新型コロナ日本での感染初確認は1月16日。そのとき今の状況を想像した人はいただろうか…【ニュースで見る新型コロナウイルス】

 新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言が出され、日本中さまざまな場面で“自粛”が要請されている。ゴールデンウイークも初日には乗車率0%の新幹線が動くなど、経済にも大きな打撃となっている。

 思い返せば3月9日にプロ野球の開幕が延期となった時には「一度延期して、4月にはしれっと始まるんだろう」みたいに思っていた人も多いのでは? あの時に今のこんな状況を果たして誰が予想しただろうか。いや、あれがたった1カ月半前のこととは思えないほどに新型コロナウイルス関連のニュースがあふれかえっている。

 そこで新型コロナウイルス自体はもちろん、それによる世界と日本の動きを改めて復習してみる。まずは1月の動きを追う。
春節で訪日した中国人観光客がマスクを爆買い(写真:アフロ)

日本はまずは水際対策を徹底するも…


 昨年12月から湖北省武漢市で原因不明のウイルス性肺炎の患者が相次ぎ発生。新型コロナウイルス関連のニュースが日本で報道されるようになったのは今年1月になってから。

 1月8~10日には中国・湖北省武漢市で原因不明のウイルス性肺炎の発症が相次いでいることが各メディアで報道されるようになってきた。情報源は中国国営中央テレビといった感じで他国の報道によるところが多かった。

 この段階で過去に流行した新型肺炎(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)とは異なる新型ではないかという見方がすでにあったのだが、日本国内ではほとんど対岸の火事といった受け取られ方だった。

◆1月14日


 世界保健機関(WHO)がこのウイルス性肺炎について、新型のコロナウイルスが検出されたと認定。

 この段階では人から人への感染が確認されていないことから、WHOは渡航制限などの措置を取らないよう求めていた。武漢市で41人が発症、うち1人が死亡している。これに先立つ13日には観光でタイを訪れた武漢市の女性が発症し、これが中国以外での初の発症例となった。

◆1月16日 国内で初の感染者を確認


 日本の厚生労働省が国内での感染者を初確認。この感染者は神奈川県在住の30代男性。武漢市に滞在後、日本に帰国した中国人。武漢市在住の父親も新型肺炎を発症していた。当初、患者の多くは武漢市の海鮮市場の関係者とされていたが、男性は市場には立ち寄っていなかった。男性は武漢市滞在中の3日から発熱し、6日に帰国。10日から入院し15日に退院した。

 中国では2人目の死者。69歳の男性。男性は昨年12月31日に発症し、1月4日に症状が悪化。15日未明に死亡した。この時点でもWHOは人から人への感染リスクはやや低いとの見方を示していた。

◆1月18日


 中国国内で武漢以外では初めてとなる上海市と広東省深セン市で計3人に感染疑い。

◆1月19日


 武漢市で発症者が62人に拡大。この時点では日本で1人、タイで2人の発症者が確認されている。

◆1月20日 韓国でも感染を確認


 中国国内で計218人の発症を確認。韓国でも感染確認。25日の春節に合わせた大型連休が24日から始まることから、中国の習近平国家主席が感染拡大の警戒感を示す。発症者の内訳は武漢が198人で死者は計3人。北京で5人、広東省では深センなどで14人、上海で1人。韓国の感染確認は、空路で到着した武漢に住む30代の中国籍女性。
 

◆1月21日 台湾でも初の感染者


 中国政府の専門家グループが人から人への感染を確認。この時点で中国国内の発症者数は計291人。台湾でも初の感染者を確認。台湾の感染者は武漢から戻った台湾南部出身の女性(55)。WHOが専門家による緊急委員会を22日に開くことを決定する。

 日本では政府が関係閣僚会議を開催。安倍晋三首相は水際対策の徹底や国内で関連性が疑われる患者の把握など情報収集の徹底を指示。赤羽一嘉国土交通相や加藤勝信厚生労働相が“水際対策”を強化する方針を示す。外務省は中国への渡航に注意を促す「感染症危険情報レベル1」を発表。これは4段階の危険度の中で最も低いもの。

