神田伯山、講談界への貢献度は「絶大」夢は「エロ講談 “大石主税の初夜” 残さないと」

この日の会見は新宿末廣亭での主任興行の終演後に行われた

 制作にあたっての苦労を「『講釈師、見てきたような噓をつき』という言葉がありますが、うちの師匠がよく言っているのは『講釈師、見てきた上で噓をつき』。講談師は歴史を扱うので現場に行かないといけないんですけど、実際に現場に足を運ぶのが結構大変だった」としたうえで「ただ、文章は九龍ジョーさんの聞き書きで、僕はしゃべっているだけなのでラクでした。イエス・キリスト方式というか、ソクラテスのように弟子に書かせるというね(笑)。講談社さんは、もともと大日本雄弁会講談社という講談の速記を扱っていた会社なので、講談師のしゃべったことを活字にして売っていく講談社の初期の形式を取っている本」と明かした。

 巻末の師弟対談も見どころのひとつといい「うちの弟子、師匠から見ると孫弟子に対して何か言葉をいただけますかと問いかけた時に〈修行時代が大事なのはもちろんですが、ただ人について、言われるがままに修行するのではなくて、自分の頭で言われたことの意味を考える修行も必要なんです〉。うちの師匠が言ったのはすごく画期的で “修行というのは自分で定義しなさい” ということ。たとえば寄席に行って漫然と働くことはできると思うんですけど、どうやって師匠方を快適にするのか、どうやったら寄席がスムーズに回るのか、どうやったらこの状況をもっとよくできるかを彼らが考えるというのは結構深いテーマだなと思いました」と伯山。

 さらに「くだらないところだとバレ(エロ)講談。キャバレーでやっていたエッチな講談をわざわざ活字にしたって誰も買わないんですけど、ニーズがないからといって下に伝えていかないと残らないんですよ。惜しいなと思ったのは(一龍斎)貞水先生はいろんなことをお知りだったんですけど、それを映像や音源で残してないと思うので、そういうサイドストーリー的なものを貞水先生に聞きたかった。今回の師弟対談で、師匠が昔 “大石主税の初夜” というちょっとエロい話をやっていたということが資料として文字として残った。これから僕が一番力を入れてやらなきゃいけないのは、うちの師匠の “大石主税の初夜” というエロい話を映像に撮っておきたい(笑)」と力を込めた。