【アラサーライターが行く】「三・一節」のソウルは、いつも通り楽しかった

 日本統治時代の独立運動から100年の記念日を迎えた3月1日。韓国では、デモや街頭集会は、過去に前例がないほど大きな規模で行われるという見込みもあった。そんな韓国の国民の休日「三・一節」の当日に渡韓していた筆者が、当日のソウル市内の様子をお伝えする。

 
 ソウル駅からほど近い東大門エリアに滞在していた筆者。東大門はソウルでも大きな卸売市場のあるエリアで、国民の休日ということもあり、その日の市場は非常に混雑していた。



 市場を歩く私たちの頭上に飾られた国旗の中には、しっかり日本国旗もあった。そして市場ではもちろん、日本人観光客である私たちにも平等に、韓国のソウルフードであるチヂミやユッケを売ってくれる。日本語を使って会話をしても、それをとがめるような目線は感じなかった。

 その後、ソウルの若者街である弘大に移動するべく、タクシーに乗り込んだ。タクシーの中で流れていたのはK-POPではなく、英バンドのQueen。革ジャンを着込んだ運転手が「Killer Queen」を口ずさむ。

 運転手は英語で、「今日はソウルの市内が通行止めになっていて、遠回りすることになるけどいい? デモやフェスティバルが行われるんだ。日本人の君たちは少し気をつけて行動したほうがいいよ」と教えてくれた。

 私たちのスマホにも外務省からの注意喚起メールが逐一警報を鳴らしており、デモのスポット情報が送られてきていた。メールによれば、日本人にも人気の観光スポット、仁寺洞エリアなどに近寄らないように、ということだった。朝鮮時代の王宮である「景福宮」などもある仁寺洞エリアは、普段は漢服体験をしている日本人もよく歩いている。大統領も出席した記念式典が行われていたのがこのエリアのようだった。



 仁寺洞エリアから少し離れたところにある弘大エリアは、日本でいう原宿のような街で、若者が特に集まる街だ。弘大でもフェスティバルが行われているという話だったので注意して歩いていたが、特に騒動があるような雰囲気はない。



 時折、休日帰省しているであろう、軍服を着た兵役の青年が歩いているのも見かけたが、普通に休日を満喫している様子だった。私たちもいつもどおりに観光を楽しみ、日本人であることで後ろ指を指されるようなことはなかった。

 ショッピングエリアの店員は日本語を話せる人も多く、日本語によるコミュニケーションも交わされる。露店で食べ物を買うときも、日本語で「ありがとう」と返してくれるし、商品と一緒に「chingu!」(韓国語で友達という意味)と、言葉をかけてくれる。



 夜になると、街中で韓国の民族楽器を使って演奏を楽しむ若者が現れた。路上に置かれた帽子の中にお金を投げ込む通行人の中には、日本人らしき観光客もいた。



 金曜日の夜のクラブの前では、若者たちが行列をなしていた。日本語を使って筆者たちをナンパするような若い青年もいて、やはり日本人との交流を避けるようは雰囲気はないどころか、むしろ好意すら感じた。

「反日の動きが高まる」「日韓の関係は今までで最悪」と、身を引き締めざるを得ないような報道を多く聞いていたので、妙に緊張感のある渡韓となったが、実際に訪れてみると、一般市民や若者たちの中に、反日の色はほとんど感じなかった。

 報道は最悪の事態を想定したものになっているのかもしれないが、それだけを見て「韓国は危険」と判断するのは早計かもしれない。政治においてはそういう見方があるとしても、韓国全体が反日の色を濃くしているというわけではないのかもしれない、ということを、「三・一節」の韓国本土で感じた。

 3月は韓国も寒い冬を終え、観光のニーズが高まる時期だ。これから4月に向けて、韓国でも桜が咲き誇る。

 観光客としての節度を持った行動さえ気をつければ、韓国は海外の他の国と何も変わらない、旅行に適したエンターテイメントな国だ。ぜひ、過ごしやすい時期に観光しに行ってみてほしい。

(写真と文・ミクニシオリ)