姿月あさと、65年ぶりに新しく作られた宙組は、 「道なき道を行く。歴史を自分たちで作っていかなければいけなかった」

要 なぜ退団しようと?

姿月 次の人生に向けての第一歩……卒業という認識ですね。トップスターになってからは2年ほどだったかもしれませんが、宝塚歌劇団に入団して初舞台を踏んでから十何年間が経過していました。宝塚人生で考えたら、決して短いとは思わなかったんですね。悔いの残らない形で、卒業させていただきました。

要 宝塚人生の中で、印象的だった出来事って何でしょう?

姿月 自分が在団しているときに、宙組ができたこと。宝塚は、ずっと4組だったんですけど、まさか新しい組ができるとは思っていませんでした。(宙組は)65年ぶりに新しくできた組なので、そういう時期に自分が在籍していたことに運命的なものを感じました。誰も上の方がいない組ですから、道なき道を行くというか……組の歴史を自分たちで作っていかなければいけなかった。

要 なるほど。どういう風に作られていったんですか?

姿月 宙組は、既存4組から抜擢された方々が集まってできた組。各組によって決まりごとも違うので、みんなで話し合って一つずつ決めていきましたね。新しい宙組ならではのルールだったり。まずはそこからでしたね。

要 宙組のオリジナルの決まりごとって、どんなものが?

姿月 挨拶の仕方であったりとかお稽古の仕方であったりとか。組によって全然違うんです。

姿月さんが宝塚を退団して、今年で20年が経つ。「あっという間でしたね」。そう振り返る。

要 実は、僕も俳優芸歴が今年で20年なんです。たしかに振り返ると、一つ一つ必死にやってきたので、あっという間だなと思います。

姿月 ねぇ。退団すると、一つ一つの作品や公演、一緒に出る方やスタッフの方とは、「こんにちは」と「さようなら」の繰り返し。“はじめてのこと”ばかりの繰り返しだから、時間が経つのが余計に早く感じるんですよね。

要 姿月さんは、スランプに陥ったことってあるんですか?

姿月 ありまくりですよ。

要 ありまくり!(笑)

姿月 退団した当初は、「あれもしたいな」「これもしたいな」って思っていたのですが、数年も経つと「何がしたいのかな」「何ができるのかな」って考えることもありました。2011年に、秋元康さんと出会ったことは大きなターニングポイントでしたね。

要 これまでとは全然違ったということですか?

姿月 自分のオリジナルの楽曲と言うんですかね、色々なカバーを歌ったりしてきた中で、自分の歌が欲しいなぁと思っていた。そんな中で、秋元さんが『夜明け』というオリジナルの歌詞を書いてくださって。その歌詞で、もう一度立ち直れたという感じですね。自分の歌なんですけど、その歌によって励まされたところがあります。

要 そういう所ってありますよね。僕も、自分が演じている役を考えていく中で、自分の人生を考えさせられる瞬間ってあります。

姿月 そうなんです。でも、そんなことを考えるなんて……要さん、病んでませんよね?

要 ははははは! 病んでないです(笑)。

姿月 くじけそうになったときは、『夜明け』を聞いてみてください(笑)。