進化つづける車いすラグビー界、海外選手や新加入選手が続々登場!

日本選手権の予選リーグが行われた横浜ラポール
 ラグビーW杯の開幕が来月に控えるなか、車いすラグビーも熱を帯びている。国内一を決める日本選手権大会への出場をかけた「第21回 日本選手権大会 予選リーグC」が10日、横浜で開幕。別名「マーダーボール(殺人球技)」とも呼ばれる激しいタックルや、海外選手のスーパープレー、兄弟対決など、見どころ満載だ。

 日本選手権の予選リーグは3回に分けておこなわれ、12月の日本選手権への本選出場権を巡り、全国から9チームが集結。これまで千葉県君津市、北海道中川郡と開催し、最終戦は神奈川県横浜市での開催となった。横浜大会には3チームが参加。沖縄のOkinawa Hurricanes(以下、沖縄)、埼玉のAXE(以下、アックス)、福岡のFukuoka DANDELION(以下、福岡)が2日間の熱戦を繰り広げる。
沖縄に加入したカナダ代表のザック・マデル。最近覚えた日本語は、沖縄弁の「はいさい」

カナダの助っ人が躍動



 注目は、日本選手権 3 連覇中の絶対王者・沖縄。今年はカナダから、リオパラリンピックでカナダ代表も務めたザック・マデル(クラス 3.5)が加わり、世界レベルのスピードと突破力を見せつけた。1日目の試合では、序盤こそマークに阻まれ接戦を繰り広げるも、後半の3、4ピリオドで持ち前の強いフィジカルを発揮。初日を3試合全勝で終えた。

 日本で初の公式戦となったザックは「仲間と一緒にプレーできてよかった。ローポインターが動いてくれて、僕をサポートしてくれた」と試合を振り返る。日本チームでの練習については「日本語が上手くないから、ボディランゲージで意思疎通を図ることもある。こういう環境はカナダとは全く違うし、新鮮。新しい経験になる」と語った。
RIZE CHIBAから移籍の宮野竜一。会社員と選手を両立し、本戦に挑む

バリエーション抱負なアックス



 埼玉が本拠地のアックスは、今年RIZE CHIBAから宮野竜一(クラス 2.0)を加え、チームバランスを整えた。様々な持ち点の選手が揃い、得点源の峰島靖(クラス 3.5)や羽賀理之(クラス 2.0)を中心に、様々なラインが作れるのが特徴。強豪・沖縄にも最後まで接戦を繰り広げた。

 新加入の宮野は「移籍して初めての公式戦。もう少しやれるのかなと思ったけど、これが結果ですね。海外の選手と戦えるのは新鮮です。貴重な経験」と悔しさを滲ませながら感想を語った。峰島は「沖縄のザック選手は、スピードもありますし、テクニックもある。でも僕らのチームはローポインターのスピードなど強みがあるので、自分たちがやっていることは間違っていない。明日以降は、時間の使い方や距離の取り方を修正していきたい」と試合を振り返った。
左から福岡の乗松聖矢、アックスの乗松隆由

ライバルであり、仲間。兄弟対決にも注目



 横浜大会には兄弟選手も参加している。アックスの乗松隆由(クラス 1.5)と福岡の乗松聖矢(クラス 1.5)だ。互いに異なるチームに所属しているが、二人は日本代表選手にも選出。兄弟であり、仲間であり、ライバル同士。対戦チームとして戦う点について弟の聖矢は、「去年の大会では『身内がいるな』という感じで余計なことを考えてしまっていました。でも今日は、兄弟ということは意識せずに、いち選手として向き合っていました。集中できていたのかな」と率直な感想を語る。

 日本代表ではチームメートの二人。兄の隆由は「頼もしいですね。兄弟で一緒に試合に出る場面も増えてきたので、皆さんに見ていただきたいです。東京パラリンピックでは、兄弟そろって金(メダル)を獲るのが夢。親にその姿を見せたいです」と目標を語った。10月には日本代表戦である「車いすラグビーワールドチャレンジ」もひかえている。乗松兄弟のディフェンスにも注目だ。
韓国のパク・ウーチョル。素早いスピードが持ち味

韓国から兄弟プレーヤーが新加入で、新たな化学反応



 昨年、初の本戦出場を果たした成長著しい福岡。今年4月には韓国から兄弟選手を受け入れた。韓国・仁川のチームでプレーしていたパク・ウーチョル(クラス 2.0)が「競技レベルの高い日本のチームとプレーしたい」と日本車いすラグビー連盟に相談があったことで実現。初の公式戦でもスピードを生かして多くの得点を決めた。

 試合後ウーチョルは「厳しい戦いでしたが、プレーできてうれしいです。一番勉強になるのは、チーム全員が攻撃になれること。とてもいい経験になります」と自身の収穫を語った。チームメートの乗松も「チームに勢いをもたらしてくれていますね。今日の試合も朴兄弟に助けられました」と太鼓判を押した。

「車いすラグビー日本選手権大会」は、12月20〜22日に千葉で開催される。海外選手の加入で、ますます進化を続ける車いすラグビーの世界。東京パラリンピックが意識されるなか、国内の動きにも目が離せない。