黒澤明の名作「酔いどれ天使」を深作健太が演出。「天国にいる黒澤さんや親父たちにも胸を張って見せられる作品になれば」

主役の松永役の北山宏光(左)とダブルキャストでぎん役を演じる横山由依
また「蓬莱さんの脚本が黒澤さんの映画シナリオを受け継ぎながらも、ちゃんと演劇としてのアダプテーションを見事にされていて、女性が特にキラキラ光っている。男たちが戦争の影響を受けて後ろ向きになってしまった時代に、前を向く女性の強さをまずは主軸にしっかりと踏まえながら、しかし一方で北山さんが演じるヤクザの松永をしっかり描いている」などと蓬莱竜太氏の脚本を評した。
字面では「黒澤映画を深作が演出」となるのだが、深作氏は「僕は黒澤先輩が苦手で…。一つは僕が三角マーク育ちで東映で、黒澤さんは東宝を主軸とされて作られていたということもあって。黒澤監督は神様のような映画界の巨人ですよね。善悪をしっかり分けて見られるし。一方でうちの父親というのは野良犬のほうといいますか、どっちかというと沼から這いずり上がれない人間を描いてきた作家だったので、なんとなくその二人の先輩が引きずる昭和と今、自分がここで毎日対決しているような気分で作っています。プレッシャーって最初は思ったんですけれども、プレッシャーというよりは心強い仲間と昔の映画のオリジナルのことはすっかり忘れて、今自分たちがこの脚本で、この板の上でどう生きるかということに向き合って作れていると思う。その辺は逆に天国にいる黒澤さんや親父たちにも胸を張って見せられる作品になればいいなと思っています」と意欲を口にした。