「僕らは10年後もスマホを見てるのか。 課題がWeb3.0の新たなビジネスアイデアになる」國光宏尚(株式会社フィナンシェ 代表取締役CEO)

ブロックチェーンで「10億人の夢」が叶う世界を目指して

 2007年に株式会社gumiを創業し、いち早くモバイル向けSNSやゲームを展開。VRやブロックチェーンにも早くから注目してきた國光氏。2019年にブロックチェーン関連事業の株式会社フィナンシェを創業。2021年にはgumiを退任しフィナンシェの代表取締役CEOに就任。クリエイターファーストのモノづくりを目指す注目の映像プロジェクト「SUPER SAPIENSS」への参加や、湘南ベルマーレの国内初トークンも話題を呼んだ、日本のWeb3.0をけん引するキーパーソンに迫る。

國光宏尚(くにみつ ひろなお)…1974年生まれ。高校卒業後、海外留学を経て、2004年に株式会社アットムービーに入社。映像制作やIT事業に携わる。2007年に独立しモバイル向けサービスの株式会社gumiを創業。2021年に同社を退任し、株式会社Thirdverseと株式会社フィナンシェの代表取締役CEOに就任。“Web3”に特化したファンドgumi Cryptos Capitalのジェネラルパートナーを務める。著書に『メタバースとWeb3』(エムディエヌコーポレーション刊)

「新しいテクノロジーに誰よりも早く挑み、そのテクノロジーでなければできないイノベーションを起こしたいと思ってきました」と、いち早くWeb3.0領域に乗り出した背景を語る國光氏。

「僕がgumiを創業したのがWeb2.0始まりの年とされる2007年。以来10年、スマホ、ソーシャル、クラウドが世界をけん引してきた。これが成熟期を過ぎ、いま再び“ガラガラポン”が起ころうとしている。ここで重要なポイントは3つ。Web3.0ではデバイス、データ、そしてデータの記録や保存はどうなるか。まずデバイスは、Web1.0でPC、Web2.0でスマホになり、Web3.0ではXR、メタバースになろうとしている。データは、Web1.0ではWebサイトで見るものだったのが、Web2.0では個人が情報をやり取りするようになった。やり取りするだけだった情報がWeb3.0ではブロックチェーンが入ってきたことで価値をデータ化してやり取りできるようになった。そしてデータの記録や保存は、Web1.0の自社サーバーからWeb2.0でクラウドへ変わり、Web3.0ではAIをともなった分散型ストレージサービスが可能になる。この変化の波の中で、新たなイノベーションを起こしたいのです」

 ブロックチェーンとメタバース双方の分野の先駆け。

「現在僕は、NFT事業やトークン発行型のクラウドファンディングのプラットフォームを展開するフィナンシェと、VRゲームやブロックチェーンゲームを作っているThirdverseの創業者兼代表取締役の他に、gumi Cryptosというブロックチェーンや暗号資産関連に特化したファンドをサンフランシスコでやっています。スマホやソーシャルもそうでしたが、ブロックチェーンやメタバースも、交わり影響し合いながら新たなビジネスが生まれていくものだと思っています」

 フィナンシェでは、堤幸彦監督、本広克行監督、佐藤祐市監督という日本を代表する映画監督が発起人を務める日本発のDAOプロジェクト『SUPER SAPIENSS』にも参加。

「フィナンシェで昨年、湘南ベルマーレさんがトークンを発行し話題を呼びまして、スポーツやエンターテインメントとの相性の良さを感じていたところ、アットムービーに僕を呼んでくれた森谷雄さんの声がけで『SUPER SAPIENSS』に参加することになったのです。クリエイターが本当に作りたいものを作るというテーマは、僕がフィナンシェでやりたいことに通じていました。

 Netflixで韓国の『イカゲーム』が世界的な大ヒットを果たし、さらに危機感を抱いた日本の映像制作者は多いと思います。よく、韓国は世界に向けてコンテンツを作ってきたけど日本は国内市場に向けていた、なんていわれますけど、クリエイターはみんな世界に向けて作品を作っていると思うのですよ。日本の人だけに見てほしいか世界の人に見てほしいかと聞いたら当然後者でしょう。問題なのは、テレビ局や広告代理店、映画配給会社といった関係各社による製作委員会のなかで、会社員たちに合議制でどんな作品を作るか決められてしまうこと。ディズニーのウォルト・ディズニー、ジブリの宮崎駿のように、世界で通用する作品には作り手の思いを第一とする、クリエイターファーストが求められるのではないでしょうか」

 Web3.0では、製作費の調達は従来のクラウドファンディングからどう変わるのか。

「Web3.0のビジョンとして“貢献に対し報酬をフェアに分配する”という意識があります。例えばYouTubeは“動画の民主化”といわれたけれど、YouTube時価総額約40兆円の恩恵を受けるのは創業者や投資家、買収した巨大企業のGoogleです。まだ流行る前から動画を投稿していたクリエイターや、動画をリプライしたりいいねしたりして、成功に貢献した人たちに報酬が出るわけではありません。Web3.0の新たなYouTubeができるとしたら、参加することでトークンがもらえて、そのトークンの価値が上がることで利益を得る、ということもできる。『SUPER SAPIENSS』でも、これからどんどん成長すればトークンの価値が上がり、参加者もトークンを所持することで主体的に応援していく。スタートアップ支援と近い感覚で作品作りを応援できるわけです。“好きなことをただ応援するだけで満足”という声もあるでしょうけど、Web3.0では、より主体的に好きなことを支援し、その貢献に対してフェアな報酬を受けることが可能になる」

 Web3.0は一過性のブームという声も。

「10年先も僕らはスマホの小さな画面を見ているのか?と考えたら、僕は答えは出てると思います(笑)。ARグラスをかけて空間すべてがディスプレイになったほうが、ナビでも、Web会議でもあきらかに便利。さらに、富や情報を一部の大企業が独占している世界と、それが分散される世界。どちらがいいのか。結局は、10年後、20年後に僕らのウィルがどちらにあるのか、だと思います」

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