手がいます。そもそも“デカくて強いほうがかっこいいじゃん?”っていう単純な理由があるので。“重量級になればいいじゃん?“と思っています。自分が見て憧れていたのはマーク・ハントやグーカン・サキで、彼らが活躍していた旧K-1の熱狂を見れば分かるように、日本人は大きい人へのリスペクトもあるし、絶対に大きい人が好きですから。重量級が盛り上がることで、K-1は絶対もっと盛り上がります」

 警官に対して憧れた“正義の仕事”という気持ちは格闘技の世界でも感じていますか?

「応援してくれる方たちから“勇気をもらった”とか“感動した”と言ってもらえることや、“おめでとう”ではなく“ありがとう”と言ってもらえることはうれしいですよね。自己満足だけでやっているような仕事なのに、それを見て評価してくれる人がいることに救われた気持ちにもなり、自分の存在意義を感じます。だから、それが全てだというと格好つけているように聞こえるのでそうは言いませんが、誰かを勇気づけたいという気持ちは常に持っています」

 ところで、母子家庭で育っていたからこそ選んだ仕事を辞めて格闘家になることに対して、お母さんはどんな反応だったのですか?

「母親には“わたしみたいな負け犬になってほしくない”と言って反対されました。そもそも姉と妹と自分の3人を育て上げた母親を負け犬だなんて思っていないですが、チャンピオンの母親が負け犬なわけはないと証明するためにも次の試合で絶対勝利したいと思っています。とはいえ母親は自分が警官になってめちゃくちゃ喜んでくれていたし、母親が働いている間、家の面倒を見てくれていたおばあちゃんはもっとその気持ちが強かったので、辞めるという話をした時、普段は温厚なおばあちゃんが、机の足を蹴飛ばしたくらいなんです(笑)。それは怖かったですよね。その後、Bigbangでやっていたときは勝っても“よかったね、いつまでやるの?”という反応で、自分がそこまで本気でやっていると思ってくれていなかった。まだ22〜23歳でしたから、若気の至りだと思われていたのですね。それがBigbangでヘビー級のタイトルを獲ったあたりから、“ここまで来たからには、行けるところまで行きなさい”という方向性に変わって、ファイターとしての俺を認め、全面的に協力してくれるようになりました。K-1大阪大会も見に来てくれて、すごく喜んでくれました」