中小企業支援の最前線からみた「WITHコロナ」「BEYONDコロナ」

 新型コロナウイルスに伴う「緊急事態宣言」の影響で、多くの中小企業やフリーランスが打撃を受けた。彼らの苦境を救うべく、会計事務所では、資金繰りの支援や助成金の申請支援などの取り組みが今も行われている。

 まさに、コロナ禍の最前線ともいえる現場で、長年、中小企業支援に携わってきた税理士は何を見、何を感じたのか。東京都港区で30年以上、中小企業の支援に取り組んでいる税理士法人ゼニックス・コンサルティングの村形聡氏に話を聞いた。
税理士法人ゼニックス・コンサルティングの村形聡氏(撮影・堀田真央人)

税理士法人ゼニックス・コンサルティングの村形聡氏に話を聞く


「緊急事態宣言」発令を受けて、多くの中小企業やフリーランスが営業の自粛を余儀なくされ、売上減少などの影響を受けました。その中での御社の取り組みをお聞かせください。

村形「弊社では『新型コロナウイルス感染症対策支援室』を社内に設け、顧問先のお客様向けに、3つの取り組みを行っています。

 まず、何と言っても助成金や支援金の受給に関する相談が圧倒的に多いですね。雇用調整助成金は大変役に立つ制度ですが、申請が複雑で面倒なので、社会保険労務士と連携して支援を行っています。これと比べると、持続化給付金はご自身でも簡単に申請でき、給付もとてもスピーディーでした。

 次に、手元資金の減少・枯渇に対応するため、さまざまな金融機関で設けられた『緊急融資制度』の活用の支援です。申請書類の作成支援をはじめ“融資必要額はいくらか”“返済スケジュールをどうするのか”などについて、お客様と一緒になって資金繰り対策を行っています。
 
 さらに、日々追加・更新されるこれらの支援策の内容を簡潔な資料にまとめ、タイムリーにご紹介しています。支援策は日々発表されている一方、業務で多忙な中小企業経営者やフリーランスの方に、十分な情報が行き渡っていません。そこでその情報収集を弊社が代行し、お客様にタイムリーにお知らせするという役割を担っているわけです」


 今回の支援を行う中で、苦労された点を教えてください。

村形「まず、制度運用の混乱です。今回、さまざまな制度や特例の新設が行われましたが、マスコミ等で新設が報じられたあとで、詳細が未定だったり、あいまいな点が多かったりして、実務の現場は大変混乱していました。そのため、制度活用を検討する際には、官公庁からの発表を継続的にウオッチする必要がありました。
   
 弊社では、専任の担当者を設け、制度改訂の動きをタイムリーに社内に共有する仕組みを構築しましたが、中小企業においてそのような体制を構築するのは非常に難しいと思います。
   
 また、同じような制度でも各自治体によって条件が異なるため現場が混乱するケースもありました。

 例えば、『東京都感染拡大防止協力金』の対象は、東京都内の店舗が対象ではありますが“休業要請を受けた業種”に限られ、かつ“休業要請期間すべてにおける休業”が要求されました。これに対して、飲食店に限っては、“営業時間の短縮”だけで協力金の受給ができたり、理美容業については、4月30日から5月6日のゴールデンウイーク期間の全面休業のみが対象となったり、なかなか複雑でした。

 このため、例えば都内にある歯科医院が休業したとしても休業要請対象外のため協力金の対象からは外れることになったり、飲食店と混同して時短営業で協力金をもらえると勘違いする事業者も多かったですね。

 一方、『埼玉県中小企業・個人事業主支援金』は“埼玉県内に本社を有する中小企業又は個人事業主”に助成対象が限定されているため、例えば、横浜市に本社がある企業が埼玉県内の店舗を休業したとしても助成が受けられないわけです。

 しかしながら、埼玉県の制度では業種の限定がないため、埼玉県の歯科医院は支援金の受給対象に含まれています。

 同じような助成金であるにも関わらず、要件が微妙に異なることから、申請の際に慎重に検討する必要がありました」
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