関電の八木会長、岩根社長らが常識超える金品受領で辞任

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 関西電力は9月27日に会見を開き、関電高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の元助役、森山栄治氏(今年3月に90歳で死亡)から、八木誠会長(69)や岩根茂樹社長(66)ら役員と社員計20人が、平成23年から30年までの7年間に総額約3億2000万円相当の金品を受け取っていたと発表した。

 金沢国税局の調査で、森山氏が高浜原発などの関連工事を請け負う高浜町の建設会社から、工事受注に絡む手数料名目で約3億円を受け取っていたことが判明。国税局から指摘を受けた関電が昨年7〜9月に社内調査をしたところ、森山氏から関電役員らに多額の金品が渡っていることが分かった。

 岩根社長は28年の社長就任時に森山氏に面会し「社長就任祝い」を受け取っていた。受領品の中には儀礼の範囲を超える高額品が入っていたことも分かったが、しばらく保管していた。岩根氏は「私も含め受け取りを拒んだが、返却を強く拒まれ、一時的に各人の管理下で保管していた」と弁明した。

 関電はこの報告書を取締役会に周知せず、受領していた幹部3人が6月に副社長や常務執行役員に昇格していたことも判明した。
 また29日には八木氏が18年から22年の間に、現金を含めた儀礼の範囲を超える金品を受け取ったことが分かった。27日の会見の発表と矛盾することになる。

 関電は2日午後に八木氏と岩根氏が記者会見。一部受領者の氏名や金品の詳細などを公表した。受領した20人の総額は3億1845万円で、うち2人が金品の総額1億円以上を受け取っていた。岩根社長は森山氏への便宜供与はなかったとした上で、「原因究明や再発防止策に取り組み、経営責任を果たしたい」と述べ、八木氏とともに辞任を否定した。

 氏名が公表されたのは岩根氏、八木氏を含む、豊松秀己元副社長、森中郁雄副社長、鈴木聡常務執行役員、大塚茂樹常務執行役員ら12人。岩根氏を除く11人は、金品を受け取った時点で原子力事業本部か高浜原発の要職を務めていた。

 受領額が最も高い鈴木氏は現金や商品券、米ドル、金貨、小判形の金など計1億2367万円を受け取った。豊松氏も計1億1057万円を受領。全員が受領した金品の一部、計3487万円分は未返却という。

 一方、関電は森山氏への便宜供与を否定。森山氏が資金提供を受けていた地元建設会社「吉田開発」への原発関連工事の発注について、「プロセスや価格は適切だったと調査委員会に評価された」と説明した。

 調査委員会が昨年7〜9月に実施した調査の報告書は、企業名などを一部伏せた形で公表された。森山氏については「自身やその家族の身体に危険を及ぼすことを示唆する恫喝」があったなどと記載。森山氏との関係が続いたことについて、岩根社長は「原発を安定的に運営したいという思いから、森山氏との関係悪化を避けた」と述べた。

 吉田開発は直近の3年間に、高浜原発や大飯原発(福井県おおい町)でテロ対策施設などの安全対策工事で約22億円を受注している。同社の売上高は25年8月期の約3億5000万円から30年8月期に21億円強となっており、5年間で6倍以上に伸ばしている。

 当初から辞任を否定していた八木氏と岩根氏だったが9日に開かれた臨時取締役会では八木氏と岩根氏ら取締役、常務執行役員計6人の辞任が決定。八木氏は9日付、岩根氏は12p月下旬の取りまとめを目指す第三者委の調査結果の報告日に辞任する。他に辞任したのは、原子力事業本部に幹部として在籍経験のある森中郁雄副社長、右城望常務執行役員、鈴木聡常務執行役員、大塚茂樹常務執行役員。