◆1月22日 台湾がWHOへの加盟を求める


 新型コロナウイルスによる肺炎の発症者拡大懸念で株価に動きがみられるようになる。防護服やマスクを手掛けるメーカーが連騰する一方で中国からの訪日客が減るとみられ、日本航空は下落。中国当局は新型コロナウイルスを武漢市に封じ込める方針を表明した。

 台湾が新型コロナウイルスによる肺炎をめぐり、中国当局に感染情報の完全な公開を求め、WHOへの加盟を改めて求める。この台湾の動きは2003年のSARS流行時にWHOからウイルスの情報を得られず、感染が拡大したという苦い経験から。これまで台湾は「一つの中国」原則を掲げる中国の妨害で、WHOに加盟できていないのだが、今回も中国外務省の耿爽(こうそう)報道官が「『一つの中国』原則の下で行われなければならない」と言うばかり。
 
 そしてこのころから中国でマスクが品薄に。北朝鮮では中国からの外国人観光客受け入れを全面停止に。

 中国の専門家チームが市場で食用として売られていたタケネズミやアナグマなどの野生動物が感染源だった可能性が高いとの見方を示す。

 米国ではバージニア州の中学校が中国・宜昌市からの交換留学生21人の受け入れを中止した。

 スポーツ界にも徐々に影響が。武漢市で2月に開催予定だったボクシングの東京五輪アジア・オセアニア予選が中止となる。

◆1月23日


 中国で武漢市を事実上封鎖。列車や航空便といった公共交通機関を一時停止。

◆1月24日 中国で春節の大型連休始まる


 中国で春節(旧正月、25日)の大型連休始まる。日本では外務省が武漢市を含む湖北省の感染症危険情報について、渡航中止を勧告する「レベル3」に引き上げる。日本国内で2例目の新型肺炎の感染が確認。そろそろ感度の高い人はマスクの備蓄を始める。

 他国では香港政府が新たに3人の感染を発表。香港では計5人に。フランスでは欧州初となる感染者3人を確認。いずれも中国に滞在していた。

 スポーツ界にも少しずつ影響が出始める。1月24日にIOCがボクシングの東京五輪アジア・オセアニア予選をヨルダンの首都アンマンで3月3~11日に代替開催すると発表した。

◆1月25日


 中国で世界文化遺産に登録されている北京の故宮(旧紫禁城)が休館。上海ディズニーランドが営業を一時取りやめ。

 香港が感染症の警戒レベルを「厳重」から最高度の「緊急」に引き上げ、武漢と香港を結ぶ全ての高速鉄道・航空便を停止。武漢では新型肺炎患者の専門病院を2月3日までの完成予定で突貫工事の建設作業に入る。25日現在で中国本土での発症者は1362人、死者は41人。当局が原因不明の肺炎の発生を昨年末に公表してから1カ月足らずで1000人を超える。中国の旅行業界団体は同日、当局の指示に基づき27日から海外旅行を含む全ての団体旅行を一時停止すると発表した。

 日本では厚生労働省が国内での3例目を発表。旅行で来日した武漢市在住の30代女性。他国ではオーストラリアで中国から来た男性4人の感染を確認。マレーシアも国内初の感染者3人を確認。ネパールでも初の感染者1人。米国内では2人目の感染者。

◆1月26日 中国で感染者が2000人超える


 日本の厚生労働省が国内4例目を発表。武漢市から日本を旅行で訪れていた40代男性。

 中国本土での感染者は2057人、うち死者は56人。肺炎発症の公表から1カ月足らずで発症者が2000人を超える。上海市と河南省で初の死者を確認する。北京市では生後9カ月の女児の感染を発表した。

 アジア・サッカー連盟(AFC)が女子の東京五輪最終予選B組の開催地を中国の南京からシドニーへ変更。
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